機動力・空撮力高めのコンパクトドローン! DJI Air 2S Flight&Shooting Test


DJI Mavicシリーズの中級機Airシリーズから新たに登場したAir 2Sは上位機種を上回るカメラ性能を持ちつつも前モデルのコンパクト性を維持している。障害物検出センサーや自動操縦機能もパワーアップしている。そんなAir 2Sを黎明期からドローン空撮に携わる稲田さんにテストしてもらった。

テスト・文●稲田悠樹

 

 

最大5K/30p・4K/60p撮影に対応するDJI Air 2S

▲DJI DJI Air 2S  119,900円(単体)165,000円(コンボ)

2年半前に発売された上位モデルMavic 2 Proを超えるカメラ性能を持ちながらも重量は907 gから595 gへと大幅に軽量化された。さらには上下前後に障害物検出センサーを搭載し、自動操縦機能も向上している。

 

 

DJI史上最も 守備範囲が広いドローン

今回のDJI Air 2Sは、過去最高に守備範囲が広いドローンだ。旅のお供やセルフィーなどライトユーザー向けの自動飛行機能が充実している他、ドローンを駆使した本格的な映像制作の現場にも対応できるクオリティを担保してくれる1インチCMOSセンサーを備え、Log撮影にも対応するなど多様なドローンニーズを満たしている。さらには、35mm判換算で22mmという今までのDJI製空撮用ドローンのなかで広角で撮影できる。DJI FPVは14mmで別格だが、そういった意味でもDJI史上最も守備範囲が広い(ニーズ&画角)ドローンが登場した。

今回も単体セットとフライモアコンボの2種類のパッケージが用意されている。フライモアコンボに関しては、各種アクセサリーがお得なお値段で同梱されている。ただし、ひとつ前のモデルのAir2を持っている方にとってみれば、バッテリーおよびバックパックは同一なので、機体だけを買い替えたい方には単体セットも選択肢に入ってくるだろう。

 

 

1インチセンサーでビットレートも向上

▲Mavic 2 Pro同様1インチCMOSセンサーを搭載。同機では最大4K/30p撮影までだったが、4K/60pや5.4K/30p撮影にも対応。ビットレートも100Mbpsから150Mbpsに向上している。

 

コンボにはNDフィルターも同梱

▲プロポはDJI Mini2と共通。スマホを装着してモニター・アプリ操作用として使用する。映像伝送距離は最大8kmとなっている。

 

Fly Moreコンボには予備バッテリーのほか、NDフィルターも付属




▲Fly Moreコンボには3つのバッテリーを同時に充電できる充電ハブ、4/8/16/32のNDフィルターセットのほか、ショルダーバッグ、予備バッテリー2つが同梱される。また、機体用のバッテリーからプロポに給電できるケーブルも付属する。さらに衝突・墜落などをカバーし、1年間で最大2回の製品交換などのサービスを提供するDJI Care Refreshも付属する。

 

撮影モードによる画角の比較

Air 2Sはフレームレートが30fps以上になると画角がクロップされる。4K/60pではおよそ35mm判換算で30mm。5.4K/30pの場合はクロップされず、4K/30p時と同じく22mmの焦点距離となる。いずれもD-log MにMavic 2 ProのLUTを当てた状態。動画ではMavic 2 Proも含めて紹介。

 

 

機体性能について

実際に2週間利用してみたところ、飛び味は上位機種のMavic 2 Proと何ら変わらぬ感覚で使用でき、いつも通りのDJIの安定した飛び方をしてくれる。また、映像伝送システムはDJI FPVと同じO3(OcuSync 3.0)を採用しているものの、機体の飛び味が空撮機としての味付けのため、大きく変わった感覚を得ることはできなかった。逆を言えば今までの空撮機と同じ感覚で、かつMavic 2Proに比べて、小型化されているため安心して飛ばすことができた。

 

 

カメラ性能について

前述の通り、1インチセンサーで35mm判換算22㎜の画角を持ち、5.4K/30fpsおよび4K/60fpsの動画が撮影できる。HLGやLog撮影にも対応するほか、有効解像度は2,000万画素となるため、5.4Kタイムラプスも撮影できる。

ただし、注意点としては、30fps以上(48−60fps)のフレームレートで撮影した場合、画角がおおよそ28〜30㎜(Mavic 2 Pro程度)の広さにクロップされる。

画質に関してMavic 2 Proから乗り換えができるかどうかの別れ目として、個人的にはLogの画質が気になっていた。というのも、過去にPhantom 4 ProのD-logで苦慮した経験があったからだ。同機のD-logはダイナミックレンジが11stopだが、ビット深度が8bitとなるため、カラーグレーディング耐性が低く、思うようなルックを作ることが難しかった。しかし、Mavic 2 Proで10bitのD-log Mが採用されたことでこれが大きく改善された。Air 2Sにも同じくD-log Mが採用され、Mavic 2 Proと同等のカラーグレーディング耐性が得られるのか気になっていた。実際に撮影してみたところ、「乗り換え決定!」と確信した。

2021年4月現在、製品サイトにはAir 2SのD-log MをRec.709の色域にノーマライズするための公式LUTがまだ出ていないため、今回はMavic 2 Pro向けに提供されているLUTを当ててみたが、グレーディングでもちゃんといじれる質感で撮れている。

今回、Air 2SとMavic 2 Proそれぞれでノーマル、HLG、Logの3パターンで撮影したサンプル動画素材を撮影してみた。山と海のふたつのロケーションで撮影してみたので、ぜひダウンロードして、グレーディング耐性なども含めて比較してみてほしい。

