『FUJIFILM GFX100』 ラージセンサームービーの可能性 〜未体験の立体感! ETERNAでのビューティー撮影は人肌と緑の描写が究極に美しい


REPORT◉鈴木佑介 Supported by FUJIFILM

記事・映像制作:鈴木 佑介
照明技師:中上 歩
撮影助手:佐藤 祐亮
照明助手:富塚 菊恵
メイキング写真・映像:雪森 るな
モデル:大橋 夏菜
協力:株式会社 さくら研究所

 

◉本編映像

 

◉メイキング映像

 

FUJIFILMのカメラとETERNAの魅力

ちょうど1年半前だろうか、FUJIFILMのX-H1を使わせていただくことがあった。それまでまったくと言っていいほどFUJIFILMのカメラに興味がなかった筆者がX-H1が描き出すルックに衝撃を受けたことをよく覚えている。X-H1は映画用撮影フィルムをシミュレートした「ETERNA」を搭載したことにより、ハイライトとシャドウがソフトで、かなり良い雰囲気の画を撮影時に作り出すことができる。ETERNAで撮影し、制作した作例は一切、色もコントラストも調整する必要すらなく、「ただ繋げるだけ」で素晴らしい映像ができあがってしまったのだ。このETERNAの登場によって、一眼動画マーケットでは正直ノーマークだったFUJIFILMのカメラが一つの選択肢に加わったと思っている。

本当にお世辞抜きでなく「ETERNA」は最高で(筆者はそう感じている)、演出という面でのカラーグレーディングは必要かもしれないが、ルックメイキングという意味ではグレーディングは不要だと思っている。それくらい素晴らしい発色、トーンを作ってくれる。

それに加え、X-H1やX-T3など我々に馴染みのあるFUJIFILMのカメラはセンサーサイズはAPS-Cなのに、フルフレームセンサーのカメラに全く見劣りしないのも特徴だ。「最適化」されている、という表現が正しいのかもしれない。

そんな中、登場した「GFX100」。フルフレームセンサーを超える43.8mm × 32.9mmのラージフォーマットセンサーのいわゆる「中判カメラ」である。しかも画素数は1億超え。過去にも中判カメラはリリースされていたが、このGFX100ではいよいよ4K動画撮影機能が搭載された、ということで、このレポートをさせていただくことになった。

以前にX-H1でETERNAを使用した際に一番感じたのは「人物の肌の発色が良い」という印象で、もし、自分がまたFUJIFILMのカメラを使う時がくるならばビューティー案件で人物をETERNAで撮りたいと考えていた。今回、いつもビューティー案件でお世話になっているクライアントと出演者の事務所のご理解とご協力の下、本編のスピンオフ的に映像を制作する許可をいただき、「中判センサーで撮る4K動画」という本企画が実現した。この場を借りて改めて感謝したい。

今回は自然光でのスチル現場での「メイキング撮影」と、きっちりライティングを組んでのムービー現場での「イメージ撮影」がある。筆者が普段から言っている「テイク」と「メイク」の各側面からGFX100の可能性を探ってみた。

▲FUJIFILM GFX100は、対角55mmというラージフォーマットCMOSセンサーを採用し、4K/30p 10bit記録を実現したミラーレス一眼。レンズマウントは独自のGマウント。ボディ内手ブレ補正機構搭載。

▲GFX100は上下に稼働するティルト液晶搭載。縦にもティルトするので、縦位置動画の撮影時にも便利。EVFは取り外し可能で、今回は液晶のティルト時の視認性の問題でEVFは使用しないスタイルで運用した。

 

GFX100の動画撮影用のセットアップ

▲動画機能への切り替えは上面左上のスイッチ、AF/MFの切り替えは背面の上部のスイッチ、シャッタースピードは背面ダイヤル、ISOは前面ダイヤル、絞りはレンズ側で操作、RECはシャッターボタン、とシンプルな配置で覚えやすく、すぐ手に馴染んだ。X-H1でも感じたがFUJIFILMのユーザーインターフェイス・メニュー類はわかりやすく、使いやすい。電源OFF時にも天面の液晶やボディ背面に現在のカメラの設定が表示されているのが嬉しい機能だ。

▲バッテリーは底面に最大2個。今回トータル8個用意したが2日間の撮影で1日平均5~7個消費。決して持ちは悪くない印象。

 

