ものすごい勢いで映像伝送機器やワイヤレスマイクを次々と開発している中国の新進気鋭企業Hollyland社から、ワイヤレスマイクLARKシリーズ第4世代となる「LARK MAX」が発売された。この製品は2.4GHz帯のワイヤレスマイクでLark 150のグレードアップ版機種となる。1台の受信機に対して2台の送信機がセットになったLARK MAX Duoをさっそく試したのでレポートしたい。
◎レポート:株式会社プロ機材ドットコム 森下千津子
◎写真:Ordinary Studio 下司智津恵
▲受信機1台に対して送信機2台がセットになったDuoはインタビューや対談撮影に便利
まず、ケースの蓋を開けると瞬時に送信機と受信機の自動ペアリングが始まった。ペアリングが完了すると、受信機の液晶にPaired Successfullyの表示が出た。受信機または送信機のいずれかを持ち出しても、ケースにセットされるたびに自動的にペアリングが行われるのは安心だ。
ワイヤレスマイクで怖いのは、いつの間にかペアリングが外れてしまっていて音声入力がされないことだが、LARK MAXは毎回自動ペアリングが行われる上、ペアリングしている送信機がきちんと受信機側の液晶で表示されるため、見てすぐわかる安心感もある。
▲ペアリング済みで電源ONのマイクの音声レベルが表示される
そしてこのケースは、これまでに発売されたLARKシリーズ同様に充電器にもなっている。ケースにセットするだけで、送受信機がそれぞれ約2時間で満充電になる。そしてケースに内蔵のバッテリーが満充電の状態であれば、送受信機は2回まで満充電できる。送信機は満充電で約7.5時間、受信機は9時間の連続使用が可能だが、リハーサル後の休憩時間等にちょっと充電できるだけでも、本番中にバッテリーが切れてしまう心配を格段に減らすことができる。
▲バッテリー内蔵で充電ができるケースは見た目もスタイリッシュ
また、LARK MAXではバッテリー残量も正確に%でわかるようになった。送受信機の残量だけでなく、ケース内蔵電池の残量もわかるのでありがたい。これまでのLark 150では4段階のインジケーターで、M1/C1ではケースのみ4段階のインジケーターでしかわからなかったが、LARK MAXでは数値で表示されるようになった。
▲電池残量が数値で正確にわかるようになった。
さて、それではケースから出してみよう。受信機の液晶表示で、各送信機に入力された音声レベルがわかる。レベルによってちゃんと緑、黄、赤の色分け表示もあるので、目視で直感的にレベルが適正かどうかもわかる。そもそも、LARK MAXではヘッドフォン出力端子もあるので、きちんとモニタリングもできる。
▲ヘッドフォン出力端子搭載でモニタリングもできる。
受信機上には1.1インチAMOLEDタッチスクリーンを搭載し、メニューは見やすくわかりやすい。基本メニューを見てみよう。REC Mode、Mic Settings、Phone Speaker、EQ、System Settingsの5つのメニューが用意されている。
REC ModeはStereo、Mono、SafetyTrackの3種類のモードがあり、2台の送信機を左右に振り分けステレオ収録することもできる。また、Safety Trackでは、1台目は元の音声が、2台目には元の音声より-6dB落として収録される。万一元の音声が音割れを起こしていたとしても2台目でちゃんと収録されている可能性が高く、後から編集する場合にはとても便利に使えるモードとなる。
Mic Settingsではマイクのゲインをプラスマイナス10段階の21段階で調整できる。ワイヤレスマイクの本体で、ここまで細かく調整できるものはなかなかない。
他にもMic Settingの中にある、Auto Record(ONに設定されている場合、送信機の電源が入ると自動的に内部録音開始される機能)やAuto OFF(送信機と受信機がペアリングされておらず、15分間操作されない場合は送信機の電源が自動でOFFになる機能)も地味に便利だ。
本番前にはバタバタしてついうっかりRECを忘れてしまうことも多いし、演者さんにお渡ししたマイクの電源をわざわざ切らせてもらうのも気が引けるシチュエーションも多い。他にもLEDの輝度調整やストレージのフォーマットなどもこのマイク設定メニューから可能となっている。
そして今回の第4世代で新しく搭載された機能がEQではないだろうか。Hi-Fiオーディオ、低音をカットするLow Cut、音声の明瞭度を良好にするVocal Boostと3つのモードを搭載している。
