レポート 森本真剛(GMOペパボ株式会社 / ライブ配信オペレーター)

撮影協力 tkoスタジオ https://www.tkonet.jp/studio/

概要

OBSBOT Tail Airは2023年12月にREMO TECH社から発売されたAI搭載のPTZカメラだ。出力規格は数多く、NDI・RTSP・microHDMI・UVC、そしてUSB・IP・Bluetooth経由でのコントロールが可能。さらに1/1.8インチのCMOSセンサーを搭載し、最大4K/30p撮影&microSDカードへの録画が可能。この小さな筐体に今できることをぎゅうぎゅうに詰め込んだカメラである。しかも一般的なPTZカメラよりも安価であり、最初値段を聞いた時はちょっと高価なWEBカメラなのかなと勘違いしたほどだ。

特徴

a. 2軸ジンバルによるAI搭載の自動追尾機能
b. 4k/30pに対応し、さらに任意の画角を切り出し1080p出力が可能
c. 様々な規格のコントロールや映像出力に対応し、Wi-Fi接続も可能で、内蔵バッテリーを使用し単体でライブ配信が可能
d. PTZカメラとしては小型で低価格

写真はOBSBOTのメディアキットより

機能と性能

人物認証による自動追尾に関しては2軸制御による物理的自動追尾のほか、4K解像度からの切り抜き映像(1080p出力)補間により、自動追尾が滑らかな映像で、急な動きに対しても補足ができていることが確認でき、見ていてカメラワークに不自然な動きがなく感じた。またUSBカメラとしての機能としても充実しており、背景ぼかしや人物の美白やスリム化等の映像エフェクトも搭載されていた(UVCのみの機能)。

各コントロールと連携

a. Wi-Fi、ホットスポット経由のコントロール
主にネットワーク経由によるPC・スマホアプリによるコントロール。スマホに関しては映像の確認もでき、事前知識も必要なくほぼほぼ初見での操作が可能。

b. IP伝送規格によるコントロール
NDI・VISCA over IP 。NDIに関してはライセンスが必要となるが、有効にすればNDI|HX3規格の映像出力&コントロールが可能となる(今回未検証)。ローランドVR-6HDにVISCA over IP経由で接続しタッチパネルによるカメラコントロールが可能であった。

c. Bluetoothによるコントロール
OBSBOT Tail Air 専用リモコンによるコントロール。サイズ的にはNintendo Switchのジョイコンサイズ、リモコン一台で最大3台までのTail Airが操作可能だ。

d. USB接続によるコントロール
Wi-Fi、ホットスポット経由のコントロールとほぼ一緒であり、PCでのコントロールが前提である。アプリ上の出力設定でUVC選択することでUSB経由で映像を出力することができる。

e. カメラ認識のハンドサインによるコントロール
カメラの映像認識によるハンドサインによるコントロール。カメラの前に立ちハンド操作でコントロールできるため、事前の設定や機器を使用することなくコントロールができる。

▲OBSBOT Tail Air 専用リモコン

▲VR-6HDとのVISCA over IP接続

使用感

a. 想定した利用、セミナーの登壇者カメラ
小型のカメラのため登壇者の前に設置しても目立たず、遠隔操作も可能なため、正面からの登壇者の表情が捉えることができる。AIによる自動追尾を設定することで、スムーズなカメラワークによる映像補完ができる。

セミナーの登壇カメラに関しては基本的にあまりカメラワークの必要性は高くはないものの、固定ではフォローできない動きも可能で、さらにAIにより自然なカメラフォローは、ビデオカメラ操作の経験者に近い動きをしてくれる。ワンオペ前提のライブ配信現場においてはとても心強い味方になってくれる。

b. 別カメラとの同時運用について
映像の色合いが少し赤みを帯びた印象だったため、用意した別のカメラとスイッチした際に違和感を覚えた。Tail AirのPCアプリで色合い調整は可能なので、特に別のカメラを混ぜた運用の際は事前に色合い調整が必要だ。

c. AIディレクターグリッド機能について
カメラ内に1人または複数人で捉えた場合、AIが自動的に切り抜きショットをマルチビュー表示でスイッチ操作が可能(スマホアプリ上)となるが、試した時点だと3人の登壇では顔認証にブレがあった。本格運用には難しいものの今後のバージョンアップに期待したい。

また切り抜きに関してはベースが4K上の解像度であるものの、カメラが寄りすぎて切り抜き映像が粗い場合がある。切り抜きに関して解像度の上限設定などあると良い。

d. LED発光の設定
設定で起動時のバー上のLEDを切ることは可能だったが、バッテリー残高表示のLEDは切ることはできなかった。暗い現場で無人カメラのLED発光は抑えたいので切る、もしくは発光を弱める設定がほしい。

▲ライブ配信画面レイアウト例

▲登壇カメラをTail Airで組み込んだ場合(iPhoneアプリとTail AirのHDMI出力を使用したレイヤー合成映像)

パフォーマンスと実用性

AIによる自動追尾、バッテリー搭載でさまざまな遠隔操作・さまざまな映像出力方法と、中小規模でのハイブリットイベントに運用可能な機能が搭載されている。またPOEにも対応しており、NDIを使えばLANケーブル1本繋げるだけで、遠隔操作&映像出力が可能となり、搬入出やセッティングに関しても負荷が大きくならない、とても力強いカメラになると思われる。

また今回の想定ではセミナー登壇用のカメラとしたが、eスポーツの選手カメラとしてもサイズ感や遠隔操作ができる点でも充分に活用できるのではないか。

気になる点としては、いろいろな機能を小さなボディーに詰め込んだ結果、熱による動作不良が弱点かもしれない。長時間のテスト利用時に45℃以上になったらしく充電保護が動作したことがあった(専用EthernetアダプターからUSB-C経由で給電利用)。

その場合外部給電による稼働となるはずだか、今回のテストでは外部給電だけでは足らず、内蔵バッテリーの電力も使って稼働し、バッテリーが空になった時に稼働停止してしまった。熱対策には充分に気を遣うべきかもしれない(のちにバッテリー充電され、カメラ起動できるまで復帰した)。

▲専用Ethernetアダプター

▲充電保護

▲OBSBOT Tail Air マニュアル_JP v1.0

まとめと評価

スマホからのコントロールはとても使いやすく、PTZカメラの導入機や人的コストがかけられない現場にはとても重宝するのではないかと感じた。

スマホアプリの完成度が高いがPCアプリとの操作機能面での差異があり(細かい設定はPCアプリ、操作はスマホアプリという印象)2つのアプリを利用することで運用を賄っていたので、今後のバージョンアップによって操作・設定項目の共通化に期待したい。

またバッテリー面に関しても現場運用で2.5時間(内蔵バッテリー)は心もとないので7時間稼働可能なOBSBOTテールエアー360º回転充電ベース(写真下)の発売が待たれる。

●製品問い合わせ先:DPSJ  https://www.dpsj.co.jp/2023/12/18/28726.html