APS-CセンサーのRFマウントミラーレスの入門機EOS R50の動画版という呼ぶにはふさわしくないほど動画機能を充実させた、ミニシネマカメラ的なカメラが登場した!縦型動画も重視したスタイルは新しい動画クリエイターを想定している。Instagramリールで旅の動画を公開している正垣由佳さんに試していただいた。


レポート●正垣由佳



京都宇治市在住のクリエイター兼ライター。平日はIT企業のシステム開発のディレクターとして働きながら、週末はカメラを片手に、日本各地のノスタルジックな風景や美食スポットを巡り、写真や映像を通して現地の空気感や人々の営みの魅力を発信している。https://www.instagram.com/pit_acco/

普段使っているカメラ
●ニコンZ5(NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、NIKKOR Z 40mm/f2) 
●リコーGRIII ●ソニーFX30(FE 24-105mm F4 G OSS  SEL24105G、FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G)●OsmoPoket3

正垣由佳さんがEOS R50 Vで撮影したInstagramリール『緑萌ゆる雨雫』はこちらから見られます。



●ボディ 
オープン価格(113,300円前後)

EOS R50 V 
●RF-S14-30 IS STM PZレンズキット  
オープン価格(140,800円)

実勢価格はキヤノンオンラインショップ



本格的に動画を撮ろうと思うと、どうしても機材は大きくて重くなりがち。そんな印象をガラリと変えてくれるカメラがこのEOS R50 Vだ。

わたし自身、いろいろな地域を巡って旅をするように撮影する仕事が多いため、付属品ひとつとっても少ないほうがありがたい。もちろん、友人と旅行に行く時も、大きなカメラバッグを背負うより、コンパクトなショルダーバッグを肩にかけてスマートに巡りたい。

EOS R50 Vは本体のみで約323g、キットレンズのRF-S14-30 IS STM PZを装着してもペットボトル1本程度の軽さで、驚くほどコンパクト。旅行や日常で動画を「気軽に、けれど本格的に」撮りたいクリエイターにとっては、頼もしい相棒になってくれそうだ。


操作性は“動画特化”の使いやすさ

EOS R50Vは、動画撮影に特化したカメラということもあり、操作ボタンの多くが動画関連に割り当てられている。

シャッターボタンが最初から録画ボタンになっているだけでなく、前面の動画ボタンやタリーランプも搭載。

手のひらサイズながらグリップがフラットで握りやすく、縦でも横でも違和感なく、しっかりとホールドできる。

さらに三脚ネジが底面と右側面の2箇所にあり、縦撮影でもL字プレート不要で固定できるのは、投稿用の縦動画を多く撮るわたしにとって非常にありがたい仕様だった。

また、SNSへの投稿を前提とした縦撮影が主流になる中、画面UIが自動で縦に切り替わる点は操作時のストレスを減らしてくれる。タッチ操作も快適で、親指で操作しやすい場所にボタンが集約されているのも使いやすい。

ボディの右にもネジ穴が切られているので、L字プレートがなくてもリモコン機能付きのトライポッドグリップ HG-100
TBRを装着して縦位置撮影をすることができる。縦位置撮影時には液晶モニターの表示も縦仕様になる。


エントリー機でも“自分の世界観”が生み出せる

エントリー機と言いつつも「フォルスカラー設定」や「Log撮影」も備わっていることも注目すべきスペックのひとつ。カメラ本体には直感的に画作りができるように背面にCOLORボタンがあるので、1クリックでColor Filer・Picture Style・Custom Pictureの3つの画作り機能にアクセスすることができる。

わたしはLog撮影+DaVinci Resolveでのカラーグレーディングが基本スタイルだが、本機ではカラーフィルター機能が非常に優秀。難しいソフトを使わずとも、自分の世界観を表現できる。さらにいうと、動画だけではなく静止画でも使えるところもポイント。

