FUJIFILM X-T4 発売前の試作機を速攻現場投入!現場で触って感じたこと


富士フイルムから登場する新型カメラ・FUJIFILM X-T4。前モデルX-T3の性能を踏襲し、ボディ内手ブレ補正や1080/240pのハイスピード撮影など付加価値を高める新機能を搭載。そんなカメラを実際の現場で試してみた。

テスト・文●鈴木佑介/メイキング写真●日野拳吾/モデル●マリ/協力●さくら研究所

 

富士フイルム FUJIFILM X-T4

2020年4月発売
ボディのみ:オープン価格(推定204,500円前後)
レンズキット:オープン価格(推定264,500円前後)

▲キットレンズはXF16-80mmF4 R OIS WR。操作ボタンやダイヤルも富士フイルムならではの「半アナログ、半デジタル」。カメラ上部のダイヤルを見れば電源を入れずとも、現在の露出設定がわかる(シャッタースピード、ISOはダイヤル、絞りはレンズで操作)。

 

▲静止画と動画の切り替えスイッチを新たに搭載。ダイヤルでISOやシャッタースピードを設定。

 

Specification

 

 

撮って出しの美しい描写が富士のカメラの魅力

「富士は別腹」。ここ数年、X-H1やGFX100を触ってきた筆者の率直な感想である。富士フイルムのカメラの魅力はETERNAをはじめとするフィルムシミュレーションだ。これが本当に美しく、撮って出しの精度のほうが下手にlogやRAWフッテージからルックを作るよりも勝ることが多い。「写す」ことから「撮る」ことへ時代が移り、RAW動画やカラーグレーディングが必須のような風潮ができた今、唯一の「撮って出しのオアシス」が富士フイルムのカメラだ。

 

▲XF16-80mmF4 R OIS WR(ETERNA)

▲XF23m mF1.4 R(クラシッククローム)

▲XF23mmF1.4 R(ASTIA)

▲X-T4から新たに加わったETERNAブリーチバイパス。

 

グレーディング自体は大好きな作業なのだが、そもそも論で考えた時に「撮って出しでキレイで欲しい画が撮れるなら、それでいいじゃない」というのが筆者の昔からの考えだ。クライアントワークの際、ポスプロでいろいろと弄る余白を求められない限りは正直、撮影時にルックを作ってOKなら、それでいいと思っている(もちろん、それに対してのライティング、演出としてのセカンダリグレーディングなどは必要になるのは暗黙の了解として割愛する)。また、富士フイルムのカメラはGFXシリーズのラージセンサーを除けば、APS-Cセンサーのカメラである。フルサイズミラーレス戦争の現在において、APS-Cセンサーでいいのか? と思う方もいるかもしれないが、その描写を一度見れば「フルサイズなど不要なのではないか」と思えてしまう。

今回発表されたX-T4は、X-T3とセンサー・プロセッサーは共通になるものの、新たな機能が追加されている。その一つがボディ内手ブレ補正。そして、T3も同様に4K/60pの内部記録に対応していたが、同じセンサーながら1080/240pの撮影にも対応する(T3は120pまで)。さらに強化されたAF性能と昨年発売されたXF16-80mmF4 R OIS WRのズームレンズがキットレンズとなっている。このレンズは35mm判換算で24-120mmとなるため、動画撮影的には最適な焦点距離だ。

 

カメラの主な特徴

▲液晶モニターはバリアングル式に。

▲microHDMIとUSB-C(充電用)、マイク用のステレオミニとリモート端子。

▲X-T3からバッテリーは変更された。

▲デュアルSDカードスロット。

 

 

まずはその軽さに驚いた

今回、正式発表に先駆けて2月中旬の段階で試作機をお借りできたので、レギュラー仕事の現場に投入した実感をお伝えしたい。まず最初に感じたのは「軽い」ということ。軽量、高性能のはずのミラーレス一眼も最近では巨大化が進んでいる中、筆者が…いや、誰もがあの頃夢見た「ミラーレス一眼の軽さ」がそこにあった。今回の撮影はアパレルのデジタルサイネージ用素材撮影だったので、普段はあまりやらない「縦位置」撮影も軽量で撮りやすかった。この軽さを考えるとよくぞここまでの機能を詰め込んだものだと感心する。


▲縦位置で撮影した動画の切り出し。XF23mmF1.4 R(クラシックネガ)

 

 

FUJIFILM X-T4で撮影したプロモーションムービー

銀座にあるイタリアセレクトショップ「global Stance」のPV。全編をX-T4で撮影。

 

センサーはT3と同じということだが、筆者はT3を使ったことがないので、新鮮であった。さすがにフルサイズを上回るGFX100と比較はできないが、過去に触ったX-H1と同じような感覚だったであろうか。今回は筆者が大好きなETERNAは本番では敢えて使わず、被写体の雰囲気に合わせて、「CLASSIC CHROME」や「ASTIA」などを使った。撮影現場ではモニタープレビューを見ながら依頼主は「キレイ」を連呼していた。完成されたルックがその場で見られるのは改めて感じた魅力だ。

 

AFの追従性はどうか?

