2024年、日本のドローン業界で注目のAI飛行カメラ『HOVERAir X1 Smart』。本体の重さがバッテリー搭載で99g。飛行申請不要で気軽に飛ばせるドローンとなっている。先日まで行われたクラウドファンディングで応援購入総額は2.1億円を超えており、注目の代物なのだ。実際に飛ばして性能を試してみたので、撮影した映像とレビューを紹介していこう。

テスト・文●フリーライターHachibei

クラウドファンディングで話題の『HOVERAir X1 Smart』。ドローンの姿をしているが、これまでの自由自在に飛ばして景色や対象物を撮影するドローンとは、一線を画す。本体の重量が99gで新航空法の適用外なため気軽に飛ばすことができ、自撮りをするために特化して作られたモノになっている。今後、街中や建物の中で、このドローンを使って自撮りや集合動画を楽しむ人が現れそうでもある。本記事では、『HOVERAir X1 Smart』の性能とともに、撮影した映像をお届けしよう。

HOVERAir X1 Smartのセールスポイント

『HOVERAir X1 Smart』は、これまでの空を自由自在に飛ばして撮影するドローンとは違う目的で作られている。AI飛行カメラと謳っているように、自撮りに特化した性能と撮影機能を搭載。特に注目したい6つのポイントを紹介する。

1.本体が99gで気軽に飛ばせる

『HOVERAir X1 Smart』の日本限定モデルは、本体重量が99g。新航空法の適用外なため、免許不要で飛行申請の必要がなく、いつでも飛ばして(※1)撮影できる。

※1:航空法以外にも別の法律や条令などに従う必要はあります。

2.初心者でも簡単に飛ばせる安心安全設計

本体のボタンを押すだけで自動で飛び、選んだ飛行モードで自動的に撮影してくれる。本体のプロペラは、フレームで覆われているため、指がプロペラに当たる心配はなく、安全に手の平から離着陸が可能。

3.自撮りに特化した飛行モードを用意

対象物(人)をAIカメラが認識し、自動で追尾したり、周囲を回転したり、浮上したりしながら、さまざまな飛行モードで撮影してくれるため、自撮り棒では不可能な映像が撮れる。

4.スマホと連動し飛行中の録音も可能

通常のドローンでは、飛行時の音は録れないが、『HOVERAir X1 Smart』では連動したスマートフォンがマイク代わりとなって、声や音までも収録してくれる。

5.高画質撮影や縦型動画も撮れる

2.7k/30fpsでの高画質撮影が可能。SNSに投稿する際に便利な縦向き動画も撮れる。

6.スマホによる手動操作での撮影も可能

『HOVERAir X1 Smart』の飛行をスマホでコントロールして撮影することもできる。

航空法の規制対象外なので申請せずに飛ばせる

日本でドローンを飛ばすには、航空法が関わってくるのだが、2022年6月以降に改正された新航空法では100g以上の機体(バッテリーを含む)が規制対象となっている。そのためドローンを飛ばすには、航空法に従う必要があり、飛行申請書なども用意しなくてはならず、おいそれと飛ばすことができなくなってしまった。

ところがそんななか登場したのが『HOVERAir X1 Smart』の日本限定モデルだ。最大の魅力は、本体が小型軽量で、バッテリーを搭載しても重量が99gと言うこと。日本の規制対象外となっているため、飛行申請することなくドローン映像の撮影ができるのだ。しかも手軽に飛ばせる利点を活かし、自撮り撮影に特化したものになっている。

▲驚くほど軽いので、持ち運ぶ際の負担にはならない。しかも高い弾力性と耐久性を備えたソフトフレームで覆われているため、うっかり落としても大丈夫な作りになっている。

手の平サイズでコンパクトなので持ち運びもしやすい

本体のサイズは、縦111mm × 横142mm × 高さ27mm(プロペラ部分は約17mm)。サイズ感を身近なものに例えるなら、食パン6枚切りの1枚と言ったところ。カバンに入れて持ち運ぶのにも邪魔にならない大きさで、突然撮影したくなってもスグ取り出して撮影することが可能だ。これをゲットしてからは、知人に会うときなどには常備するようになったし、大勢で集合写真を撮るときにはズームアウトの飛行モードが活躍している。