 EOS R50 Vは約2420万画素のAPS-Cサイズセンサーと映像エンジンDIGIC Ⅹを搭載しているので、動画も写真も欲張りたいというニーズをしっかりと満たしてくれているのも、隙がなく好感が持てる。

ほかにも、自身で作成したLUTを取り込んでおけるなど、後からパソコンを開いて、グレーディングをして……という腰が重たくなるような作業をしなくても、自分の世界観にあった色味にぱっと調整できて、旅先でもすぐに発信できるのは助かる。

RF-S14-30 IS STM PZ  14mmで撮影。NDフィルターなし 
RF-S14-30 IS STM PZ  30mmで撮影。NDフィルターなし 
RF24mm F1.8 MACRO IS STMで撮影。NDフィルターあり
RF24mm F1.8 MACRO IS STMで撮影。NDフィルターあり
RF24mm F1.8 MACRO IS STMで撮影。NDフィルターあり
RF24mm F1.8 MACRO IS STMで撮影。NDフィルターあり

Color Filterを試してみる

今回はColor Filter「AccentRed」と「PaleTeal&Orange」を使用し、京都・嵐山竹林の小径を撮影してみた。

「AccentRed」は赤以外の色味を抑えてくれシックな印象、「PaleTeal&Orange」は緑鮮やかに、雨に濡れた竹林の色味を印象的に見せてくれる。

どちらも RF24mm F1.8 MACRO IS STM 1/60、 F3.5、ISO1250

Pa [PaleTeal & Orange]
Ac [AccentRed]

実写で感じたポイントと注意点

わたしはジンバルや三脚を使わず、手持ちで撮影することが多い。軽量ボディゆえに、ゆったりとした時間の流れを丁寧に表現しようとすると、手ブレ補正機能をもってしてもわずかな揺れが気になる場面もあった。とはいえ、編集で充分カバーできるレベルなので、個人的には許容範囲だ。もちろん、Vlogのような気軽な映像なら、多少の揺れも自然で気にならない。6Kオーバーサンプリングによる高画質4Kを叶えているので、映りもキレがあり不安がない。

一方で、高画質な映像と引き換えに、バッテリーの消耗はやや早め。わたしのように短時間で細かくON/OFFを繰り返す撮影スタイルだと、1日1本ではやや不安が残る。予備バッテリーは必携だ。

Logからグレーディングしてみる

編集時、曇り空でのシチュエーションでの撮影が多く、Log素材の状態ではあまり色が戻ってこないかもしれないと思ったが、再現性が高く、グレーディングの幅をしっかり確保できた。映像制作初心者にとっても、色表現に挑戦しやすいカメラだと感じる。

Logの状態

カラーグレーディング後
Logの状態
カラーグレーディング後

おすすめレンズとセットアップ

ボディとレンズの組み合わせについて、レンズキットのRF-S14-30mmは広角で軽量だが、F値が暗く、室内や夕景ではやや苦戦する場面もあった。なので、もう一本買い足すなら、RF24mm F1.8 MACRO IS STMの組み合わせを推したい。

35mm換算で約40mm相当となり、被写体との距離感がつかみやすく、映像にも静止画にも使いやすいため、この2本があればある程度のシーンは一通り不安なく撮影できそうだ。

RF24mm F1.8 MACRO IS STMとの組み合わせがオススメ。

まとめ

キヤノン EOS R50 Vは、「軽さ」「扱いやすさ」「価格以上の本格性能」をバランス良く備えた一台だった。旅や日常の中で“映像で伝える”楽しさを見出したい人に、ぜひ手に取ってほしいカメラだ。

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動画仕様としては4K 4:2:2 10bit/60p記録に対応。ただ60p記録時は4K Cropとなる。動画連続撮影可能時間は、4K時は自動電源オフ温度設定が「標準」で55分、「高」で無制限に。記録メディアはSDXC/SDHC/SDの1スロット。

VIDEO SALON 2025年8月号より転載