Insta360から新たに登場した5.7K撮影に対応したポケットサイズの360度カメラ・Insta360 ONE X2。地上から空撮まで様々な現場で360度撮影に挑んできた株式会社ミライヒの三井隆介さんと近藤将人さんに新しくなったONE X2の使用感をレポートしてもらった。
レポート●三井隆介・近藤将人(ミライヒ)
Insta360からInsta360 ONE X2(以下ONE X2)が2020年10月28日に発売されました。こちらは2018年に発売されたInsta360 ONE X(以下ONE X)の後継機です。Insta360シリーズは360度カメラ市場はもちろんのこと、全方位収録した360度映像から一部分を切り出して撮影後にカメラワークをつけられる「Free Capture」という手法や「Flowstate」という同社独自の強力な手ブレ補正の搭載により、アクションカメラ市場にも世界中に大きな影響を与えたカメラメーカーのひとつです。Insta360シリーズを様々な撮影現場で使用してきた筆者がONE X2の使用感をレポートしたいと思います。
本体に超高輝度タッチスクリーンを搭載
前モデルのONE Xからの大きな進化点は、本体に搭載された超高輝度タッチスクリーンです。同機ではスマホとカメラをWi-Fi接続し、アプリ上でリアルタイム映像の確認や撮影したファイルのプレビューを行う必要がありました。しかし、Insta360 ONE X2では本体のみでこれらすべてを行えます。これにより、スマホアプリと連携する煩わしさから解放され、即座に撮影することができるようになりました。実際に使用してみると、ディスプレイの輝度が高く、日中屋外での明るい環境でも視認性が優れていると感じました。
「ステディカムモード」で超広角映像が撮影可能に
動画では最大5.7Kの360度カメラモードに加えて、通常の画角のある動画も撮影できるようになりました。「ステディカムモード」という機能が搭載され、アクションカメラのように超広角で強力なブレ補正を備える動画を撮影できるようになりました。ちなみに動画撮影モードはタッチスクリーンで簡単に切り替えることができます。
セット販売に同梱される見えない自撮り棒
ONE X2はアクセサリーの組み合わせで、いくつかのセット販売がされています。クリエイターキットなどに同梱されている専用の自撮り棒で撮影すれば、自撮り棒の映り込みがなくなります。自撮り棒を使用して撮影すれば、通常カメラでの撮影では難しい地面ギリギリを移動しながらのローアングル撮影や疑似ドローンのようなハイアングル撮影も自在に撮影することができます。通常カメラでは周辺機器と組み合わせなければ撮影が困難だった、動画が自撮り棒との組み合わせだけで実現できるのは360度カメラの大きな魅力のひとつと言えるでしょう。
バッテリーを刷新したことで連続撮影時間が増加
バッテリーも一新され、容量も1630mAhとONE Xよりも55%アップしました。5.7Kの動画撮影で80分の連続撮影が可能です。実際に使ってみた体感的にもONE Xよりバッテリー持続時間はかなり長くなっている印象です。オプションのバッテリー充電ステーションは同時に最大3台まで充電可能です。カメラ本体のUSB Type-C端子からのバッテリー給電にも対応しているので出先でも電池で困ることは少ないでしょう。
ハウジングなしでも水深10mの防水性能を持つ
IPX8防水に対応し、ハウジングをつけることなく水深10mまでの水中撮影ができます。サーフィン等のマリンスポーツの場面で使いやすくなりました。潜水ケースを使用すれば水深45mまでシームレスな水中スティッチングでの撮影が可能です。今回は船の上から自撮り棒を海に伸ばして撮影してみましたが、問題なく撮影できました。
Insta360 ONEシリーズのお家芸・バレットタイム3.0
シリーズ初代機となるInsta360 ONEから搭載されて話題となった撮影者を中心に回転したスロー映像が撮影できる「バレットタイム」はONE X2でも使用可能。ライトクリエイターキットに同梱される新たなバレットタイム用の紐が発売されました。これは自撮り棒の先端につけて使用するもので、振り回すことでカメラの重さと遠心力によって巻き取られた紐が伸びます。紐は一定の距離で回転させることができるため、円形にきれいに回すことができます。
4つのマイクを備え、360度オーディオ収録に対応
