LARGEこと、動画クリエイターの山﨑大輔さんは、MTB(マウンテンバイク)をはじめとするエクストリームスポーツ関連の映像作品を主に手がけている。そんな山崎さんが愛用するカメラが「EOS C70」。そこで今回は、今年11月に発売されたCINEMA EOS SYSTEMの新製品「EOS C80」を使って、MTBのショートフィルムを撮っていただいた。定評あるC70の機動性を継承しながら、よりドラマチックな映像表現が実現できるという「EOS C80」の使い勝手を語ってもらった。

取材・文●NUMAKURA Arihito/写真・BTS映像●Holy/MTBライダー●Hajime Imoto/ロケ地協力白馬岩岳MTB PARK/構成●編集部 萩原/協力●キヤノンマーケティングジャパン株式会社


山﨑 大輔 / LARGE

1992年3月10日生まれ。和歌山県出身。大阪府在住。 映像制作の世界に入ったのは2019年。 元々マウンテンバイクのライダーだった経験から、 映像ディレクター / カメラマンとして 主にスポーツに関わるプロモーション映像や SNS向け動画、ドキュメンタリー映像の制作を中心に活動。 受賞歴等 エクストリームスポーツ映像コンテスト CREATIVE X AWARD 2024:最優秀賞 WEBInstagramYouTube



キヤノン EOS C80
オープン価格(キヤノンオンラインショップ価格 896,500円〈税込〉
ボディのみ

「EOS C80」は、「EOS C70」(2020年11月発売)の高い機動性と操作性を継承すると共に、「EOS C400」と同じ6Kフルサイズセンサーを採用したRFマウント搭載のデジタルシネマカメラ。小型・軽量な筐体による高い機動性を実現しながら、被写界深度が浅く、美しいボケ味で印象的かつ高品位な映像表現を実現している

絶対に撮り逃さないために、EOS CINEMA SYSTEMSを選んだ

LARGEさんは、日頃マウンテンバイクを中心にエクストリームスポーツのアスリートとタッグを組み、アスリートのPR映像やアスリートをスポンサードする企業のPVなどを手掛けている。ワンマンや少人数チームで撮影を行うことが多いという。

――まずは、自己紹介からお願いします。

動画クリエイターの山﨑大輔です。LARGE(ラージ)というクリエイター名で活動しています。主にスポーツのプロモーション映像制作を手がけています。その中でもエクストリームスポーツと呼ばれる、激しいアクションや危険さを併せ持ったスポーツの映像をメインにしています。

――エクストリームスポーツの映像を手がけ始めたきっかけは?

エクストリームスポーツの中でも、マウンテンバイク(MTB)の映像を中心にしているのですが、実は僕自身が趣味でMTBをしていたライダーだったという経験が生きています。5年ほど前に初めてのカメラを買いMTBの映像を撮り始めたのですが、これを仕事にしたいという思いが強くなり、カメラを買ってから1年くらいで営業の仕事を辞めて、アルバイトをしながらプロとしての映像制作にも取り組み始めたのがスタートですね。だから、MTBには特に思い入れがあります。

――MTBなどの競技大会の映像制作が中心ですか?

競技大会の映像を撮影することもありますが、アスリートのスポンサー企業から依頼を受けて彼らのプロモーション映像作品を作るといった事のほうが多いです。MTBを中心としたエクストリームスポーツのフィルムメーカーとして活動しています。

 

 

――普段の制作スタイルを教えてください。

ビデオグラファースタイルでワンマンか、2〜3人規模の少人数で制作することがほとんどですね。エクストリームスポーツの撮影って、大きなジャンプ台を飛ぶといった、難しくて危ないアクションを撮ることになります。アスリートが命がけで、技にトライするわけですが、それを撮り逃すことは絶対に許されません。そこで僕は、EOS C70を使っています。

 

――EOS C70を選ばれた理由を教えてください。

間違いなく収録できること。それを、どんな状況でも行えることを重視したからです。

EOS C70、そして今回使わせてもらったEOS C80は、映像制作専用のカメラであり、一般的なミラーレスなどのレンズ交換式デジタル一眼に対して、バッテリーの持ち時間や排熱機構などが長時間の収録に対応できるように設計されています。入出力端子もSDI出力用のBNC端子やオーディオ入力用のミニXLR端子が内蔵されているので、映画や放送業界で使われている業務機器を接続することができます。

