360度カメラ・Insta360 ProとInsta360 Pro 2使い比べて進化点と違いを探る(前編)


中国深センのVRカメラメーカーであるArashi Visionから発売されているプロ向け360度VRカメラ・Insta360 Pro。2017年春にリリースされ、従来まで複数台のカメラでリグを組み、撮影したVR映像が1台のカメラで撮影できるということで話題を呼んだ。その上位モデルとして登場したのが、2018年8月に登場したInsta360 Pro2。今回はこれらの2モデルを比較することで、その違いや進化点についてレポートしていく。

 

レポート●西條結城

 

▲左はInsta360 Pro。右はInsta360 Pro2。

 

Insta360 ProとInsta360 Pro2のどちらを購入するべきでしょうか? 360°カメラとして性能や機能を考慮して、どちらの機種を購入するべきか比較・検証していきます。まずは価格を見てみましょう。Insta360 Proは399,600円。Insta360 Pro2は680,000円。価格は共に税込みです。2018年12月時点で両モデルとも販売は継続しています。この価格差を見てもわかる通り、Pro2は後継機ではなく、あくまで上位モデルとしての位置づけになります。価格差が大きいため安価なInsta360 Proを購入するべきか。機能が強化されたInsta360 Pro 2を購入するべきか。悩ましい状況です。すでにInsta360 Proを所有している人は、もっと悩むでしょう。

 

▲Insta360 Pro2に付属する遠隔映像モニタリングシステムFarSight 。最大3kmの映像伝送に対応し、iPhoneと組み合わせて手元でカメラ操作も可能。別売オプションとしても購入でき(価格は91,000円)、Insta 360と組み合わせても使える。

 

 

 

Insta360 Pro2には、遠隔映像モニタリングシステムFarSightが付属します。購入特典としてBlend 360 Stories(VRツアー作成ソフト)やMistika VR(ステッチソフト)を3カ月無料で使用できます。3カ月のライセンス費用は10万円以上に相当します。合わせて20万円近い付属品・ソフトウェアが含まれていますが、素直に納得はできないでしょう。

 

〇Insta360 Pro2の新機能をチェック

 

Insta360 Pro2の機能強化及び新機能を紹介します。わかりやすくInsta360 Proから強化されたスペックをまとめました。注目すべきポイントは、360°カメラの基本性能といえる解像度、フレームレート、ビットレート、スタビライズ機能です。それから、詳しくは後編で紹介していきたいと思いますが、新たに搭載されたカラーグレーディング用のi-Logをはじめ、動画HDR、8K解像度の映像をスマートフォンで視聴できるCrystalViewテクノロジー、長距離映像伝送が可能なFarSightも魅力的な機能です。

型番 Insta360 Pro Insta360 Pro2
ビットレート 最大40Mbps 最大120Mbps
記録メディア SDカード1枚 microSDカード6枚+SDカード1枚
スタビライズ機能 6軸 9軸
3D360°動画(最大解像度) 6400×6400/30p 7680×7680/30p
2D360°動画(最大解像度) 7680×3840/30p 7680×3840/60p
ライブ配信中の録画 4K配信中に4K収録が可能 4K配信中に8K収録が可能
Fairsight(映像伝送距離) 別売(未使用時は10m前後) 同梱(最大3km)
GPSモジュール 別売 内蔵
カラーグレーディング向け録画モード Flat Color i-Log
HDR機能 非搭載 動画HDR対応
CrystalView機能 非対応 対応

※スペックは2018年12月時点のものでファームウェアの更新等で変わる可能性があります。

 

〇外観の違いをチェック

Insta360 Pro2は、カメラ上部にUSB2.0、3.5mmオーディオジャック、1/4細ネジ穴が追加されたことで外部マイクなど周辺機器の接続が安易になりました。AP(Wi-Fi)アンテナによる通信の強化、GPSアンテナによるGPS機能が大きな違いです。共通している仕様も多く、さまざまな部分に同じパーツが使われています。ハードケースなどはまったく同じです。

▲Insta360 ProとPro2のハードケース

 

カメラ正面のボタン配置もまったく同じです。唯一違う点はよく見るとPro2の上にはGPSとWi-Fi用アンテナの接続端子があります。

 

▲カメラ正面。左はInsta360 Pro、右はInsta360 Pro2。

 

