RIGHT UP
ライトアップ/ウインタースポーツをはじめ、ランニングや自転車、サッカーやバスケットなどの球技、釣り、ライフセービングといったアウトドアスポーツの映像作品を手がける制作会社。スタッフのほとんどがスキーやスノーボードといったスポーツのアスリートで、アスリート目線の撮影を得意としている。
ライトアップのWEBサイト●https://www.rightup-inc.com/
雪山のアクションスポーツ撮影の可能性をMavic Airの機動性と描写力が広げてくれる
羊蹄山の頂上から、プロスキーヤーの河野健児さんが、高低差1000mの斜面をわずか2分で滑り降りる。真っ白な雪面に一筋のシュプールを描きながら滑走する河野さんを、さまざまな視点で記録したドキュメンタリームービー『EXPLORING A DIFFERENT ANGLE』は、アウトドアブランドのTHE NORTH FACEとDJIのコラボレーション作品。同作を制作したのがRIGHTUP-Inc.の代表でもある小林進也さんと加藤久範さんだ。
「雪をかぶった羊蹄山の頂上まで登るためには、数多くのバッテリーを持っていくことも含めて、ドローンの選択肢はMavic Airしか考えられませんでした」と話す加藤さん。6時間かかって登頂した本番に加えて、その1か月前にはロケハンのためにやはり5時間半かけて羊蹄山を登頂。長時間の登坂のために地上撮影用の一眼レフのレンズも1本に絞るなど、限られた荷物の中で4Kも撮れるドローンはMavic Airしかなかったというわけだ。
撮影日の山頂付近は風が強く、一時は撮影が危ぶまれたほど。それでも一瞬風が弱まったわずかなタイミングを狙って撮影を敢行。「山の上でドローンを飛ばす場合、やはり風は強敵です。弱まったといってもドローンにとっては充分強く、離着陸は岩陰から行いました。また、強風の中で機体を戻す途中にバッテリーがみるみる減っていくのにもひやひやしました」と加藤さん。また、氷点下の撮影となるため、バッテリーは常にウエアの内側に入れて温めていたという。
「普段はPhantom 4 Proを使っていますが、画質面でもほとんどそん色なく、4Kで高いビットレートでも撮れますし、EOS 1DXの画と合わせても違和感ありません。個人的にはMavic Proより色味はMavic Airのほうが好みですね」と話す加藤さん。ホワイトバランスをEOS 1DXと揃えた以外は、ピクチャープロファイルの設定はほとんど標準だったという。
今回の作品以外にも、さまざまなアウトドアスポーツなどの撮影でドローンを使うRIGHTUP。「アクションスポーツをしていると、どうしても空撮したくなるんです」と小林さん。ドローンの導入は早く、2013年にはキットのフレームにDJIのフライトコントローラーを積んで飛ばしていた。今ではMavic Airをはじめ、映像作品を作る中でドローンは欠かせない撮影機材となっている。
登頂6時間、標高差1000m、滑走時間2分
100km/h超で滑り降りるチャレンジを4機のMavic Airが追うショートムービー
『EXPLORING A DIFFERENT ANGLE』
クリエイティブディレクター/コピーライティング:前田 実(オリジナルテクスト)
プロデューサー/アートディレクター:高原弘樹(オリジナルテクスト)
登頂まで6時間かかった標高差1000mの斜面を、滑り降りる目標時間はわずか2分。ときに時速100kmを超える滑走スピードは、実はドローンの撮影にとっても厳しい条件となった。というのもドローンは下降が苦手で、この急斜面をハイスピードで滑走する河野さんを追うのは至難の技である。そこで滑走コースを頂上、中間、ベースと3つのパートにチームを分け、各ポイントからMavic Airを上げて無線でやり取りしながらそれぞれのパートに合ったアングルや画角で撮影した。