▲空飛ぶ食パン!? 本体のサイズとしては、チーズを乗せた食パンに近い感じだ。

▲ジンバル搭載のカメラ。ジンバル、電子式手ブレ補正(EIS)、水平補正を組み合わせた高度手ブレ補正システムを搭載。ブレの少ない滑らかな動画撮影が可能。

▲本邸の底面には、ToFカメラを搭載。ToFレーザー高度計測システムで高度を計測して飛行する。下方向の障害物をよけて飛行することが可能。ただし、海や川の上空や、地面の高度差が大きな場所での飛行は不向きのようだ。

▲本体正面のLEDは、緑色の点灯はスタンバイ状態。赤色は録画中で、いつ撮影しているのかわかるようになっている。

ドローンで気になる飛行時間と予備バッテリー

ドローンを飛ばす際に気になってくるのが最大飛行時間。『HOVERAir X1 Smart』では、バッテリー1本で約10分となっている。最近のドローンにしては短いと思ってしまうが、実際にはそんなに感じない。通常のドローンだと、いろんな所に向けて操縦して飛ばすため飛行時間が長くなりがちだが、『HOVERAir X1 Smart』は自撮りの自動撮影なため、遠くには飛ばさないし、短時間で撮影が終了する。

また、飛ばしていないときは、本体後ろのUSB-TypeC端子にケーブル繋ぎ、モバイルバッテリーを使って充電もできるので、外で使っていても電力不足はあまり感じなかった。それにバッテリーの容量が690mAhなため、フル充電になるのも早い。バッテリー1本での運用も可能だが、連続で飛ばして撮るなら、バッテリー内蔵急速充電器を用意しておくと良いだろう。これにバッテリーをセットすると自動で充電してくれる。バッテリー内蔵急速充電器の容量は5000mAhで、約2.5回分の充電が可能。充電器本体にもUSB TypeーCの端子があり、スマホのモバイルバッテリーのように充電ができる。

▲本体背面のUSB-TypeC端子にケーブルを挿してバッテリーの充電を行う。

▲急速充電器にバッテリーを2本セットできる。ちなみに、これらを合わせた重さは178g。

初心者でも簡単に飛ばせる安心安全設計

本体に2つのボタンがあり、電源のオン/オフと飛行スタートのボタンと、飛行モードのセレクトボタン。飛ばすのは簡単で、本体を手の平に乗せたまま飛行スタートボタンを押すだけ。これで自動的にホバリング飛行を行い、選んだモードの動作で飛び回りながら自動撮影してくれる。着陸は飛行中の本体下に手をかざすだけでオーケー。しかも本体のプロペラは、密閉型のソフトフレームで覆われているため、指がプロペラに当たる心配はなく、安全に手の平から飛ばせます。

実際、小さな子どもがいるところで飛ばしたところ、その子たちは飛ばし方をスグに覚え、何度も飛ばして喜んでいました。しかも楽しんでいる子どもの表情を動画で録れるので、子どもがいる親御さんにもお勧め。また、本体だけで簡単に飛ばして自撮り撮影ができるのも魅力のひとつだ。

▲小さいボタンを押して飛行モードを選択し、大きいボタンを押してフライトスタート。モードセレクト時に音声でセットした飛行モードを説明してくれる親切設計だ。
▲このように手の平に乗せて、ボタンを押すと、自動で飛び立つ。飛行中に本体下に手を差し出すと着陸する。

自撮りに特化した飛行モードを用意

『HOVERAir X1 Smart』には、自撮りするためのさまざまな飛行モードが用意されている。主な飛行モードは以下の通り。AIで被写体を捉えながら空中で静止したり、正面や背後から追尾したり、上空に高く飛びながら俯瞰撮影したりと、ドローンならではの自撮り撮影ができる。なお、各飛行モードの撮影方法や飛行の距離、高度や動きなどといった調整は、事前にスマホのアプリを使って決められた中から設定していく。本体の小さなボタンを押して、飛行モードを6つの中から選ぶのだが、最初の5つは飛行モード(ベーシックモード)が固定されている。残り1つはカスタムでユーザーが任意に設定するようになっている。

あらかじめ設定された5つの飛行モード

  • ホバリング……空中で高度を維持し、その場で制止しなが被写体の動きに合わせて回転しながら撮影する。
  • ズームアウト……被写体からゆっくりとズームアウトしながら後方に飛んでいき、周りの景色を撮っていく。そして、ズームアウトの設定距離になると、今度は被写体をズームインしながら撮影する。
  • フォロー……移動する被写体を背後から追いかけるように追随しながら撮影する。被写体までのフォロー距離や高度を設定できる。
  • オービット……被写体を中心に円を描くように周囲を回転しながら撮影する。被写体までの半径を最大6mまで設定可能。
  • 俯瞰撮影……真上からのアングルで上空に飛んでいきながら撮影する。機体を回転させながら撮影する設定も用意されている。