Pro2では正面から見て右側の上部にUSB2.0コネクタが追加されました。

▲カメラ右側面。左はInsta360 Pro、右はInsta360 Pro2

 

後面はまったく同じです。

 

▲カメラ背面。左はInsta360 Pro、右はInsta360 Pro2

 

正面から見て左側の上部に、外部マイク用の3.5mmミニジャックが追加されました。

▲カメラ左側面。左はInsta360 Pro、右はInsta360 Pro2

 

上面には、AP(Wi-Fi)アンテナ、GPSアンテナ、1/4細ネジ穴が追加されました。

▲カメラ上面。左はInsta360 Pro、右はInsta360 Pro2

 

底面は、Pro2では各レンズの映像を個別に記録するmicroSDスロットが6つ追加されたのに加えて、RESETや3.5mmオーディオジャックやHDMIポートの位置が変わりました。

▲カメラ底面。左はInsta360 Pro、右はInsta360 Pro2。

 

「Insta360 Pro2」にAP(WiFi)アンテナ、GPSアンテナを装着すると昆虫のような外観になります。アンテナの角度は調整ができます。

 

▲両方ともInsta360 Pro2。アンテナを接続した状態。

 

 

 

〇センサーの切り出し範囲が変わった

 

Insta360 Proの2D360度動画の最大解像度は8K/30pでした。Insta360 Pro2は8K/60pまで強化されました。2Dは3D(立体視)ではない通常の360度動画のことです。3D360度動画に関してもInsta360 Proは6K/30pもしくは4K/60pが最大でしたが、Insta360 Pro2は8K/30pもしくは6K/60pまで向上しています。これらのビットレートも40Mbpsから120Mbpsに上がっています。

Insta360 ProとInsta360 Pro2は1つ1つのレンズに備えられたイメージセンサーの使い方が異なります。8K/30pで撮影した場合にはInsta360 Proはカメラ単体の解像度が3840×2160ピクセル(16:9)だったところ、Insta360 Pro2では3840×2880ピクセル(4:3)で収録されていました。

 

▲Insta360 Pro。8K/30pで撮影した時の1つのレンズの映像。

 

▲Insta360 Pro2。8K/30pで撮影したときの1つのレンズの映像。

 

Pro2では縦が720ピクセル分増加しています。各レンズ同士の映像の重なりが増えたことで、8Kでも3D撮影が可能なりました。映像の重なりが大きいメリットは、手動でステッチ調整を行う場合に調整可能な範囲も広くなります。これは素晴らしい強化と言えるでしょう。しかし、残念ながら8K/60pで撮影した場合は、クロップされる部分が大きく、3840×1920ピクセルしかありません。映像の重なりが小さく残念です。6K/60pで撮影した場合は、3200×2400ピクセルありますので実用的な印象です。

 

 

 

〇画質はどう違うのか?

肝心の画質は向上しているのでしょうか。Insta360 Pro2は、前述の通りビットレートが40Mbpsから120Mbpsへ大幅に向上しています。Proでは6つのレンズの映像を1枚のSDカードに記録する関係でビットレートが抑えられていましたが、Pro2では各レンズごとにmicroSDへ収録されるためビットレートが高くなりました。

 

▲Insta360 Pro2のmicroSDスロット。各レンズの映像を個別に記録するため6つ搭載されている。

 

 

実際にファイルのプロパティを見てみると、ビットレートが41Mbpsから101Mbpsと向上しています。ビットレートが高いほど圧縮等のノイズが少なく、カラーコレクションやカラーグレーディングなどさまざまな後処理を行う場合に有利になります。映像の変化が大きく情報が多い撮影にも効果があるでしょう。例えば映像全体が常に変化(移動しながら森林の撮影など)している場面は、ビットレートが低い場合はブロックノイズが増えます。

 

▲左:Insta360 Proで8K/30pファイルのプロパティ、右:Insta360 Pro2で8K/30pファイルのプロパティ

 

実際に映像を比較すると、映像の一部では確かにノイズが減少しています。単色部分など圧縮によるノイズの減少が確認できました。一方で根本的なカメラの解像力は変わっていません。センサーの性能自体は同じと思われます。Insta360 Pro2では、壁紙などの細かい凹凸をより感じられました。

