REPORT◉森下 千津子(プロ機材ドットコム Inter BEE 2019(11月13日〜15日)幕張メッセ 6ホール ブース6101に出展)
展示会イベントブース内でのライブ配信
「PHOTO NEXT2019」という営業写真館向けの展示会中の主催者企画展にて、写真館にむけて動画配信・ライブ配信機材の導入の提案を去年に引き続きさせていただいた。写真館ではすでにスペースがありカメラを複数台所有している。昨今は、新しいサービスを打ち出せずに客離れが進み廃業に追い込まれてしまう写真館も多い。そこで、共通の道具であるカメラを使っているのだから、動画やライブ配信のサービス、動画配信の貸しスタジオ等として新しいサービスを提供できる可能性はないのか、という問いかけの意味もあって敢えて写真の展示会で動画サービスの提案を、実際にライブ配信のデモンストレーションをしながら行ってみた。
2m四方という極狭ブース内に3カメマルチカム配信機材をすべて収める
今回のブースは、通常の展示会ブースよりもさらに小さい2×2mというサイズに、3台のカメラを置いてマルチカム配信を行う。壁は2面であとの2面は通路に面していたため、狭いブースではあるがなんとか収めることができた。背景は壁にぺったりとマイクロファイバー撮影用シーン背景の幅2m高さ3mのものを張り付けた。ゲストは2~3名を想定。背景の前に小さな椅子と丸テーブルを置く。そしてテーブルの前にLUMIX GH4を3台、レンズは被写体との距離が近いので、8-18mm、12-35mm、12-60mmという広角~標準のズームレンズを使用した。
照明は正面にリング型のビューティーライトを配置、サイドから面光源のRX-12TDXロールフレックスLEDライトを使用、そして背景から出演者の後方髪の毛のあたりを照らすタッチライトとして、スポット型の160wLEDライトをRX-12TDXと反対側の壁側トップに入れた。
さて、今回のスイッチャーは、ローランドさんと株式会社JVCケンウッドさんにご協力いただき、Roland AVストリーミングミキサーVR-1HD とマルチフォーマットビデオミキサーV-02HD、そしてリニューアルしたばかりで国内のイベントでは初披露となったCONNECTTED CAM STUDIO IP6000をお借りすることができた。3台のカメラの映像はVR-1HDに入力、ゲストがPCを持ち込みPC映像と切り替える時はカメラ映像を入力したVR-1HDからのアウト映像とPC映像をV-02HDに入力して、ゲストが自分でフットペダルを踏んでカメラとPCを切り替える。これはゲストが映像切り替えをやりやすいと好評だった。V-02HDの映像を、最終的にはLiveshell.XとCONNECTTED CAM STUDIO IP6000を使用してエンコードし、配信プラットフォームに送出する。また、配信された映像をCONNECTTED CAM STUDIO IP6000内に記録した。CONNECTTED CAM STUDIO IP6000はスイッチャーでありながら映像のスイッチングだけでなく、記録、エンコード、配信まで1台で行うことができる。配信画質はFHDまでとなるが、配信できるプラットフォーム数に制限もない。今回のライブ配信ではメインスイッチャーはRolandの2台を使用したが、録画と配信の部分ではCONNECTTED CAM STUDIO IP6000が大活躍した。また、通りがかりの来場者へのデモンストレーションとして、光学30倍ズームを備えたJVCのPTZカメラKY-PZ100を遠隔操作しながらその映像と、配信中の映像をCONNECTTED CAM STUDIO IP6000でスイッチングして見せることにより、通行人が足を止めてくれた。
▲正面側にGH4を2台MC寄りと全体引きのアングル。ゲストのPhotonium(カメラマン3名のユニット)は、自分たちでも普段からライブ配信を行なっており、トークも上手い。
▲VR-1HDとV-02HDを使用。これまで映像用機材に触れたことがない人が多かったが、かなり多くの人がVR-1HDに興味を持ち価格を聞かれた。
▲PTZカメラのコントローラーとCONNECTTED CAM STUDIO IP6000。タッチパネルモニターと組み合わせて使い、タッチすると出力モニターの絵が切り替わるので通行人が驚く。
ここでも音声でつまずく
普段社内で配信する環境と、展示会イベントで大きく違ったのは、周囲の音のレベルだった。しかも当社ブース位置は、セミナー会場がすぐ近くにあり、セミナーの音声も大音量で流れてきた。最初のゲストのPhotoniumさんの時に、まずは普段つかっているラベリアマイクを使用したが、雑音を拾いすぎてゲストの声が聞こえにくくなってしまった。前日に機材チェックを行った際、マイクも使用してテスト配信は行っていたが、前日の準備日はほとんど人がおらず、セミナーもやっていなかったので周囲の音が全く違い、これほどノイズが入ってしまうということに気づかなかったのである。そこで無指向性のラベリアマイクの使用は諦めて、指向性のあるダイナミックマイクを使用してゲストの声を狭い範囲で拾うように改善した。
しかしダイナミックマイクを使用した場合、手持ちならばある程度口元に近づけるように意識して持つが、話に集中できるようマイクスタンドを使用したのが災いし、今度はゲストが話に夢中になると、マイクの向きを意識せずにマイクから遠ざかったり、マイクと違う向きを向いてしゃべったりするので、ゲストの声が入らなくなってしまう場面もあった。そこで最終的には、番組が始まる前にゲストにお願いして、なるべくマイクに対する顔の向きやマイクとの距離を意識してしゃべってもらうようにした。それで1回目よりも2回目、2回目よりも3回目と、回を重ねるごとに音の部分はかなり改善した。
マーケットの反応は?
このように、既存のスペースやカメラを有効活用してできるライブ配信のご提案をしたが、興味を持って足を止める方、いろいろ質問してくる方が去年と比較して断然増えた。去年はまず、マルチカメラをスイッチングしたライブ配信というのを説明しても理解してくれない人も多く、商品をお勧めするどころか、何をやっているのかということを説明するだけで精一杯だったが、今年はある程度動画の知識を持った方も増え、商品の価格などより突っ込んだ質問をしてくる人が多かった。特に、すでにカメラを持っている方にとっては、VR-1HDが最も興味をそそられるらしく、これさえ買えばできるのね!という人が多かった。とにかく1年で来場客の反応や温度感がかなり変わったことが印象的だった。今後は映像制作や配信業界と関係のない業界の企業のライブ配信が盛り上がりそうだ。
▲2m四方というかなり狭いブースだが、ところ狭しとなんとかすべての機材が収まっている。
使用機材
・カメラ
LUMIX DMC-GH4 3台
・レンズ
H-HS012035(12-35/2.8Ⅰ)
H-ES12060(12-60/2.8-4)
H-E08018(8-18/2.8-4)
・スイッチャー
Roland VR-1HD
Roland V-02HD
JVCケンウッド CONNECTTED CAM STUDIO IP6000
・マイク
Classic Proダイナミックマイク 2本
・モニター
プロ機材ドットコム 4K対応7インチモニター
プロ機材ドットコム 15インチ4Kインチモニター
・照明
プロ機材ドットコム ロールフレックスLEDライト RX-12TD+RX-12SB 2台
プロ機材ドットコム ビューティーライトKD-BL48LED-W
プロ機材ドットコム AAA507 Skier SUNRAYスポットLEDライト
・背景
プロ機材ドットコム マイクロファイバー背景布
・配信エンコーダー
CEREVO Liveshell.X
・その他
三脚、卓上用ミニ三脚、電源タップ、HDMIケーブル、マイクロHDMIケーブル、カメラ電源カプラー、ライトスタンド、ノートPC等