花火と3Dサウンド、ライティング、ショーパフォーマンスが完全シンクロする未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND 2019」。地上では9台のカメラそれに加えてドローンによる空撮が行われた。ここでは、国内屈指の空撮チーム・airvisionの古賀さんに撮影に至るまでの許可申請・届け出の流れを解説してもらった。

文●古賀心太郎(airvision/株式会社アマナビ)

 

2019年7月、東京豊洲で大規模な花火イベントが開催された。我々airvision(株式会社アマナビ)は、昨年に続きこのイベントの花火の空撮映像を撮影をすることになった。本稿では航空法だけでなく他の様々な法律が関わる今回の撮影の許可取得プロセスと申請書の内容について紹介する。

3つの機関に申請と届け出

申請や届け出が必要な機関と関係する法令は①国土交通省東京航空局(航空法)②東京海上保安部(港則法)③東京都港湾局東京港管理事務所(港則法、東京都港湾管理条例)。これらの3つの機関に提出する申請、届出について詳しく見ていこう。

 

撮影の体制

▲昼間のロケハンでアングルを決める。離着陸はハンドリリースで行われた。

▲撮影はカメラとドローン操縦を2人で分担し、監視員2名で実施。

▲イベント上空での飛行となるため、プロペラガードを装着して撮影。

 

今回の撮影にあたって行なった申請の流れと申請先

東京港管理事務所・東京海上保安部に提出する書類には航空法の許可・承認書の写しが必要。まずは航空法の申請手続きを行う。海上保安部へは撮影の1カ月前に書類を提出しなければならない。東京港管理事務所は海上保安部に提出前に届け出るため、申請のフローは下のようになる。

❶国土交通省東京航空局

まず確認しなければならないのが航空法の規制だ。今回は、許可・承認が必要な項目のうち、後述の(a)〜(e)の5つに該当する可能性があった。airvisionは日本全国(一部地域を除く)、1年間の包括許可を航空局から取得しており、ほとんどの撮影ではこの許可・承認証をもって業務を行なっている。

だが、イベント上空の飛行は包括で承認を得ることができず、飛行の都度、申請をする必要がある。各禁止事項に対する安全対策のポイントを簡単に説明したい。

(a)人口集中地区(DID)の飛行

撮影ではドローンの離発着と飛行、いずれも海上でのみ行なった。海上はDIDに該当しないため、本項目の申請は不要だった。

(b)空港周辺の飛行

最寄り空港は羽田空港(東京国際空港)である。大型空港の場合、規制の有無を調べる際にはオンラインサービスを利用できる。羽田の場合は「羽田空港高さ制限回答システム」(http://bit.ly/haneda_ap)。撮影ポイント周辺では高度150m未満であれば申請の必要がないことを確認した。

(c)夜間飛行

機体にLED等の灯火が装備されていることを前提として、常時2名以上の補助者が監視する安全対策をとることを条件とした。

(d) 第三者との距離30m未満

第三者やその所有する物件から30m未満の距離で飛行させるためには申請が必要になる。プロペラガードを装着し、プログラムにより高度と飛行範囲の制限を設定することを条件とした。また、飛行経路の直下とその周辺に航行中の船舶が立ち入らない条件下でのみ飛行することを明記した。

(e) イベント場所の上空

こちらもプロペラガードを装備することを前提とし、充分な飛行実績がある操縦者が飛行させることを条件とした。

航空局への申請は飛行日から少なくとも10開庁日前までに申請する必要がある。修正指示があった場合等に備えて余裕を持って提出しておきたい。

❷東京海上保安部

京浜港東京区(通称:東京港)内における撮影行為は港則法に定められた行事に該当する場合があり、その際は京浜港長(東京海上保安部長)の許可が必要となる。申請する場合は飛行日の1カ月前までに申請書を2部作成し、航行安全課窓口に申請する。書類を窓口に直接持参しなくてはならないのが要注意だ。

「行事許可申請書」の書式は海上保安部ホームページ(http://bit.ly/kaiho_m)よりダウンロードが可能〈※工事・作業又は行事許可の申請 第9号様式を参照〉。