富士のカメラから出て来る画に文句はない。控えめに言っても大好きである。だが敢えて、このカメラに苦言を呈するならば動画撮影におけるAFの捉え方であろうか。ここ数年何かと同社のカメラを触ってきて毎回確かにAFの合焦速度は進化している。ただ、写真的にはOKかもしれない瞬時のAF合焦の精度が上がっていても、動画的な撮影に対しての追従性がまだまだ弱いと言わざるを得ないのは正直なところだ。

一度迷ってから合焦する速度が、均等ではないというか素早く合う時と合わない時がある。被写体、レンズ、明るさによって左右されるのだろうが、そこは少しストレスに感じた。そしてレンズによってその速度が全く違う。16-80mmのような新しいレンズは実際にかなりの合焦の速さ、そこそこの追従性を見せるのだが、少し古いレンズはジーコジーコと駆動音が目立ち、なかなか合焦しない。こうしたバラつきがファームアップで改善されたらうれしい。

 

AFの動作検証動画

▲16-80mmのキットレンズでAF速度を検証。

▲AFの追従性は±5段階で調整できる。

 

今回の撮影では録画スタート時にAFで一旦合焦させてからMFに切り替えて追ったほうが良いと判断するシーンが多くあった。その際のAF/MFの切り替え操作をボディ前面左下のスイッチで行うため、若干手間になるのが残念だ。ソニーのカメラのように背面の任意のボタンを押している間だけ一時的にAF/MFの切り替えができたら、もっと良い操作感になるのではないかと思う。瞬時に合うAF性能も大事だが、捉えたAFが迷わずに被写体をどこまで追えるかどうかが、我らが求める一眼動画のAF性能だと思う。決して悪くはないが、少々惜しい。今回試作機のX-T4は16-80mmのレンズがファームウェアの都合で手ブレ補正が効かなかったのでAFの速度だけテストしたのだが、前述通り、なかなかの速度と追従性であったと思う(テスト映像参照)。このレンズで手ブレ補正が効いたら確かに鬼に金棒(量産機ではバッチリ手ブレ補正が効くように改善されているとのこと!)。富士フイルムのルックでRUN & GUNが実現するかもしれない。

 

動画撮影時の手ブレ補正の種類

▲手ブレ補正はボディ内のセンサーシフト式、レンズの光学式に加え、画角がクロップされるものの電子式補正も組み合わせて使える。

▲「ブレ防止モードブースト」はONでは手持ちで構図を固定して撮る場合、OFFでは手持ちでカメラを動かして撮る場合の補正モード。

 

 

総評

今回、実際の現場で運用してみて感じたX-T4の魅力はルックはもちろん、HD/240pの存在だ。欲を言えば画質的に4K/120pあたりが欲しい所だが、実際本編でも使用しているが、10倍のスローは表現の幅を広げてくれる。今まで一部のシネマカメラにしかなかった機能がこのサイズ感で使えるのは素直に良い。

 

HD/240pのハイフレームレート撮影に対応

▲X-T3と同じセンサー・プロセッサーながら、ソフトウェアと読み出しエリアを見直すことでFHD時、秒間240コマのハイスピード撮影が可能に。24p再生時に10倍スロー映像が撮影できる。

 

あとは「一括クロップ機能」。撮影モードによるクロップ変化も正直細かすぎて苛立ちを覚えたので全てのモードで1.29倍にクロップする設定を使った。広角側を使うときには不利にはなるが、すっきりして筆者的には良い機能であった。

 

 

撮影モードと手ブレ補正のON/OFFでクロップファクターが異なる

▲記録モードと手ブレ補正によって画角が異なる。

 

 

録画モードと録画制限時間

▲4K/59.94pで撮影できるのは動画圧縮形式がLong GOPの時のみ。

 

▲動画圧縮形式がAll Intraだとファイル形式問わずDCI 4K、UHDで最大 29.97pまで。

 

惜しむらくは前述のAFだ。進化はしているがあと一歩か。なかなか難しいとは思うのだが「迷わない高速合焦・正確なコンティニュアスAF」が搭載されたとき、富士フイルムのカメラが「別腹」でなく「一番食べたいもの」に変わる時だろう。その時、一眼動画におけるカメラの勢力図が変わるだろう。ただボケて美しい画を写すより深めの被写界深度で撮ること、きちんと意図を持って画に情報を持たすことが見直されてきた今、動画業界において同社のカメラが注目を集めるのは自然な流れなのかもしれない。

 

VIDEOSALON 2020年4月号より転載