▲記録メディアはSDカードスロットが2個。V90のカードを用意すれば 400Mbps・ALL-Intraで収録できる。H.265(HEVC)で10bit4:2:0収録 H.264で8bit 4:2:0収録となる。

 

▲HDMI出力は10bit 4:2:2となる。HDMIポートはMicro HDMIなので付属のケーブルプロテクターを使用したほうが運用上安全だ。ヘッドフォン端子とマイク端子も搭載している。

▲「テイク」の現場で運用しやすいように汎用ケージを組み、トップハンドルとNINJA Vを搭載。手持ちや三脚で撮影を行なった。またクイックリリースプレートを介してRONIN-Sにも手早く搭載できるように設定した。RONIN-S使用時はNINJA-Vは外し、内部収録のみとした(その際のダイナミックレンジは400%設定)。

▲GFX100の魅力の一つはLogとフィルムシミュレーションの画をSDカードとHDMI出力に分けて収録できること。今回はETERNAでのフィルムシミュレーションの画をH.265の400Mbpsで内部SDカード収録(8bit)、Atomos NINJA VでF-Log(10bit)収録することにした。※F-logとフィルムシュミレーションを2種同時収録するとダイナミックレンジの設定はAUTOになる。

 

GFX100 × ETERNA × ビューティー =∞ 無限大

筆者の今回の結論が上記の数式である。論より証拠で、GFX100で撮った画を見てもらうのが一番早いだろう。まずは「テイク」の現場の動画からの4K動画からの切り出し画像を見ていただきたい。ETERNAのルックと組み合わせたミディアムフォーマットならではの立体感に驚きとため息を隠せない。なによりSDカード内部収録素材でこの美しさだ。
信じられないかもしれないが、自然光でノーライティング下での撮影、しかもノーグレーディングで、コントラストすらいじっていない。

まるで写真が動いているような、そう、10年前に初めてフルサイズの一眼で動画を撮った時のような「あの頃見た未来」がそこにあった。自然光を活かしたスチル撮影だったため、動画でも特にライトは使用せずに、ありのまま撮影を行なった。

今回、スチル撮影のカメラもGFX100を使用したのだが、その発色の美しさと立体感に現場でため息が漏れていたことを加筆しておく。

【テイクの現場】メイキングムービー撮影風のシチュエーション

▲人肌と緑の描写が究極に美しい

▲フルフレームとは一味違う立体感

▲F6.3でも かなりボケる

▲コントラストすらいじっていない状態でこのルック

▲ハウススタジオでのスチル写真撮影のビハインド・ザ・シーン撮影という設定。スチルカメラマン:伊東祐輔氏。

【メイクの現場】演出とライティングのあるシチュエーション

▲1カットずつ丁寧に画を作って撮影。

▲曇天の中、ライティングで光を作って撮影。

▲状況に合わせて三脚や一脚を使用した。

▲「メイク」撮影では外部収録のF-Log素材を使用。

 

ETERNA内部収録と外部収録の差の少なさ

そして、いよいよ「メイク」の現場での運用だ。欲しいイメージをきちんと演出し、ライティングを行なった上で丁寧に撮っていく。撮影当日はあいにくの曇天で照明頼みになったのだがGFX100を通して見た画はイメージ通り、むしろそれ以上であった。撮影するたびにクライアントから歓喜の声が上がったのは言うまでもない。

この「メイク」撮影では10bit 4:2:2で外部収録したF-Logの素材を編集時にETERNAのLUTを当てて微調整することにした。理由として、クライアントワークでの運用の場合、撮影時にOKだったとしても撮影後に抜本的なコントラストの調整や一部の色の調整、ルックの変更など細かいリクエストが入る可能性があるからだ。

本編には採用しなかったが、少しエアリーなルックを仮に作ってみた。RAWほど自由は効かないがさすが10bit 4:2:2。特に問題なく調整できた。

それよりも見て驚くのが、ETERNA内部収録と外部収録の差の少なさであろう。つまり、ダイナミックレンジに問題なければ、ほぼ撮って出しで美しい映像を作ることができるわけで、これは驚異だ。

前述したが、「演色」としてのカラーグレーディングが不要であれば、スピード重視の現場、ローバジェットの現場においてGFX100は有利であると思われる。特に化粧品や人物撮影においてGFX100の描き出す「美しさ」はクライアントワークにおいて最大の近道になるのではないかと思う。