送信機側でもいくつかの操作ができる。RECボタンを押せば本体内蔵メモリに録音ができるし、録音中は赤いランプが点灯するので一目でわかる。ノイズキャンセリングのオンオフも送信機側でも可能で、青ランプ点灯でノイズキャンセリングオフ、緑ランプ点灯でノイズキャンセリングオンとなる。HollylandといえばLark M1/C1で搭載されたこのノイズキャンセリング機能が大変好評だ。
悩まされることの多い空調音、換気扇、屋外の騒音、屋内の反響音などを軽減する効果があり、音声をクリアに録ることができる。特定の周波数をカットする方式ではなく、マイクを使用して周囲の音を検知し、その音を分析して抑圧するためのアルゴリズムを適用するENC技術を用いているため、元の音声の劣化を極力なくしている。
Lark 150にはノイズキャンセリング機能は未搭載だったため、後継機種へのこの機能搭載はかなり期待されていた。そしてLark M1やC1よりさらに進化したENC技術採用でノイキャン使用時の音も数段良くなっている。
▲送信機側面にRECボタンがある。
▲送信機はクリップで胸元に挟むこともできるし、マグネットで服の上に留めることもできる。
ワイヤレスの送信距離は、Lark 150と比較すると2倍以上に、去年発売されたLark M1と比較しても20%も向上して250mになるという。壁等の障害物や他の電波の影響もあるので必ず保証される距離ではないが、実際に通常の撮影でカメラに映る距離感での撮影であれば全く問題はなかった。
その他、入力ダイナミックレンジや最大音圧レベルもLark 150やM1と比較して10%程度向上している。これまで筆者が愛用していたLark M1の音質にも十分満足していたが、LARK MAXはさらに音質に深みが加わった気がする。
LARK MAXのおすすめポイント
■バッテリー内蔵ケースで急速充電が可能
■ヘッドフォン出力端子を搭載してモニタリングが可能
■マイク本体の内蔵メモリに録音が可能
■最先端のENC方式によるノイズキャンセリング(音質を極力低下させずに声をクリアに)
■USBケーブルを使用すればPCやスマホにも音声入力が可能
▲標準セット内容は、ソフトケース1個、充電バッテリー内蔵ケース1個、受信機1台、送信機2台、ウィンドジャマー2個、TRSケーブル1本、USB-A-Cケーブル1本、USB-C-Cケーブル1本、USB-C-Lightningケーブル1本、保証書カード、取扱説明書。(ラべリアマイクは別売)
【スペック表】
インターフェース | TX : 3.5mmオーディオ入力インターフェース、USB-C RX : 3.5mm TRS ヘッドフォンインターフェイス、USB-C、 3.5mm TRS オーディオ出力インターフェイス 充電ケース : USB-C |
無線技術 | 2.4GHz AFH |
送信距離 | 3820ft (250m) |
マイク極性モード | 無指向性 |
周波数特性 | 320Hz–20kHz |
録音フォーマット | 48 kHz/24-bit |
最大音圧レベル | 128dB SPL |
入力ダイナミックレンジ | 98dB |
バッテリー容量 | TX : 300mAh RX : 490mAh 充電ケース : 2800mAh |
ノイズキャンセリング機能 | あり (ENC) |
録音機能 | 3あり (内蔵8GBメモリーで14時間の録音が可能 ) |
デジタル音声出力 | あり |
アナログ入力 | 3.5mm TRS (ラベリアマイク入力ポート) (Lavalier microphone input) |
アナログ出力 | 3.5mm TRS |
モノラルモード | あり |
ステレオモード | あり |
セーフティトラックモード | あり |
EQ設定 | あり |
マイクゲイン調整 | あり |
MFI認定 | あり |
アプリ対応 | なし |
ディスプレイスクリーン | あり ( AMOLEDタッチパネルでロック可能 ) |
インジケーター/画面の輝度調整 | あり |
モニターリング | あり |
マグネットアクセサリー | あり |
ラベリアマイク | あり |
稼働時間 | TX : 7.5時間 RX : 9時間 充電ケース: 全部のTXとRXを2回充電できる TX: 7.5 hours RX: 9 hours |
充電時間 | TX : <2時間 RX : <2時間 充電ケース : <2時間 |
寸法 | TX : 48.5mm x 30.3mm x 19.37mm (1.9″ x 1.2″ x 0.76″) RX : 58mm x 40.83mm x 23.17mm (2.3″ x 1.6″ x 0.9″) 充電ケース : 115mm x 46mm x 63mm (4.5″ x 1.8″ x 2.5″) |
重量 | TX : 33g (1.16oz) RX : 60g (2.1oz) 充電ケース : 193.5g (6.8oz) |