スマートフォンのカメラ性能が日々進化する今、アクションカメラの存在意義とは何でしょうか。DJI Osmo Action 6は、その問いに対して明確な答えを示してくれました。画素ピッチの大きな1/1.1型センサーと可変絞りという、これまでのアクションカメラでは考えられなかった機能を搭載。ハードな環境での安定性はそのままに、暗所性能や階調表現、さらにはボケ感まで──「記録」から「作品」へと映像の質を引き上げる進化を遂げています。実際に使って感じた”映像の余裕”と、撮影体験の変化をお伝えします。
また一歩、アクションカメラが進化した
スマートフォンのカメラ性能が年々向上し「もうスマホで全部撮れちゃうよね」という声を聞くことも増えました。4K撮影、強力な手ブレ補正、AIによる高度な処理。そんななか、アクションカメラって本当に必要なのでしょうか…?
スマホはあくまで“万能型”。
日常を撮るには充分ですが、撮影環境や被写体が厳しくなるほど弱点が見えてきます。耐衝撃性能、防水性、そして安定した水平維持。ハードな環境であるほどアクションカメラが活躍してくれます。
今回の新モデルはハードに使えるという点に加えて、画質と表現力というアクションカメラの弱点を大胆に補強してきました。
画素ピッチの大きな1/1.1型センサーで画質そのものを底上げし、
可変絞りで映像の表現の幅を押し広げています。
アクションカメラとスマホの境界線を曖昧にするのではなく、
「アクションカメラはここまで表現できる」という、新しい方向性を示す一台になったと感じています。
ここから先は、その進化の中身を“実際に使った感覚”とともにお伝えします!
1/1.1型センサーと可変絞りがもたらす“映像の余裕”
実際に撮り始めてまず感じたのは「映像が柔らかく、情報量に余裕がある」ということでした。
アクションカメラというと、どうしても暗所は弱く階調も硬いイメージがあります。しかし、センサーの画素ピッチの面積が大きく設計されていること(2.4μm相当)で、これまで苦手だった暗所のシーンでも力を発揮してくれます。

以前なら白飛びしたり、ノイズが出たり、黒が潰れたりしていた場面でも、ディテールがしっかり残ります。特にハイライトの粘りが良く、空のグラデーションや街灯の光が自然に再現される印象です。

そして正方形のセンサー構造も大きなメリットでした。
4:3・16:9・1:1などSNSで求められるアスペクト比を後から切り出しても破綻しにくく、撮影中に「縦か横か」で迷わなくなります。ユーザーにとってはこの“自由度”が想像以上に大きく楽なのです。
さらに、4K/60pでの360°傾き補正。
激しく動くシーンでも安定を保ってくれるため、まさに「つけっぱなしで安心して使える」一台になっていました。

そして今回のモデルで最も「変わったな」と感じたのは可変絞りの存在です。
アクションカメラはずっと“固定絞り”が当たり前でした。しかし絞りが動くだけで、映像表現がここまで変わるのかと驚かされます。
まず、日中の白飛びがしっかり抑えられます。
今までならNDフィルターを付けるかシャッタースピードを上げるか、そもそも諦めるしかなかった場面でも、絞りを調整するだけで綺麗に収まる。雲のハイライトが飛ばないだけで、映像全体の質が上がります。
そして、ボケ感。
広角レンズ特有の「全部にピントが合った映像」から、少しだけ背景が柔らかく溶ける表現が可能になりました。たとえば料理やガジェットを撮ると、単なる“記録”から“作品のカット”へと雰囲気が変わるのを感じます。

可変絞りの恩恵はそれだけではありません。ほとんどのアクションカメラのイマイチな点として被写体に寄ることが難しい点が挙げられます。しかし、f/4.0時の最短撮影距離が20cmまで縮むので、寄ったカットも撮りやすい。(※f/2.0の時は約35cmくらい。)さらに、夜景では光条(スターバースト)も出せるため、アクションカメラでありながら“作品撮り”の幅が一気に広がりました。
また絞りオートでも設定できるので、シャッタースピードやISOにあまり頼ることなく露出を調整できます。その結果、不自然な補正や過度なシャープネスが出にくく、自然で滑らかな画作りを簡単にできるのも大きなポイントです。
他にも便利な機能がたくさん
センサーや可変絞り以外にも確実にアップデートした点が他にもたくさんあります。

ハードウェアの部分を見ていきます。アクションカメラの磁気マウント部分についてですが、(先日発売されたDJI Osmo Nanoと同じで)前後双方向どちらでも接続できる仕様になりました。以前までは磁石の吸い付きに向きが存在していたため、前後を間違えるとすこし装着しずらいという煩わしさがありましたがこれで解決です。
そして、前モデルでは穴に埋まっていた色温度センサーが少し大型化し、より自然な色味で記録できるようになりました。それからUSB3.1搭載でデータの転送が以前より高速化。ユーザーにとっては意外と嬉しいですよね。
次にソフトウェアの部分を見ていきます。今回から搭載された2xのロスレスズームが思っていたよりもよかったです。ロスレスズーム機能は画質の劣化を最小限に抑えつつ、2倍の画角で撮影できる機能です。撮影した素材をデジタル上で2倍スケールした映像と、ロスレスズームを撮影時に行なった映像を比較するとロスレスズームを活用した映像のほうがディテールがはっきりしているのが分かると思います。


基本的には広い画が撮れるアクションカメラですが、撮影時に「もう少し寄りたいな…」って時が必ずあります。そんな時はロスレスズームを素早くONにして撮影するのがおすすめです。(※撮影中は使用できないので注意が必要。)
そして、ジェスチャーでの操作に対応しました。これ意外と使用時に助かった機能で…音声が届かないシチュエーションでジェスチャーで録画の開始と停止が行えるのは結構便利でした。



