レポート●大浦タケシ

京都太秦の映画スタジオ「松竹京都撮影所」に於いて、DJI JAPAN と DJI正規販売代理店・LANDSCAPE  の共同開催によるプロ映像関係者向けワークショップ「DJI PROFESSIONAL WORKSHOP」が2017年11月10日開催された。これは最新のジンバル・Ronin 2と、Super35mmセンサーを採用したカメラ・Zenmuse X7を搭載したInspire 2を使い、最小の人員と機材で映画品質の作品に仕上げる撮影フローを紹介するもの。今回、同ワークショップを取材する機会を頂いたので、その様子をお伝えしよう。

 

Ronin 2 と Inspire 2 を使った撮影フローを紹介


▲まずは撮影所内にある試写室で、Ronin 2とInspire 2を使い撮影された3分ほどの動画を参加者は鑑賞。動画のロケ場所はワークショップの開催された松竹撮影所内のオープンセット。

ワークショップの参加者は、まず撮影所内にある試写室にて、Ronin 2とInspire 2で撮影した3分程の動画を視聴。この動画を元にワークショップのレクチャーが行われる。動画の内容は3名の役者による殺陣で、舞台はもちろんこの松竹撮影所内のオープンセット。ワークショップ開催前日に撮影を3時間ほど行い、ワークショップ開始直前に編集を終えたばかりだという。その内容はというと、動きと迫力あるカメラワークで動画としての完成度は極めて高く思わず見入ってしまうものであった。


▲スーパー35mmセンサーを搭載する最新のカメラ・Zenmuse X7を搭載したドローン・Inspire 2。

 

Ronin 2の撮影レクチャーではバギーとの組み合わせも

動画が終了すると、撮影所内のオープンセットに移動。そこは先ほど見た殺陣の舞台となったところだ。最初はRonin 2を使った撮影フローの紹介が ビデオグラファーの吉田泰行氏(アルマダス)よりレクチャーされた。ワークショップ開始は、まずバギーカム・Motion Impossibleがオープンセット奥から砂埃を巻き上げながら自走で登場。バギーカムには、RED Weapon 8KがRonin 2を介して取り付けられている。早速演者が殺陣を始めると、バギーカムも同時に撮影を開始。撮影した画像はダイレクトに参加者近くにあるモニターに映し出され、その様子をリアルタイムに確認することができる。演者の動きに応じてバギーカムが動くが、映像の安定感の高さはレールドリーにカメラを載せているよう。むしろ演者の激しい動きに応じた前後左右の自在な移動は、レールドリーにはないものである。


▲バギーカム・Motion Impossibleに載せたRonin 2。バギーカムの激しい動きでもカメラを確実に保持し安定性は極めて高い。


▲バギーカムMotion Impossibleのオペレーターが持つプロポ。撮影ではドローン同様、繊細な動きを要求されるという。


▲Ronin 2+Motion Impossibleによる撮影の様子。音もなくするするっと演者に近づいていく。

次に「Ronin 2」はバギーカムから外され、専用のグリップを装着。さらにデモンストレーターの吉田氏の背負うレディーリグに装着され、手持ちのスタイルに変身した。吉田氏がスタンバイするとすぐにバギーカムの時と同様に殺陣を開始。激しい役者の動きにデモンストレーターがついていってもカメラアングルの不自然な挙動などない。カメラにはマットボックスが、さらに外部モニターやトランスミッターなどRonin 2に装着されており、なかなかの重装備で、話によるとその重さは15kg程とのこと。しかしながら、デモンストレーターが演者を追って動き回っても、安定する防振性の高さは特筆すべきものがある。

 


▲背負ったレディーリグにRonin 2を装着。懸架するカメラはマットボックスを装着したREDで、その他にモニターやディレクターのモニターへ映像を送信するトランスミッターなどが装着される。

 
▲ハンドリングによるRonin 2での撮影の様子。オペレーターの意図としない挙動をカメラに伝えることが一切なく、スムースなカメラワークを実現している。

 

Inspire2のワークショップ

続いて、Inspire 2による空撮ワークショップとなった。レクチャーはDJI JAPANのドローンパイロット・中村佳晴氏。Inspire 2には最新のZenmuse X7を搭載する。X7はSupere 35mmセンサーを搭載し、独自のレンズマウントであるDLマウントを採用、6K CinemaDNGと5.2K Apple ProResに対応するなど圧倒的なスペックを誇るDJI最新の空撮用カメラである。2オペによる運用で、同じ殺陣を今度は上空から撮影を行なった。撮影は2回行い、1回目は通常のフライトモードで、2回目は低速のトライポッドモードによる撮影となった。トライポッドモードでは、機体をゆっくりと制御できるため安定性がより確保しやすく、通常のモードに比べて、演者に対して、より安全に迫れることを解説。迫力ある映像が会場のモニターに映し出され参加者の注目を集めていた。ワークショップは以上で終了となったが、参加者の多くはその場に残り、DJI JAPAN 関係者などへ質問や、撮影に使われたRonin 2を実際に持ってみるなどしていた。また、別室の特設スタジオでは周辺機器メーカーの展示も行われ、こちらも多くの参加者が訪れていた。