必要書類は主に以下の通りである。〈1〉許可申請書:表紙(※指定の書式に押印)。〈2〉航空局発行の無人航空機の飛行に係る許可・申請書 写し。〈3〉計画書:目的や日程などの概要。〈4〉作業区域図:飛行する場所や監視補助者の配置を図示したもの。〈5〉工程表:タイムスケジュール。〈6〉作業フロー:作業の手順など。〈7〉安全管理体制:統括責任者、現場責任者、各役割を明記。〈8〉安全対策:船舶で作業する上での対策。〈9〉使用船舶一覧表:使用する船舶の諸元。〈10〉緊急時連絡先:業務に関連する者、海上保安部・警察・消防等などの関係機関。

記載例については、「京浜港東京区における工事・作業許可申請書作成の手引き」を参考にしてほしい(http://bit.ly/kakikata)。

行事許可申請書で重要なポイントは〈4〉作業区域図(飛行場所)の設定だ。安全を考慮して花火の打上げ場所から充分な距離を取りながら、第三者である他の船舶の真上を飛ばさないことなど様々な状況を想定して飛行範囲を制限していく。しかし、制約のなかでもできるだけ広い範囲で飛行ポイントを選択できるように検討する。

最終的に上の図で示すような飛行範囲を提出した。離陸した船(離陸位置)から半径10m以内で飛行することとし、大型船舶と衝突しないために飛行高度を限定。船舶の交通量やイベント時に想定されるイレギュラーな事態等を想定して、海上保安部の担当官と協議して決定した。

前述のように行事許可申請書の提出は直接窓口まで持参しなくてはならないが、修正が必要な場合も窓口まで出向き、その場で要修正箇所をメモしなくてはならない。提出書類には不備のないように心がけたい。

 

❸東京港管理事務所

提出書類は海上保安部の「行事許可申請書」と基本的には同じ書式でよいが、書類名は「行事届」とし、宛先は「東京港管理事務所長」とする。内容についても海上保安部へ提出する申請書と基本的に同じでよい。3つの機関への申請と届け出については原則順番があり、上の図を参照してほしい。

 

海上保安部と東京港管理事務所に提出した書類

記載例については「京浜港東京区における工事・作業許可申請書作成の手引き」を参照(http://bit.ly/kaiho_tebiki)。

①(行事)許可申請書
海上保安部のWEBサイト(http://bit.ly/kaiho_a)よりダウンロードが可能。「工事・作業又は行事許可の申請(第9号様式)」

②航空法の許可・承認書
航空法申請の手続きを経て、国土交通省航空局から発行された許可・承認書および申請書の写し。

③施工計画書
書式は自由。撮影の目的や日程などの概要を記載する。

④作業区域図
撮影場所の地図(広域と詳細)。

⑤工程表
書式は自由。撮影の目的や日程などの概要を記載する。

⑥作業フロー
撮影方法や撮影手順について記載。

 

⑦安全管理体制
統括責任者、現場責任者、各役割を明記。

⑧安全対策
船舶で作業する上での対策について箇条書きした。

 

安全対策は、自分の考え、自ら決めるもの

撮影の業務ではクライアントが想定している飛行内容と、その安全対策を同時に成立させることが困難な場合はしばしば起こる。このような場面でリスクと安全について論理的に説明し、クライアントからの理解を得て確実な飛行を遂行することがビジネスでドローンを飛行する上では大変重要だ。

また、例で紹介した「申請書半径○○mの範囲で飛行する」というような安全基準は法律で明確に定められていない場合も多く、操縦者が安全について自ら考え、あらゆる事態を想定して自身で決定していかなければならない。普段から安全についてしっかりとした考えを持っていれば、申請書を書くときや、またクライアントに安全について説明する際も役立つはずだ。

 

ドローンやヘリコプターによる花火の空撮や地上カメラを交えて作られた「STAR ISLAND2019」のアフタームービー。ディレクターは岩元 康訓氏。

 

 

ビデオSALON2019年10月号より転載