ONE X2は本体に4つのマイクを搭載し、360度オーディオの収録に対応しました。全方向から集音できるので、カメラの向きを気にすることなく音声を収録できます。検証時は書き出された映像ファイルでは音声は2チャンネルのファイルでした。4つのマイクの音をミックスして収録しているものと思われます。オプションで本体位USB-Cに接続するマイクアダプターも発売されています。さらに3.5mmのステレオミニ端子を備え、外部マイクも使えます。ONE Xと比べてみると、人の声の聞こえ方が明瞭になりました。アプリで風切り音の低減処理も行えるので、Vlog撮影などでも使いやすいのではないでしょうか。
モバイルアプリ「Insta360」は非常に使いやすい
撮影素材はスマートフォンやタブレットの専用アプリ「Insta360」で編集できます。アプリはAndroid、iOSに対応しており、無料でダウンロードできます。撮影したファイルの色補正やトリム、動画内での速度変更を調整して書き出せます。360度撮影した中から一部分を切り出して通常映像で書き出すこともできるので、車載映像の撮影やウィンタースポーツ等の動きの速いシーンにも最適です。アプリ内で複数の撮影ファイルを繋げたり、カット編集をすることでパソコンを使うことなく、作品を仕上げることができます。Insta360シリーズは、このアプリでの編集が非常に使いやすく、撮影してからシェアするまでが非常に手軽です。ちょっとした日常のワンシーンを誰でも簡単に切り出すことができるのも、この製品の魅力だと思います。アプリの使い方は、以前動画で解説したものがあります(動画はONE X2発売前のものですが、アプリ操作は共通です)。詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。
チュートリアルを見ながらテンプレートで撮影できる「編集ラボ」
アプリにある「編集ラボ」は、ONE X2で撮影した動画を加工して作れる映像表現の豊富なテンプレートを搭載しています。チュートリアル動画で使用法を確認し、ガイドに従って数タップ選択していくだけで出来上がります。テンプレートも非常にユニークなものが多く、常日頃編集をしている方でも、手作業では時間がかかってしまうような映像をすぐに作成できるのは非常におもしろい機能です。
選択した被写体を自動追尾する「ディープトラック2.0」
動いている被写体を選択するだけで自動的に動画の解析を行い、被写体が中心にくるように切り抜きを行ってくれます。通常のカメラでは難しい、激しい動きの被写体を撮影する場面でも360度撮影されているお陰で後から切り抜きで処理することが可能です。被写体が物に隠れても動きを識別してしっかりと追跡を行ってくれるので非常に使いやすいです。
▲ディープトラックのテスト
タイムシフト(ハイパーラプス)機能も搭載
今回、個人的に面白かった追加機能がタイムシフトです。スムーズな高速移動撮影いわゆるハイパーラプスの印象的な映像が撮影できます。
撮影した映像はPCでも編集が可能
手軽に編集したいときは、前述のモバイルアプリがおすすめですが、大画面でより多くのファイルを処理したい場合は「Insta360 Studio」というPCソフトを使用するとよいでしょう。このソフトはInsta360公式サイトにて無料で公開されています。Insta360 Studioの使用方法も以前動画を作ったので、興味がある方は見てみてください。
ちなみに、Premiere Pro(2018,2019,2020)/ Final Cut Pro Xで、Insta360のカメラで撮った360度動画を編集したいという場合はインストール時にプラグインを入れれば、撮影したファイルを取り込んですぐに編集することができます。
まとめ
Insta360 ONE X2は前モデルの不満点を解消した、まさに正当進化と言えるカメラだと感じました。コンパクトなボディにあらゆる機能が詰め込まれている360度カメラのひとつの完成形と言えるのではないでしょうか。今まで360度カメラを使ったことがない人でも撮影から編集まで、非常に簡単に行えるカメラです。ぜひ自分が普段見ることができない新しい視点で日常を切り取ってみましょう!
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