さらに、以前からあった機能にプラスしてといった感じですが、オーディオ機器の接続です。DJI Mic 3・DJI Mic 2・DJI Mic Miniをワイヤレスマイクとして受信機なしで接続でき、ワイヤレスイヤホンとしてお手持ちのBluetoothヘッドセットを接続することもできます。
Action 6の内蔵マイクも想像以上に綺麗でしたが、少し離れた位置から綺麗に音声を撮影するのであればワイヤレスマイクは欠かせません。それに加えて、万が一のワイヤレスイヤホンも使えると…。(マイク用途としてなので記録音声のモニターとしては使えない。)音質はイヤホンのマイク性能に依存しますが、ワイヤレスマイクを忘れてしまい、どうしても必要な時の最終手段としてはいいのではと思いました。ちなみに接続はすごく簡単でめちゃくちゃスムーズです。
不安を最小限に!
カメラは使い始めて初めて「本当の良さ」が分かると思っています。
今回も細かな使い勝手の改善が多く、撮影中ストレスが少ないのが印象的でした。

どれも“もしもの時の保険”として、クリエイターにとって心強い機能です。「カード忘れた…」というよくあるミスにも対応できるのは大きいです。

そして4時間持つバッテリーは1日撮影する分には全く問題ない性能です。センサーが大きくなっていたり、ハード面でのアップデートがありながら前モデルと変わらず長時間の撮影にも耐えうるバッテリー寿命で本当に助かります。(※これまでのバッテリーと互換性あり)

最後に音声のバックアップ録音機能。ワイヤレスマイクが何かの原因で撮れていなかった時の保険や、「環境音も録りたい!」みたいな時に動画の別トラックもしくは別の音声ファイルとして内蔵マイクの音声を同時に収録することができます。
アクセサリーでさらに拡張できる表現方法


今回新たにレンズがふたつリリースされました。マクロレンズとFOVブーストレンズです。
どちらもOsmo Action 6でしか使用できないのは少し痛いですが、こういったアクセサリーを使うことでアクションカメラがより一層楽しくなります。

マクロレンズは最大11cmまで寄れるため、料理や小物の“質感重視のカット”を簡単に撮れます。背景も綺麗にボケるので、表現力がぐっと上がった印象です。ただし、フォーカスはマニュアルになるため少し慣れが必要なレンズでもあります。それに水中では使用できない点にも注意が必要です。


そしてFOVブーストレンズでは、182°という超広角で撮影ができ、FPVドローンのようなダイナミックな映像を撮影することができます。


さらに、エクステンショングリップなどを活用することで非日常的なハイアングルでのショットを実現でき、長い棒を使うというそれだけなのに映像に面白みが生まれます。
これらのアクセサリーをOsmo Action 6と組み合わせることで本体の可能性がさらに広がるのを感じました。今回ご紹介したもの以外にも本当にたくさんのアクセサリーが用意されているので、色々と試すのもこのカメラの面白さかもしれません。
実際に使用してみて気になったところ
基本的にはめちゃくちゃ楽しいカメラでしたが気になる点ももちろんあります。
●クロップグリッドと呼ばれるガイドラインがそのまま記録される

センサーの比較的広い範囲を使った1:1のアスペクト比率での撮影ができるとお伝えしましたが、その際右下のクロップグリッドと呼ばれるガイドラインを表示できる機能をONにしてしまうと、なんとそのまま四隅が欠けた状態で記録されます。おそらく縦と横の記録範囲を分かりやすく表示してくれてるのでしょう。


しかし、ユーザー視点だとガイドを入れずに1:1で撮影した方が四隅も活用できたり正方形の動画として使えたり、便利なのでは?と思うわけです。正直なぜこの機能があるのか分かりません。
●フィルムトーンの自由度が低い

今回から新しくフィルムトーン機能が加わりました。映像の質感をカメラ内部でいい感じにできる機能です。色味の編集に時間をかけずにいい感じにしたい人におすすめの機能で、ノーマルの10bit撮影時に活用できます。しかし制限があり、16:9 アスペクト比 4K/60fps 以下、または 4:3 アスペクト比 4K/30fps 以下でしかフィルムトーン機能を使えないのです。1:1のスクエアや高フレームレートでの使用ができないという点は少し自由度が低いかなと感じました。
●タイムラプスの完成フレームレートが25fpsか30fpsのみ

普段24fpsで撮影することが多い僕からするとここの選択肢は多めに欲しかったなと思います。
●モード選択時のタッチレスポンスが少し気になる

モードは横スワイプで選択していくのですが、この時の速度が意外と気になりました。主観ですが少し食いつきが遅く、希望のモードを選択するまでに若干時間がかかるんです。
モードはユーザーの用途に合わせてプリセットを保存しておくことができるのですが、これが増えていくにつれてモード選択も当たり前に増えていくので、指に吸い付くぐらいスムーズだと嬉しいなと思いました。(※設定でモード選択時に表示するプリセットを任意で選択できます)
もろもろ細かな部分ではありますが、使っていくと意外と気になるポイントでした。
アクションカメラの新境地へ

DJI Osmo Action 6は、アクションカメラの“次のかたち”を示してくれた一台だと思います。画素ピッチの大きなセンサーと可変絞りというふたつの進化によって、これまでのアクションカメラでは難しかった表現へと踏み込んだ印象があります。そのうえで、タフさや操作性といったシリーズの本質的な良さはそのままに、小さなカメラでも思い出を驚くほど綺麗に残せるようになりました。
撮影のハードルが下がれば下がるほど、体験の豊かさは自然と広がっていきます。機材に気を取られず、目の前の景色や瞬間に集中できる。その価値を最大化してくれるのが、このカメラの魅力だと感じました。
これからの進化も楽しみです!