ETERNAは我々が思い描く「美しい色」を嫌味なく描いてくれる気がする。特に人物の肌に緑や青の要素などが同居した時、最高の画が手元に現れる。

クライアントプレビューをしているにも関わらず、1カットにつき1〜2テイクしか撮影しなかったのがその証拠である(筆者の操作ミスでのテイク4はあったが)。現場の誰もが「美しい」と口を揃えて言う。これが「FUJIFILMのこだわりの記憶色の力」かと感動を禁じ得なかった。

▲ETERNAでSDカード内部収録したもの。

▲NINJA Vで収録した10bit 4:2:2 F-Log素材にLUTを当てたもの(内部収録よりもダイナミックレンジが広く収録できるのでハイライトの階調が残っている)。

▲NINJA Vで収録した10bit 4:2:0 F-Log素材にLUTを当てたものを調整(色温度とコントラストを若干の調整)。

▲仮にF-Log素材をゼロからグレーディングしたもの(リクエストが入った場合に調整幅がある)。

Gマウントレンズで撮影

今回の撮影での使用したレンズだが、やはりGFX100を所持することが多いであろうフォトグラファーが手持ちのレンズでどこまで映像制作ができるかを検証したかったので、発売されているGマウントレンズ(単焦点5本・ズーム2本)を一通りお借りした。

描写は見ての通り、癖がなく申し分ない。

レンズの焦点距離は35mmフルフレーム換算で0.8倍となる。馴染みがないのでレンズのエンドキャップに換算距離を記入した。

ボディとレンズはセンサーサイズに比例するように、一般的なフルフレームミラーレス機よりは大きいが愛用のThinkTANKのAirport Roller Derbyに一式全部入れることができたので、そこまで嵩張らないサイズ感だ。一眼レフカメラを持ち歩く質量に近い。


▲結果論になるが、使用することが多かったレンズは単焦点の45mm(35mm換算で36mm)と110mm(35mm換算で87mm)であった。筆者が動画撮影において一番使用しない焦点距離のレンズなので、我ながら驚いた。センサーサイズが変わると己の既成概念すら変わるのかもしれない。

 

絞りF9でもかなりボケる

撮影時に苦労したのは、やはりフォーカスである。ご存知の通り、センサーサイズが大きければ大きいほど、ボケやすい。ラージフォーマットはF9でもかなりボケてしまうため、フォーカス操作がキモになる。

5インチのNINJA Vでも正直フォーカスが見えない時が多かった。クライアントモニターにしていた19インチのSUMOで見て、詳細なフォーカスが確認できた。それくらいフォーカスが難しい。GFX100のAFでの被写体への合焦スピードは速いほうだと思うのだが、AF-Cでの動画追従性は正直なところ頼りない。使い方次第だとは思うが、今回はジンバルカットを除いてAF-Cは基本的に使わずタッチパネルで欲しい箇所にAFで合焦させた後、MFでフォーカス操作を行なった。

MFで操作すると、やはりフォローフォーカスとフォーカスギアをレンズに付けるかシネレンズでの運用が良いと実感する。

 

誰がためのGFX100

さて、GFX100が映し出す画に対してはお世辞抜きにベタ誉めなのだが、一番の問題は「これは誰のためのカメラ?」ということであろう。GFX100はボディだけで約120万円。レンズなどゼロから一式を揃えようとしたら200万くらいはかかるだろう。そういう点からもやはりこれはプロのフォトグラファー向けのカメラかなと思っているが、写真と動画の撮影比率が割合で5:5、6:4、7:3くらいまでの方がピッタリとハマるかもしれない。もしフォトグラファーでGFX100を所持してこんなに綺麗な動画が撮れるのに使わないのは宝の持ち腐れだ。「カメラで画が変わる」ことが皆無になってきた今、ラージフォーマットでの撮影は他と差をつけてくれるであろう。良い意味で「写真と一緒に簡単に美しい動画」も撮りたい、ということであれば尚更だ。

語彙力のない表現になるが、綺麗な光を作って被写体にカメラを向けるだけで「あの頃見た記憶の中の美しいCMのような画」が撮れる。

もしビューティー系でインハウスのフォトグラファーやビデオグラファーがいる企業であれば、これは一刻も早く導入すべきかもしれない。

それくらいGFX100で手に入る「美しさ」には価値がある。

 

ビデオSALON2019年9月号より転載