「滑り手ありきの撮影なので、河野さんがどこを滑るのかを把握していないと画角が決まらないし追えません」という小林さん。その中で、「俯瞰で撮ってかっこよく見えるところや、斜面と麓の街並みがレイヤーになって動いて見えるといったポイントをロケハンの時に探しました」と付け加える。実は広い斜面が得られることで選んだ羊蹄山ではあるが、こうしたロケハンから、あえて地形の変化が豊かな斜面を選んで河野さんに滑ってもらうことで、山のダイナミックな表情を描き出せたという。
作品の中では頂上付近の撮影を担当した加藤さん。滑り出した河野さんの動きにシンクロするように、カメラのMavic Airは斜め左下に高度を下げながら追い続ける。実はこの斜面とまったく同じ角度で斜め下に下降するフライトはとても難しい。これができるのはスキーや山を知り尽くした加藤さんならではの技術だといえる。
●メイキング映像も同時公開中
イタリア・ドロミテの山塊に深く刻まれた雪と岩の回廊を二人のアスリートが滑り降りる
『HOLOCENE』
本作は世界最高峰のアウトドア映画祭「バンフー・マウンテン・フィルム・フェスティバル」に正式出品された。
毎年11月にカナディアンロッキーの麓の小さな村、バンフで開催されるバンフ・マウンテン・フィルム・フェスティバル。『HOLOCENE』はこのフィルムコンペにRIGHTUPが出品した12分のショートフィルムだ。
イタリア北部のドロミテ山地の垂直にそびえたつ岩肌に、裂け目のように縦に走る溝クーロワール。ヴィア・フェラーターと呼ばれる岩肌に設けられたロープやハシゴを使って岩肌を上り、人ひとり通れるか通れないかという狭い壁の間を、スキーヤーの河野健児さんとスノーボーダーの渡辺雄太さんが滑り降りる様を、ドローンのカメラがさまざまな角度から捉えている。
監督はRIGHTUPのスタッフでもある渡辺さん自身で、撮影は加藤さんが担当。標高3000mの冬の岩山にスキーやスノーボードとともにMavic Airを持ち込み、7日間かけて撮影されたこの作品。バンフでは高い評価を受け、コンペのファイナリストにノミネートされた。
▲この映画の監督であり、出演の渡邉雄太さんはプロスノーボーダーでもあり、「IN DEEP」という雑誌の制作も手がけている。
加藤さんが『EXPLORING A DIFFERENT ANGLE』の撮影で使用した機材
▲氷点下の強風下でも無事撮影を終えたMavic Air。
▲頂上まで登った加藤さんは、Mavic AirやEOSのシステム一式などをF-stopのバックパックAJNAに収納して登坂した。
▲カメラはEOS 1Dで、おもに24-105mmの望遠レンズを組み合わせる。
▲EOSのアクセサリーシューにBlackmagic Video Assistを載せて使用 5/ヘルメットやウエアに加えて、雪崩で人が埋まった場合に備えて捜索用のスコップやゾンデ棒も持参。
▲スキーを履いたまま斜面を登るためにスキー板の裏に貼るスキーシール。
▲雪に埋まった際に電波で居場所を発信するビーコン。
▲RIGHTUPでは空撮にPhantom 4 ProとMavic Proも使用している。
『EXPLORING A DIFFERENT ANGLE』撮影の模様
▲撮影は4月の羊蹄山で行われた。
▲標高800m付近の山腹をベースにして、河野さんとRIGHTUPのクルーが頂上まで登坂。
▲4台のMavic Airと4台のカメラを使って、失敗が許されないわずか2分のライディングをさまざまなアングルで撮影。
▲山麓でDJIのフライトチームがInspire2を飛ばして撮影を行なった。また、メイキング映像も制作され、その中ではMavic Airのアクティブトラックを使った撮影の様子も記録されている。
アスリートの気持ちがわかるのが強み
▲左から竹本亮太さん、斎藤正隆さん、小林進也さん、伊藤裕満さん、渡邉雄大さん、加藤久範さん。ライトアップはスノースポーツをはじめ、様々なジャンルのスポーツ動画、アウトドアブランド等のプロモーションムービーを手がける。所属クリエイター自身がスポーツ経験者であるため、アスリートの魅力をより引き出した映像を作れるのが強み。
●12月18日発売の新刊MOOK
『ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年』より転載