それでありながら、EOS C70とC80はミラーレスより少し大きいぐらいのサイズなのでビデオグラファースタイルでも扱えます。NDフィルターも内蔵されているので、自分が「こう撮りたい」と思ったら手早く切り替えられます。アスリートの技がいつ成功するのか読めない、そして山道のようなタフなシチュエーションでの撮影が当たり前のエクストリームスポーツには最適のカメラだと思います。

EOS C80では、左側面の上部にSDI OUT端子が追加された

 

EOS C80左側面に搭載された2つミニXLR端子

 

EOS C80で撮ることで、斬新な映像が実現した

――今回、EOS C80で撮影された作品について教えてください。

白馬岩岳MTBパークで、2024年度の全日本チャンピオンに輝いた井本くん(※1)と一緒に作り上げた映像作品になります。

井本くんの迫力あるライディングと白馬の美しい自然が見どころなのはもちろん、おそらくEOS C80で行ったのはこの作品が初めてだと思いますが、自作した背負子を利用してカメラを遠隔操作して撮影したカットなんかもあります。EOS C80の特性を活かすことで実現できた斬新なビジュアルに注目して見ていただけると嬉しいです。

『ECLIPSE』
『ECLIPSE』ディレクターズカット版

※1:第37回「全日本選手権マウンテンバイクダウンヒル・インディビジュアル(MTB DHI)」男子エリートで1位を獲得した、プロマウンテンバイク選手・井本はじめ氏

 

――背負子を使った撮影について、詳しく教えてください。

骨組みだけのリュックみたいなものに、ジンバルとカメラを取り付けられるシステムを自分で作ってMTBなどの撮影に利用しているんです。今回は、撮影を手伝ってくれたライダーにそれを背負った状態で井本くんの前を走ってもらった状態で撮りました。僕が、DJI Transmissionを使ってカメラを遠隔で操作していました。

LARGEさんが自作した背負子。EOS C80を搭載したジンバルを取り付けた状態でライダーと並走した状態で、LARGEさんはDJI Transmission(映像トランスミッター&ワイヤレスモニター)で画を確認しながらカメラ操作を行うという、リモート撮影が行われた

 

――EOS C80は、6K内部RAW記録ができることが特長のひとつですが、試されましたか?

もちろん。以前、他社製品のHDMIケーブルで接続して外部RAWを記録する方式のカメラを使っていたこともありますが、接続不良で撮れていなかったという苦い経験があります(苦笑)

エクストリームスポーツの撮影では、機材も大きな震動や衝撃を受けることがよくあるので、外部記録方式の撮影は絶対にやらないという思いが、EOS C70を導入した経緯だったりもします。

EOS C80が6K内部RAW記録で撮れることは、安全性を担保しつつ、画にも妥協しなくていいという点ですごく理にかなっていると思います。

――普段からRAWで収録されているのですか?

それぞれの作品で目指す映像表現によって使い分けています。XF-AVCなどで撮ることもありますよ。今回は、ノーマルスピードで撮るショットは、全てRAWで撮りました。120pで撮ったショットは、XF-AVCです。

エクストリームスポーツにおいて、技を成功させることをメイクすると表現したりするのですが、ライダーが技をメイクするのに1〜2日費やすような難しい技の撮影に挑むこともあります。そんな撮影の時って、技をメイクするのがいつになるか全くわからないんですよね。

そのため、そのときの天気や時間帯がわからないので、RAWで撮れることも重要です。RAWデータなら編集時にグレーディングで色にこだわることができるので。

CINEMA EOS SYSTEMの「Cinema RAW Light」は、RAW形式なのに容量がすごく軽い。それなのにグレーディング作業でもナチュラルな色味が作りやすいのが魅力だと思います。

カラーグレーディングはDaVinci Resolveで行なった。
Canon Log2で収録したRAW素材
Cinema RAW Lightで収録した素材にRec.709のLUTを当てたもの。逆光のシチュエーションなので人物は暗く沈んでいる
▲シャドウを持ち上げると、ヘルメットのデザインや服の質感などがしっかりと質感が戻ってくるのもRAW収録の恩恵。

EOS C80は、最大4K/120p(2K/180p)記録に対応(※ Super 35mmモードで4K/120p選択時は画角が約6%クロップされる)

動画記録フォーマットに「Cinema RAW Light」を選択したメニュー表示

――EOS C80は、C400と同様に3段階のBase ISO設定が行えるようになりました。使ってみていかがでしたか?