▲Inspire 2でのワークショップでは、ドローンパイロットの中村佳晴氏がレクチャー。映画やTVCMなどの現場ではドローンの操縦とカメラ操作を2人で担当する2オペでの運用を基本的なフローとしている。


▲トライポッドモードで撮影を行うInspire 2。

 


▲Inspire 2に搭載されたZenmuse X7には専用レンズ・DL-S 16mm F2.8 ND ASPHが装着されていた。交換レンズは現在のところ4本を用意し、すべて単焦点レンズ。

 

 

 

 

東京での開催を期待

今回のワークショップは短い時間ながらたいへん興味深く感じられるもので、プロの映像制作者のみならず広くDJI製品の特徴を強く訴求できるように思われる。DJI JAPAN 関係者に行なったインタビューでも話が出ていたが、ワークショップで使われた動画は今後再編集のうえ、YouTube にアップするとのことなので、その際はぜひ見ていただければと思う。Ronin 2やZenmuse X7を搭載したInspire 2の実力を改めて知ることができるはずだ。また、今回のワークショップは京都での開催であったが、ぜひ東京方面での開催も希望したいところ。オープンセットの問題などあるかもしれないが、プロの映像関係のみならず DJIユーザーから広く注目を集めるはずだ。


▲殺陣を披露してくれた演者とDJIスタッフの記念撮影。同じシーンを何度何度も演じた3名の侍に感謝!

INTERVIEW

▲DJI JAPAN株式会社の映像ディレクター・熊田雄俊氏にこのイベントについて話を伺った。

筆者 このようなワークショップを行おうと思われたきっかけは?

熊田氏 弊社ではプロラインとしまして、Ronin 2やInspire 2などのプロダクツがございます。スペックだけ見ましてもかなり魅力的な製品ですが、実際に使っているシーンをご覧いただいたり、ユーザーご自身で触っていただかないと本当の魅力というのはなかなか気づいてもらえません。そのため、それらを使っているシーンが実際に見れて、なおかつちょっとした体験もできる場所を設けたい、というのがこのイベントを開催しようと思ったきっかけです。

筆者 今回のワークショップのセッティングは苦労されたのではないでしょうか。

熊田氏 会場となった松竹撮影所が積極的にご協力していただいたおかげでスムースに開催できました。演者の方々も快く引き受けていただいたことも大きかったと思います。

筆者 来場者の声は何かありましたか?

熊田 今までこのような展示会の場合、別の映像が流れて説明する、あるいは訴求するというようなことが一般的でした。しかし今回の場合、事前に見た映像と説明する場所が同じで、しかも実際それがどのように使われるか見ることができ、とても勉強になったという声などお聞きしました。

筆者 東京での開催のお考えは?

熊田氏 今回京都で開催した理由としましては、共同で開催のランドスケープ社が映像関連の機材に強いうえに、よいロケーションがあったことが大きかったと思います。今回の結果を踏まえて、今後、関東などでも実施していきたいと考えております。

筆者 セミナー開催前日に撮影された殺陣の動画は素晴らしかったです。ぜひYoutubeなどで多くのDJIのファンに見せていただけないでしょうか?

熊田氏 参加者の皆様にご覧いただいた動画は、ワークショップ当日の朝にやっと完成したものです。そのため、作品としてもっと詰めたいところがありますので、そこを修正したうえで弊社のYoutubeのほうで公開しようと思っております。ぜひご期待ください!
(先般開催されたInter BEE 2017ではシグマ社のブースで動画の視聴ができた)

 

 

別会場での機材展示の模様

EIZOのブースでは4KおよびHDR対応、DCI-P3色域98%をカバーする「ColorEdge CG318-4K」をアピール。キャリブレーションセンサーを内蔵しているのもこのモニターの強みだ。

 

シグマのコーナーでは最新のシネレンズを一堂に展示。スチールカメラ用レンズで長年培った高い光学技術が惜しげもなく注入されており、卓越した描写特性を誇る。

信頼性の高いハードディスクで知られるG-Technologyでは、「mobile SSD」など展示。同モデルは最大2TBのSSDを積み防水防塵、耐衝撃性を備える軽量コンパクトなSSD。

Blackmagicdesignでは、編集/カラーグレーディング/音声ミックスに対応した映像制作ソフト「DaVinci Resolve」のデモを開催。来場者の注目を集めていた。

DJIでは、「Zenmuse X7」とともにDLマウントシステムに対応したDLレンズを4本リリースした。写真はそのうちの3本で、左より「DL 50mm F2.8 LS ASPH」「DL 35mm F2.8 LS ASPH」「DL 24mm F2.8 LS ASPH」。

 

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