DJIが昨年末に中国で発表した屋外用ポータブル電源・DJI Power 1000とDJI Power 500が日本でも発売されることが決定した。これを導入することで、ドローン空撮にどんなメリットがあるのか?

レポート●稲田悠樹(コマンドディー

DJIのポータブル電源には期待せざるを得ない

撮影中バッテリー残量が15%を切ると、心がドキドキして自分のエネルギーも残りわずかな感じがしてしまいます。日々バッテリー残量に一喜一憂しながら過ごしていますが、今回ご紹介する製品は、そんな悩みを解決できるポータブル電源、DJI Power 1000です。

私は主にドローン撮影をしているため、カメラ機材以上に大きな電圧を必要とする場面が多々あります。そのため、これまでにいくつものポータブル電源を試してきました。なので今回、DJIからDJI Power 1000とDJI Power 500の2種類がリリースされたことは大変興味深いです。DJIはこれまでにドローンやジンバル用に大容量バッテリーを数多く製造してきており、バッテリーの質や電圧のコントロール、熱処理など、これまで培ってきた技術には、いちユーザーとして信頼を置いています。今回、大容量のDJI Power 1000をお借りできたので、詳しくご紹介させていただきます。

そもそもポータブル電源とは?

スマートフォンの充電にモバイルバッテリーを使うという経験は、多くの方にとって馴染み深いものだと思います。しかし、ポータブル電源は、まだ使ったことがないという方もいるかもしれません。モバイルバッテリーとポータブル電源は、どちらも持ち運び可能で充電する機能において非常に似ていますが、大きな違いがあります。それは、容量と提供できる電流および電圧の強さです。ポータブル電源は、モバイルバッテリーよりもはるかに大きな容量を持ち、様々な機器に対応することを想定しています。特に、一般的な家電製品を接続できるコンセント(AC)接続が可能である点が大きな特徴です。

VIDEO SALON読者のみなさんなら、撮影現場での用途を想像されるかもしれませんが、それ以外にもキャンプやアウトドア、災害時の非常用電源としても活躍してくれます。例えば、電源のない場所での撮影時にライトやカメラの充電・給電、キャンプ時に携帯電話やポータブル冷蔵庫の電源として、また災害時には照明や通信機器の充電として使用することができます。

今回発売されるDJI Power 1000は、様々な用途に対応しつつ、ドローンメーカーであるDJIならではの機能が追加されてます。

使用感

まず最初に驚いたのが、付属しているモニターが非常に見やすいことです。輝度が高く、また表示もシンプルなので、外でも視認性が高く容量がすぐ確認できます。

充電速度が非常に早いので急な利用にも安心です。一般的なコンセントからの充電で、50分で容量の80%まで急速充電が可能です。昼食の間に充電できれば80%充電できると思うと安心感がかなりあります。さらに、70分で0からフル充電まで行えるという、この充電の速さは、忙しい撮影現場やアウトドアでの使用において、非常に心強い味方になります。

容量の面では、例えばMavic 3シリーズのバッテリーであれば約13本分、Inspire 3のTB51バッテリーであれば約10本分の充電が可能な容量を誇ります。これだけの大容量ならば、1日中外での撮影現場でも安心感があります。

▲山盛り繋いでみましたがどれも最大値で充電してます。

使用中の静音性にも驚きました。Power 1000を充電する際も、給電する際も、非常に静かというか無音に近いです。また今回のレビューで利用した範疇ですと熱くもならずファンも回らずに給電してましたので、そもそもの熱処理の性能の高さを垣間見ました。

▲側面:側面のスリット(写真ではわからないと思いますが奥に冷却のファンがあります)。

安全性についても工夫がされており、ACポートからの電力出力が30分間検出されない場合、自動的にシャットダウンする仕組みになっています。これにより、不要な電力消費や安全でない状況を未然に防いでいます。

▲電源ボタンがオフの場合は無点灯、オンの場合はグリーン。

サイズ感については、持ち運びや車両への収納を考えたときに、大容量と大きさのバランスがちょうど良いと感じられました。もしもう少し大きくなれば、重すぎたり、持ちにくかったりして、持ち運びや車内への収納が困難になるかもしれませんが、このサイズであれば問題ありません。

▲プリウスの荷台に入れた状態。

本体の上部がフラットになっているため、上に充電したいものをのせる事ができるので、置き場所を取らずに充電することができます。また、最大PD 3.1 140WのUSB-Cポートが2つあり、16インチのMacBook Proも充電可能な出力を持っています。

▲MacBook Pro14インチを上にのせた場合。
▲Inspire 3の充電器をのせた場合(8本ではなく、4本の状態)。

アクセサリーについて

マストで購入したいと思ったのが、専用の収納ケースです。これほどの重量がある場合、通常のモバイル電源の場合持ち運びのときと、利用するときで、ケースなどから出し入れが必要だったり、持ち運びがしにくかったりするのですが、この専用の収納ケースであれば、入れたままで、ジップを開けることによって全ての端子にアクセスすることができるので利用と持ち運びの切り替えが非常に簡単です。また放熱が必要な場合は、別の側面を開けることができます。これにより、夏場でも安心して使用できるのではないかと思います。

DJI Power 1000では、DJIならではの独自機能として特筆すべきアクセサリーが用意されています。

DJIのドローンユーザーには魅力的な専用アクセサリー端子、DJI Power SDC Super Fast Chargeを利用すれば、DJI Mavic 3シリーズ、DJI Air 3、Inspire 3などの高速給電を可能にします。(バッテリーごとにそれぞれケーブルを購入する必要があります)

例えば、Mavic 3シリーズのバッテリーを0%から100%まで充電するのに必要な時間はわずか58分(10%から95%までは32分)と、通常の充電器での約96分と比べて大幅に短縮されています。

しかも別途USB C端子やAC端子も利用することが可能ですので、通常の充電器と合わせて利用することによって複数のバッテリーを同時に充電するといったことも可能です。

▲▲DJI Power SDC Super Fast ChargeのMavic 3バッテリー端子(画像では1口利用していますが、端子としては、2口ありますので最大2本可能)。
▲DJI Powerカーチャージャープラグ(別売)を利用すれば、車のシガーライターソケットからDJI Power 1000を充電することが可能になります。
▲DJI Powerソーラーパネルアダプターモジュール(別売)を利用すれば、ソーラーパネルを使っての充電も実現します。ソーラーパネルについては、別途購入する必要があります。(DJIの製品ではなく互換品の利用が可能)。

まとめ

様々な現場での電源問題をこれひとつで大きく解決することができる可能性がある製品だと感じました。また個人的な用途ですが、DJIドローンのバッテリーの価格自体も結構な値段するので、機体ごとのバッテリーを複数本買うのではなく、このDJI Power 1000で現場で充電しながら利用することで、バッテリーの購入本数を抑えることも可能になりますし、モデルチェンジしても全てのドローンのバッテリーを買い換える必要もなくなります。よってお財布にも現場運用にも優しくなる可能性があるなと感じました。リアルにInspire 3のバッテリー2本のDJI Power 1000ひとつの値段が近いので(汗)。

以上、DJI Power 1000のその性能と便利さは、多くのシーンで活躍すること間違いなしです。

DJi Power 1000と500のスペック比較