レポート● 栁下隆之
クイックロック式が盛況
最近は各社クイックロック式のビデオ三脚が盛況で、その背景にはやはりミニマムスタッフでの撮影において利便性が高いということがあるのだろう。また、新規ユーザーよりも買い換えユーザーが多いように感じているが、その利便性への理解があってのことだと思う。
実際にアングルを探る中で三脚の上げ下げはとても重要で、とりわけボケ味を活かした大判センサーは前ナメのボケを生かす上で、上下の微妙なアングルを探ることが多くなる。特にスライダーを併用した物撮りなどでは、前ナメの使い方次第で移動感などが大きく変わることもその理由のひとつ。三脚のアングル調整を面倒くさがらずに行うことが、作品のレベルアップに繋がる。
日本の老舗三脚メーカー平和精機工業のブランドである「Libec」(リーベック)は、スライダーを含むシステム三脚のALXシリーズのヒットに始まり、近年では、NXシリーズのNH10やHSシリーズのH15(耐荷重3kg)など、一眼動画に親和性のある高品質な製品をラインナップしている。そのLibecブランドが満を持して発売したクイックロック三脚が、今回の「QL40B」になる。今までクイックロック式の三脚をラインナップしてなかったことに驚くが、待たされたというよりも「Libecへの期待感」を形にしてくれたのだと捉えている。
SPECIFICATIONS
パイプ材質 | アルミニウム |
最大搭載質量 | 40kg |
脚ロック方式 | フリップ式 |
アクセサリーポート | 1/4”ネジ穴及び 3/8”ネジ穴各3カ所 |
キャリングハンドル | あり |
質量 | 2.6kg(スプレッダー類未装着時) |
高さ | 55.1〜181.9cm |
ボール径 | 75mm |
三脚段数 | 3段 |
操作性が良く静音なクイックロック機構
まず操作してみた実感として、指1本程度の力で操作できることに加えて、わずかな操作音でロックできることに驚かされる。これは素早く操作した時も同様で、大きな音を発することはなく、他社製の一部に見受けられる「バチン」というような開閉音とは無縁で、どちらかというと「ムギュ」とレバーを操作する感じで、静かな場所でも躊躇せずに操作できると思う。
講演やステージなどの配信で頻繁に三脚を上下させることはないと思うが、たとえば静かなオフィスの中などでも毎回「バチン、バチン」と操作を音を鳴り響かせることはないので、この静音性に助けられる場面は多いのではないだろうか。メーカー的にもこの部分には拘ったそうで、個人的にはこの部分だけでも競合メーカーの製品に対して大きなアドバンテージがあると感じた。
クイックロック機構:ひとつのレバーのロックを外すと、上の段と下の段の両方のロックが外れて高さを変更できるようになる機構。
耐荷重40kgの余裕とアルミパイプ採用
同社のRT20C(カーボンパイプφ75mmボール)やRT30B(アルミパイプφ75mmボール)の最大搭載質量25kgに対して、RT30Bと同質量ながら40kgの最大搭載質量で本体質量2.6kgの三脚としては最大クラスの耐荷重を誇っている。逆にこの耐荷重でφ75mmボールなのはある意味オーバースペックかもしれないが、昨今では必須機材となっているスライダーの併用を考えれば余裕のあるスペックを求めるのは筆者だけはないと思う。従来と同じ3段ながら、グランドスプレッダー時に最低高はRT20Cの37cm、RT30Bの40.5cmから55.1cmへと増加しているものの、最大高はRT20Cの154cm、RT30Bの150.5cmから、181.9cmと格段に高くなり、増加分の恩恵を大いに感じられる。
価格については従来製品からは大幅にアップしているものの、昨今の原材料の高騰を考えれば納得できる範囲で、かつ競合メーカーの製品よりも手に取りやすい価格設定になっている。話によればカーボンとアルミの両方で検討していたそうだが、質量の微増よりも価格面での優位性に主眼をおいて、アルミパイプを採用したとのことで、そのあたりもLibecのこの商品の狙いがよく伝わってくると感じた。
確実に上段から伸長する機構
クイックロック機構の動作感の良さはすぐに感じ取れると思うが、確実に上段から伸びる機構に感心する。剛性を考えれば下段のシングルチューブは最小限の伸長にとどめたいところなので、この機構は好印象だ。また、その伸縮がスムーズなので現場でもたつくこともなさそう。ユーザー自身でロック部分の調整ができる工具が付属しており、メンテナンス性も高そうである。長期の使用をしてみないと、このあたりの品質は見えてこないが、ロケ先でもメンテナンスできるのであれば、困ることはなさそうだ。
スライダーを組み合わせても余裕の耐荷重
筆者が主に使用しているスライダーが同社のALX-S4。30cm程度とわずかな移動距離でも三脚にセットしたまま運用するにはちょうど良いサイズ感で、使い方次第では充分な移動感が出せる。ただし、この組み合わせの場合は搭載するカメラの質量次第で耐荷重に不安が生じる状況があったことも確かで、QL40Bを組み合わせれば耐荷重の余力が増えるので、安心して運用できるようになる。加えて、スライダーと同時にパン操作を行なっても、三脚の捩れ剛性の高さから思い通りの操作ができる点も高評価ポイントだ。
課題と期待とまとめ
アングルチェンジの素早さと余裕のある耐荷重でこれからのメインの三脚になることは間違いないが、個人的に唯一の欠点と思えたのが最低高が約55cmまでアップしてしまったこと。一般的なテーブルトップでの物撮りにスライダーを併用した場合は、従来の40.5cmでも少し高いと感じることがあり、ぜひこのQL40Bシリーズにミドルタイプをラインナップしてほしいと感じた。 とはいえ、このQL40Bがクイックロックタイプ三脚のこれからの定番になることは間違いないだろう。
DETAIL
リーベックの製品情報はこちらから https://www.libec.co.jp/products/tripods/QL40B_features.html