 

▲画質比較1(静止画)

▲画質比較動画2

 

画質に関してはカメラレンズごと単体の映像で比較しています。Insta360 ProとInsta360 Pro2のカメラの露出設定は共にISO100、1/30s。ホワイトバランスは4000Kにしました。同じ設定にしてもInsta360 Proは露出オーバー気味になります。そのためInsta360 Pro2の露光量を+1.5に調整して見た目の明るさを合わせています。

 

 

次に、下写真のようにPremiere ProのLumetriカラーで彩度、シャープネス、自然な彩度を最大にして比較しました。Insta360 Pro2のほうが階調の破綻が少ないため、ビットレート向上による効果が見られました。

 

▲Insta360 Pro。
▲Insta360 Pro2

 

 

○撮影データの取り出しに苦労した

Insta360 Pro2からの撮影データ取り出しに苦労しました。複数の方法が用意されているので、いずれかの方法でデータを取り出すことはできます。著者環境では、ネットワーク経由ですべてのファイルをダウンロードできたのですが、Insta360 Stitcherからファイルを認識できずステッチを開始できませんでした。Premiere proのInsta360Stitcher Pluginからは、ダウンロードしたファイルを認識できました。パソコンとカメラをLAN接続する方法は、何かしらの原因でうまく行かないことがあります。1枚のSDカードと6枚のMicroSDカードを同時に読み込めるカードリーダーを用意しておけば、SDカードから直接データを読めるので安心です。microSD6枚+SDカード1枚になったことで複雑になりました。Insta360 Proは良くも悪くもSDカード1枚で簡単でした。ネットワークやIPが分からない人は、ステッチができるまで苦労するでしょう。またmicroSDカードは小さくて扱い難くて残念。SDカード×7枚を採用して欲しかったです。

 

 

〇スタビライズ性能を検証

Insta360 Pro2は、ジャイロが9軸に増え手ぶれ補正が強化されました。機能名称も「ジャイロスタビライザー」から「flowstateスタビライザー」に変わりました。どのぐらい性能が向上したのでしょうか? 両方カメラ共に8K/30pモード、各種Autoにて検証します。

▲2組の三脚にカメラを固定して、揺れが同じになる状況で検証しました

 

1往復2往復目は普通に歩きました。3往復目は上げ下げしました。4往復目は小走り。5往復目は左右に揺さぶりながらの検証です。

 

Insta360 Proは手持ちのガタガタ感があります。上下の大きな揺れや、左右の大きな揺れに対しても、良質なスタビライズはできません。走った場合は盛大に揺れてしまいます。Insta360 Pro2は、大きな上下左右の揺れも自然にスタビライズできました。走った場合の激しい揺れも制御できています。エクイレクタングラーで書き出した比較もアップしました。気になる人は全体をチェックしてみてください。

 

結論 どちらを購入するべきか

固定した設置で360度動画を撮って出しで利用する人はInsta360 Proがオススメです。スタビライズ機能の利用も少なく、後処理を行わないならばInsta360 Pro2を購入しても大きな画質の違いは感じられないでしょう。一方で移動しながら撮影したり、8K素材として後処理を前提とする360度撮影を行う人はInsta360 Pro2がオススメです。8K時に1つのカメラあたり3840×2880ピクセルという広い映像は本当に魅力です。スタビライズ機能も優秀で実用的です。Insta360 Proをすでに利用している人でも、8Kもしくは後処理を行い納品するケースが多い人は、Insta360 Pro2に買い換えても後悔は少ないでしょう。しかし、根本的にセンサーサイズが小さいためダイナミックレンジの幅は限られています。夜間など高感度を必要とする撮影や、本格的な後処理・合成処理を考えた場合には、より大きなセンサーを持つ360度カメラが必要です(※Arashi Visionではマイクロフォーサーズ相当のセンサーサイズを搭載するTitanの開発を発表している)。Insta360 Pro2はハイエンド機種でありますが、ミドルレンジのハイエンドという位置づけになるでしょう。

 

後半では、Insta360 Pro2から採用された新機能であるi-Log、動画HDR、CrystalViewテクノロジー、FarSightなど魅力的な機能を中心に紹介していきます。

 

●Insta360 Pro2の製品情報

https://hacosco.com/insta360-pro2/