今年のInter BEEはメーカーブースでのセミナーが増えた。しかもキヤノンはそれをライブ配信。初の試みだという。なぜ配信するのか? その背景について現場で話を訊いた。
ビデオサロン2020年1月号付録より転載
カメラの展示会でセミナーが増えている。デジタルカメラが複雑になり短時間手に取っただけでは把握できないこともあり、使いこなし方を知りたい、ポイントとなる機能を知りたい、信頼できるプロの印象を聞きたいという傾向が強くなっている。またそのカメラでどんな表現が可能になるのかというクリエイター的な目線に注目が集まるようになった。今回のInter BEE 2019でも“セミナーシフト”は顕著だった。キヤノンでもたとえばアマチュアの写真ファンを対象にしたCP+では年々セミナーエリアが拡大中。しかし製品の展示も重要であり、これ以上はセミナースペース(来場者)を増やせないところまで来たという。
そこでライブ配信だ。配信であれば、当日来られない人も見られるし、カフェや自宅でくつろいで見ることもできる。今回のInter BEEではキヤノンとしては初めてライブ配信を試みたそうだが、これはCP+はじめ各イベントに向けた布石というか、実験のような気がする。
一方でセミナーはライブ感がいいのであって、記録として残されると話しにくいという出演者もいる。また動画系の場合、権利関係の処理の問題もある。今回はYouTube Liveでアーカイブは残さず、リアルタイム視聴のみとしたのは、そのあたりの課題もあったそうだ。今後は期間中限定公開などを交渉したり、ターゲットとコンテンツによっては別のサービスで配信する可能もありそうだ。いずれにせよ5G時代、展示会、セミナー、配信の三位一体で面白いことになっていくのは間違いない。
▲ブース内のセミナーを2カメで撮影。プレゼン資料含めてスイッチングし、WirecastでYouTube Liveに配信。権利関係もあり、記録は残さずライブのみ。技術スタッフはカメラマン2人、スイッチャーと配信担当はブースの中に狭いスペースにテーブルを入れてそこで作業。配信中はスマホで配信状況をチェック。安全を重視し、会場に配信用の回線をもう1系統契約し、解像度は1280×720、バックアップサーバーにも配信する念の入れよう。
▲配信されたのは初日の6セミナー。取材したのは最後の「キヤノン8Kが拓く新たな映像表現の可能性」という内容で、キヤノン8Kカメラ試作機でTBSテックスの髙垣俊宏氏が台湾を舞台に制作された8Kショートムービー「Stand By You」の見どころを解説した。
▲お話を伺ったイベント担当のキヤノンマーケティングジャパンの阿部芳久さん。
●VIDEOSALON 2020年1月号より転載