EOS C70は、ISO800だけですが、EOS C80は例えば800、3200、12800などと3段階まで設定できるので、夜明けの撮影時に効果を発揮しました。日中の撮影でも、120Pで撮っているときに、太陽が雲で隠れてしまったときには800から3200へすぐに切り替えることで撮り続けることができました。

――最大16stopsのダイナミックレンジについてはいかがでしたか?

そうですね。今回は、逆光のショットも多かったのですが、そうしたシチュエーションの素材でも編集時に黒つぶれや白飛びが発生することはありませんでした。ダイナミックレンジが広いCanon Log 2のメリットを感じたところです。

EOS C80では、低感度から高感度まで3段階のBase ISOをマニュアルで切り替えられるようになった。ダイナミックレンジを確保しつつS/N比が高いBase ISOへ自動で切り換える「自動切り替え」にも設定できる

映像制作に最適化されたカメラの真髄を試してほしい

――撮影に使われたレンズを教えてください。

RF10-20mm F4 L IS STM、RF24-105mm F2.8 L IS USM Z、RF70-200mm F2.8 L IS USMの3本です。

実は手持ちのEOS C70では、EFレンズにマウントアダプター「EF-EOS R 0.71×」を付けて使うことがあります。エクストリームスポーツの撮影ではワイドの画角(広角レンズ)で撮ることも多いのですが、EOS C70はスーパー35mm相当のCMOSセンサーのため、直接付けると画角が狭まってしまうという課題がありました。それに対してEOS C80は、35mmフルサイズのCMOSセンサーなので、RFレンズをネイティブの焦点距離で使えることにものすごい進化を感じました。

それとEOS C80で一番驚いたのが、AF性能です。フォーカスが合うまでの速さにも驚きましたが、その後もフォーカスが合った状態で撮り続けられる、掴み具合みたいなところに感心しました。フォーカスが合うときも、機械的にピタッと合う感じではなく、マニュアルで合わせたときのニュアンスがあるのが気に入りました。

――EOS C80では新たに実装された裏面照射積層CMOSセンサーによって、従来よりも広範囲でのAFが可能になったそうです。

それを聞いて実感したのですが、被写体ブレを気にすることがほとんどありませんでした。3段階のBase ISOやAF性能が組み合わさってくれたからだと思いますが、ハイスピード撮影時でも、スポークの回転する動きまで収めることができました。

井本くんが高所からジャンプして、カメラに向かってくるシーンの撮影でも、最後まで顔にフォーカスが合っていたりしたので、より自由に撮影できたと思います。

本編動画からの切り出し。カメラに向かってジャンプする井本選手を捉えた瞬間。高速で移動する被写体にもAFでフォーカスが合い続けている。高速で回転するタイヤのスポークも歪んでおらずローリングシャッター歪みにも強い。

キヤノン
RF10-20mm F4 L IS STM オープン価格(キヤノンオンラインショップ価格376,200円〈税込〉)

RF24-105mm F2.8 L IS USM Z オープン価格(キヤノンオンラインショップ価格495,000〈税込〉

RF70-200mm F2.8 L IS USM Z オープン価格(キヤノンオンラインショップ価格495,000〈税込〉

――最後に、EOS C80はどんなクリエイターにオススメだと思いますか?

まずは、僕みたいなエクストリームスポーツを撮っているクリエイターにオススメしたいです。NDフィルターが内蔵されて、長時間の撮影ができること。さらに頑丈なので山道などのタフな環境でも安心して運用できるし、6K RAWを内部で記録できるので、映像クオリティも追求できる。映像専用機としての信頼性と、機動力、そして高い質感で記録ができる描写力を兼ね備えたカメラなので、ぜひ試してほしいです。

ミラーレス一眼とかを使って、スチール撮影の延長でムービーを撮っている人や、ビデオグラファースタイルで活動している人には、映像制作専用カメラへのステップアップとしてすごくフィットすると思います。

 

BTS映像 

BTSディレクター:HOLY(Instagram

今回の撮影でLARGEさんが使用した機材一覧。EOS C80をはじめ、レンズはRF10-20mm F4 L IS STM、RF24-105mm F2.8 L IS USM Z、RF70-200mm F2.8 L IS USM。三脚はザハトラーACEのヘッドに、Leofotoの三脚。ジンバルはDJI RS 3 Pro。マイクはRODE NTG5。写真左下の背負子にはジンバルを据える台座があり、自転車で並走しながら撮影するシーンで使用した。