カスタムで追加できる飛行モード

  • 手動撮影……スマホがコントローラーになり、機体を手動で自由自在に動かすことができる。飛行中に任意で撮影のオン・オフ/写真・動画の切り替えが可能。
  • ストップモーション撮影……コマドリ撮影が行える。
  • フロントフォロー……被写体の正面を捉えて、2m離れた位置でホバリングして撮影する。被写体が動くと、それに合わせて正面を捉えながら追従する。
  • サイドトラッキング……まっすぐ進む被写体の動きに合わせて、一定の位置と角度を保ちながら飛行して撮影する。
  • インテリジェント制御……機体の飛行を両手のジェスチャー動作で操作できるモード。ズームアウトやオービット、俯瞰撮影のなどの指示が可能。

▲各飛行モードをイラストともに説明動画も用意されているので、これを見ればどんな撮影ができるのかわかるようになっている。
▲各飛行モードを設定できるほか、フロントフォローやインテリジェント制御など、カスタム。
▲本体には各飛行モードのアイコンが描かれていて、どの飛行モードを選んでいるのかLEDの点灯でわかる。右下の星はカスタムで設定したモードで飛ばすときに選ぶ。

スマホと連動して飛行中に音声も録ってくれる

大抵のドローンの場合、動画撮影中の音声は録ることができない。録ったとしてもプロペラ音が入るだけなので必要がない。ところが『HOVERAir X1 Smart』の場合は、自撮りに特化しているだけあって、自分の声も同時に収録する。その点もよく考えられており、飛行(録画)中にスマホのアプリ『Hover X1』を立ち上げておくと、アプリに音声を同時収録してくれる。そして、撮った映像をスマホで見ることで、機体の映像とアプリの収録音声を結合する仕組みとなっている。映像に別録りした音声を動画編集ソフトなどで、同期させる手間を省けるのだ。ただし映像と音声がズレてしまうこともあり、その場合の修正方法もアプリ上で紹介されている。なんにしろ、ドローンで映像とともに音声まで同時に録れる点は画期的と言える。

▲宮城県気仙沼市にある大島の山頂で、オービットモードで撮影しながら、片手に持ったスマホで音声も同時収録。風が少し吹いているため、筆者はドキドキしていたのだが、そのときの音声も録れている。それと撮影時にはスマホも映り込むことになるので、録音用に専用のマイクが別売されたら嬉しい。

▲撮影したアルバムには、飛行モードや録画時間の他に、音声録音の有無もアイコンで表示されるのでわかりやすい。

2.7k/30fpsでの高画質撮影が可能
SNSに投稿する際に便利な縦向き動画も撮れる

気になる『HOVERAir X1 Smart』で撮れる動画の解像度だが、2.7k/30fps、1080p/60fps、1080p/30fps(HDR)に、縦型も1080p/30fpsで撮影可能。静止画は、4000×3000(1200万画素)とHDRで2592×1940(500万画素)となっている。小型ながら高画質で撮れる。しかし、暗いところで撮影した動画は、ノイズが出てしまった。撮影時には明るさに注意する必要がある。また、本体に内蔵されているストレージの容量は32GBで、microSDを挿入はできない。通常のドローンと違って、短時間での撮影が多くなるため、32GBでも少なさを感じることはなかった。

▲自撮りモードで2.7k動画を撮ったサンプル。このように、自動で撮影してくれる。
▲縦型の動画も撮ることができ、音声も同時に収録する。しかも人の声をクリアに拾うようにできていて、プロペラ音は入らないようになっている。おかげで1人で歩きながら周囲の実況をするときにも活躍する。

▲4000×3000(1200万画素)で撮った写真のサンプル。

スマホによる手動操作での飛行撮影も可能

『HOVERAir X1 Smart』には、通常のドローンのように手動で操作して飛行させることも可能。スマホに表示された飛行映像を見ながらバーチャルパッドで機体を動かして撮影ができる。実際に桜を手動操作で撮影したのだが、桜の木に近づいて録ることができた。機体が軽いために、誤って木に引っかけたりしないか、飛ばしていて不安でもあった。