●稲田さんがAir 2Sで撮影した素材のダウンロードはこちら

※Chromeをお使いの場合、右クリックして「シークレットウィンドウで開く」でダウンロードいただけます。

 

 

アプリについて

Mini2やAir2と同じDJI FLYアプリを利用する。FLYアプリが発表された際は、カメラの露出設定がオートのみのライトユーザー向けの設計で、WBの変更が設定の奥深くにあるなど、映像の撮影には使いにくさを感じていたのだが、今回のアップデートによって各種撮影設定にアクセスしやすくなっている。また、送信機のfnボタンにカメラ設定呼び出しのショートカットを割り当てることができるため、Logの切り替えなども容易になった。

 

以前と比べ、撮影設定にアクセスしやすくなった


▲アプリ画面右下のカメラアイコンでAutoとPro(マニュアルのこと)を切り替えが可能。F値は2.8固定。シャッタースピードやISO、WB、EV値を変更できる。またLogやフォーマットの切り替えは送信機のFnボタンにショートカットキーを割り当てた。

 

 

自動飛行について

新たな自動飛行機能として、「マスターショット」が追加された。この機能は、被写体を選択すると、自動で10種類の異なるパターンを順番に実行し短編動画を生成するという機能だ。実際にやってみた感想としては、過去搭載された自動飛行を連続で行う機能で、その後テンプレートがいくつも用意されており、それによってさまざまなバリエーションに飛んだショートムービーを作ることができる。旅のセルフィーに最高な機能だ。ただし注意としてはFHDでの記録になる。

 

自動操縦・自動編集で動画が作れる「マスターショット」

アプリで被写体を設定したら、自動で10パターンの飛行を開始。撮影後にテンプレートを選べば、自動でBGMやテロップ付きの映像を作れる機能。

 

 

障害物センサーについて

慣れてしまえば攻めた映像を撮るためにオフにする方が多いと思うのだが、最初のうちはオンにしてなおかつ、センサーが認識した際に、止まるのか避けるのかを設定から選んでおくことがおすすめだ。避ける設定では前進しつつ障害物を自動的に避けて再び元のルートに戻るのはなんとも不思議な気分だ。ただし、Air 2Sには左右に障害物センサーはついていないので、そこは注意が必要だ。自動飛行の際にも横移動する飛び方もあるのでしっかりとルートは確認しよう。

 

障害物検出センサーの設定

▲アプリの障害物検出センサーの設定画面。「迂回」を選ぶと障害物を検出した際にそれを避けて飛行する。「ブレーキ」は障害物を検出した際にその場でホバリングして止まる。

 

 

まとめ

完全にMavic 2 Proの上位互換とも言えるポジションになったAir 2S。大きなメリットのひとつは、5.4Kによって4K映像を制作する際のクロップ幅を持てることだ。空とのバランスや余計なものが写ってしまった場合など、4KやHD仕上げの場合のクロップの自由度が広がるのはうれしい。

もうひとつは映像の品質を落とさず荷物を減らせること。今までならば小型化=カメラ性能に妥協していたのだが、Air 2Sでは今までメインで使っていたMavic 2 Proよりも上のカメラ性能を有しながらも小型軽量を実現している。

意外と見落としがちなのが予備バッテリーも軽くなるということ。撮影時はショット数に比例して予備バッテリーの本数も増える。本体と送信機、バッテリー3本の場合、Air 2Sが1392g、Mavic 2 Proが1809gとなりちょっとしたレンズ1本分余裕が増えることになる。また予備機を持っていきたい場合には、スマートコントローラーに対応しているためMavic 2 ProとAir 2の2台を持参し、送信機はスマートコントローラー1台でまかなうこともできる。

 

なんと言っても高画質ながら 小型軽量なことが魅力

▲バックパックにドローンと送信機、予備バッテリー3本。さらに一眼とレンズ3本を入れてもなお、ゆとりがある。荷物を減らしても、画質を犠牲にすることなく映像が作れるのはAir 2Sの大きな魅力だ。

 

また、頻繁にあるわけではないが、Phantom 4 Pro、Mavic 2 Pro、Inspire 2の優位性もある。Air 2SやMini 2などで対応できない場面…それはGPSが入らないロケーション(室内や渓谷など)での飛行だ。基本的にはDJIドローンは、GPSが入らないロケーションの場合、飛行高度の制限(機体によって高度が違う)が入るため室内での飛行の際には注意が必要だ。

フレームレートによって生じるクロップファクターに関しては、Phantom 4 Proが4K/60pでもクロップされずにかつ24mm (35mm判換算)で 撮影できるため、そちらを好む人もいるかもしれない。

DJI史上最も守備範囲が広いドローンDJI Air 2Sは、ライトユーザーにとっても、プロにとっても選んで損のない1台であることは間違いないだろう。いつの日かMavic 3が出るまでは…?

 

 

 

◉稲田悠樹
コマンドディー代表。空撮業務を行う傍ら、初心者向けドローン情報サイトDRATIONを運営。その他様々な雑誌等にドローンに関わる記事・情報を提供。企業へのドローン導入に関するアドバイスも行なっている。 熊本地震では、災害ボランティアとして活躍する一方で、被災地現場でのドローン空撮で自治体とも連携。WEB●https://command-d.com/

 

 

VIDEO SALON2021年6月号より転載