J-WAVE(81.3FM)が20年に渡り放送し、多くのリスナーに支持されてきた坂本龍一のレギュラープログラム『RADIO SAKAMOTO』。その一夜限りのトリビュートフェスト「RADIO SAKAMOTO Uday -NEW CONTEXT FES × DIG SHIBUYA-」が2月10日(月)に渋谷の3箇所の会場で開催された。 豪華アーティストが集結し、この日限りの特別なトリビュートパフォーマンスを披露したイベントのスペシャルアフタームービーは、ブラックマジックデザインのBlackmagi Pocket Cinema Camera 6K G2を3台してBRAWで撮影し、カラーグレーディングされている。ディレクターの渡邉剛太さん(ROM inc.)にその舞台裏についてお話を伺った。 

レポート ● 編集部 一柳

ディレクターとかカメラマンをやっています。株式会社ROM(ROM inc.)として法人化していますが、プロジェクトごとにスタッフをアサインしてチームをつくって映像制作をしています。ビデオグラファー的な仕事もありますが、広告でシネマカメラを使ったカメラマンとして呼ばれることもありますし、カラリストとして参加することもありますので、いろいろな立場で映像制作に関わっています。

ジャンルとしては、ミュージックビデオや、今回のようなイベント記録映像もありますし、アーティストさんのライブ収録もあったりと、いろいろことをやっていますが、音楽関係が多いかもしれません。そこから派生してファッション系のお仕事もあります。

ソニーのFX3とブラックマジックデザインのBlackmagic Pocket Cinema Camera 6Kを所有していて、あとはプロジェクトの目的によってレンタルしています。FX3に関しては、やはり機動力重視でワンマンオペレートに向いているので、そういった現場に投入することが多いのですが、ポケシネ6KのほうはRAW収録が可能で、質感がちょっとふくよかな絵になるので、ミュージックビデオやWEBのプロモーション映像だったり、しっかりフォーカスも送って撮影するような現場に投入します。ブラックマジックデザインのポケシネシリーズは最初のシリーズから使ってきましたが、購入したのはBlackmagic Pocket Cinema Camera 6Kが最初になります。

5インチのパネルで設定するUIがとてもわかりやすいです。自分も含めてはじめて触るカメラアシストタントにしても、すぐに感覚的に操作できるというのがいいですね。

僕の印象だとポケシネ6Kはかなり柔らかい画調になるなと感じているので、レンズのほうはカールツァイスのコンパクトプラムだったり、シグマのプライムレンズといった、きっちり解像度が出る硬めの描写をするレンズを選んで、センサーとのバランスをとっています。シネレンズはレンタルですが、所有しているスチル用のレンズですとシグマの18-35mm F1.8 DC HSM | Art といったような。シグマのレンズはわりとかちっと描写して解像度が出るレンズのほうがバランスが良い気がしています。もちろん最終的にどういうトーンにしたいかにもよるのですが。

記録メディアはカードではなく、外部のSSDで運用しています。最新のSSDではないということもあるかかもしれませんが、6Kでフレームレートを60fpsにしたときに、BRAWの5:1以上にすると、たまに記録が間に合わずにフレームが落ちることがあるので、5.7Kを選択することが多いですね。

Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2を3台を用意しました。会場がSpotify O-EAST/東間屋/duo MUSIC EXCHANGEの3会場に分かれていたので、それぞれに1台ずつ配置しています。スタッフは私も含めて5名で、カメラマンは3名、カメラサポートのアシスタントが1名、僕がディレクターであり、データを管理しました。アフタームービーなのですべてを記録する必要はないのですが、それでもJ-WAVEさん側からはすべてのアーティストを入れたいという要望があり、各アーティストが40分くらいの持ち時間なので、その間にできるだけ多くアングルを切り取ってもらうようにしました。東間屋などはDJバーでかなり暗いので、カメラマンひとりでは危険だったので、サポートをする人がどうしても必要でしたね。

僕は基本的にベースにいて各カメラマンにインカムとLINEを使って指示出しをしていました。ライブ撮影と違って、常に動き回ってアングルを稼がないといけないという撮影なので、このタイミングでこうなりそうとか、ここで盛り上がりそうだとか、何か演出が起きそうだということを伝えていました。ひとりのアーティストのライブ撮影とはちょっと違う感じで、いわゆる素材撮りということなのですが、その会場の各アーティストの表情だったり、シーンをもれなく押さえつつ、あとはお客さんの反応も撮影してもらうという感じです。レンズはSIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM、SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM、SIGAM Art 18-35mm F1.8 DC HSMを使いました。

データは定期的にバックアップしていかないと、単純に収録のメディアがいっぱいになってしまうので、逐次データをコピーしていきました。今回は容量を抑えるためにBRAWの12:1で収録しています。

こういうイベントの映像となると、フォーカスの問題もあるし、ポケシネだとなかなか取り回しが難しいのはないかという懸念があったのですが、今回、そこは作風というか映像のスタイルを変えることで、その懸念を払拭することができました。よく、僕はやんちゃな表現と言ってしまうんですが、カメラを振り回すような、動きが派手なワークだったり、手持ちでガンガンいくようなことではなく、あえてポケシネ6Kを選んだことによって、しっかり構えて撮影して、きれいに繋いでいくということを試みました。そのあたりは各カメラマンに伝えて実践してもらいました。こういうスタイルでやればBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2でも行けるなといいますか、むしろ良い映像になったと思います。

編集とグレーディングはDaVinci Resolveで行いましたが、RAWで撮影することによって、調整の幅が広がり、リッチなトーン、質感を出すことができました。そのトーンを出すためにカメラワークもわりと静かな感じにして、あまり人を感じさせないワークにしてもらったわけですが、こういったアフタームービーの映像であっても、派手な動きをしなくても見られるものになっているというのが自分にとっても収穫でした。

また、6Kで撮影することによって編集時に拡大したり、スタビライザーをかけているのですが、そういうこともできる自由度の高さが良かったです。

今回、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2でRAW撮影をすることによって、改めてカラーグレーディングの重要性を感じました。いくら良いカメラで撮っても撮りっぱなしでグレーディングがちゃんとできてないと全然意味がないと思います。逆に定点であって、グレーディングをしっかりすればリッチな作品になると思います。