▲手動飛行では、このようにスマホで撮影映像を見ながら、バーチャルパッドで機体やカメラを操作して撮影していく。

▲桜の木の中を飛ばしてみた。枝に当たるモノの墜落することはなかった。

ある程度の風ならその場で耐えてホバリングする

小型軽量のドローンの場合、ちょっとした風が吹いていると流されてしまうのだが、機体を傾けてその場でホバリングしたのには驚いた。スペックによると、最大風圧抵抗は7.9m/s(スケール4)となっている。それでも飛ばされてしまっては困る場所での飛行は不安になる。飛ばす際には注意したい。

▲風がちょっと吹いているところで飛ばしたが、このように機体を傾けて風に耐えながらもその場でホバリングする。

【注意点】都内の公園ではNG!? 飛ばすにあたって要注意なこと

ドローンの本体重量が100g未満で航空法の規制対象外とはいえ、飛ばすに当たって注意が必要な法律や条令などがある。都道府県や各自治体が定めた条例があり、重要文化財、史跡、神社、公園などで飛行禁止な条例がある。東京都の公園では、残念なことに飛行禁止だ。都内で広い場所となると公園になるのだが、それが飛行禁止となっているのは残念なところ。

また道路法では、道路からの離着陸をする際には、管轄の警察署に許可を取る必要がある。さらに空港周辺区域や一定の高度以上で飛行させる場合には、小型無人機等飛行禁止法が関わってくる。警察や消防活動等緊急用務を行うための航空機の飛行がされる空域「緊急用務区域」でも飛行禁止だ。『HOVERAir X1 Smart』は、自分の周囲程度しか飛行させないと思うので、これらの条例や法律に引っかかることは少ないと思うが注意しよう。

【まとめ】友だちとの自撮りや大勢での集合写真(動画)を撮るときに大活躍

実際に使ってみて、とにかく手軽だし、ドローンならではの映像が簡単に撮れるので楽しい。しかもプロペラは密閉型のソフトフレームで覆われているので安心感も高い。ドローンで自撮りをする場合、周囲の安全に気を配る必要があるし、街中だと気軽に飛ばすのも難しい。しかも飛行申請も必要になってくる。それらドローンで自撮り撮影する際の悩ましいことを気にかけなくてもいいのがありがたい。そのおかげで出かける際には持ち歩きたくなるモノのひとつになっている。実際に小さな子どもでも簡単に飛ばすことができたし、夢中になって楽しんでくれた。しかもその様子を動画で撮影してくれるので、子どもの喜んでいる表情を記録に残せるのは、親御さんにとっても喜ばしいことだろう。

また、集合写真を撮る際にも、ズームアウト飛行モードを使えば、動画として残すことが可能。スマホの登場で、自分の写真を撮りやすくするための自撮り棒と言う機材が誕生したように、『HOVERAir X1 Smart』の登場で新たな撮影機材(手段)が生まれた印象がある。今後、カバンからサッと取り出して、自撮りや集合動画を撮る光景があちこちで見られるようになるかも知れない。最後に、『HOVERAir X1 Smart』はドローンというより、まさに「AI飛行カメラ」という表現がピッタリくるアイテムなのだ。

▲ズームアウトモードをするところをiPhoneで撮影し、『HOVERAir』で撮影した動画を合成させました。このモードの飛行は、大勢で記念動画を撮るときなどに活躍する。なお動画だが、遠ざかるところと、近づくところの2本に分かれて記録されます。

HOVERAir X1 Smart(日本限定版)の主なスペック

機体型番HOVERAir X1 Smart
本体重量
(バッテリー含む)
99g
サイズ
(長さ×幅×高さ)
111×142×27mm
最大上昇・下降速度1.5m/s
最大水平飛行速度
(無風)
7m/s
追尾速度25km/h(フォローモード時)
最大飛行高度
(地面から上空)
俯瞰モード15m、
手動飛行モード10m
最大飛行時間10分
(無風で7km/hの速度で飛行時に測定)
最大ホバリング時間9.5分
最大風圧抵抗7.9m/s(スケール4)
動作環境温度0℃〜40℃
動作Wi-Fi2.4GHz帯
(日本国内では、5.8GHz帯は使用不可)
ストレージ容量32GB
バッテリー容量690mAh
バッテリータイプLi-ion
充電環境温度0℃〜40℃
最大充電電力12.144W
電圧7.7V(最大8.8V)
カメラ画像最大サイズ4000×3000(1200万画素)
HDR:2592×1940(500万画素)
動画解像度2704×1520/30fps、1920×1080/60fps、1920×1080/30fps(HDR)