8コアのCPU、ビデオメモリ8GBのGPU、64GBのメモリ…。
全部盛りのMacBook Proを導入したビデオグラファーの鈴木佑介さんがDaVinci Resolve使用時の操作感をレポート

レポート●鈴木佑介

 

実はいろいろパワーアップしている MacBook Pro 16インチモデル

2019年12月10日に発売が開始された、「フルカスタマイズで高級車と同額」な新型Mac Proの話で巷はもちきりだが、今回はもう少し身近なMacBook Pro 16インチ(以下、MBP16)を検証する。昨年の11月に発表、発売が開始されたMBP16は従来の15インチのモデル(以下MBP15)とリプレイスする形でMacBook Proシリーズの最上位モデルとなった。特にイベントなどもないまま静かに発表、発売されたので「16インチ」というサイズ感の変更以外に地味な印象があるかもしれないが、8コアのCPU、64GBまで積めるメモリ、ビデオメモリ8GBのGPU、キーボードの改善などカスタマイズできる幅が本当の意味で「Pro」用となり、世界中のプロユーザーが歓喜している。

既にご存知の方もいるかもしれないが、画面サイズ以外のMBP15からの変更点として、解像度が3072× 1920 (226dpi)に上がった他、若干のボディサイズと厚みが増し、重量UPが挙げられるが、並べてみるとその違いがわかるものの、いざ手にしてみると違和感はない。作業をしてみるとわずか1インチだが、画面の作業領域が大きく感じられる。良い意味で没入感を得れる。さらにMBP16のRetinaディスプレイは500ニトの輝度、DCI-P3の色域までカバーしている。

また見えないところでの変更点として、キーボードがパワーアップ。まずescキーがタッチバーから独立し、不評だったバタフライ式のキーボードからシザー式に変更されたことで、深いキーストロークとなり、あまりタイピング音もせず、指先が痛くならなくてとても良くなった。また、後述するが、放熱処理が再設計され、高負荷をかけても70℃を上回ることがほぼない。

さらに文面では伝えられないのが残念だが、スピーカーの音がとてもよく、外部スピーカーが不要なのではないかと思うほどパワフルで良い音になっている。内蔵バッテリーもMBP15よりも16Wh増えており、サイズ感こそ変わらないもの、電源アダプターも96Wのものに変更されている。

 

MacBook Pro、前モデルからの進化点

▲アップルMacBook Pro 288,800円〜


▲奥行や厚みは0.5cmほど増したが、体感として、サイズ感はほぼ変わらない。

▲前モデルはescキーがタッチバーに組み込まれていたが、独立したキーに。

▲キーボードがシザー式に。キーストロークが深くなり、タイピング音も静かに。


▲端子はThunderbolt 3を4つ、ヘッドホンジャックを1つ備える。

 

 

アップル公式サイトでもDaVinci Resolveでのパフォーマンスの良さをアピールしている

新型MBP16をアップルの公式サイトでご覧になった方で気づいた方も多いかもしれないが、最近のアップルは「DaVinci Resolve推し」だったりする。以前までFinal Cut Proで例えていたことがDaVinci Resolveを引き合いに出すことが多い。それだけDaVinci Resolveのユーザーが増えてきた、ということを示しているのであろうが、アップルが自社サイトでDaVinci Resolveを推すのであれば「実際どれだけのパフォーマンスなのだろう?」と好奇心が湧いてくる。というわけで今回はMacBook ProにおけるDaVinci Resolveの動作検証をしてみた。

今回、偶然にも執筆依頼を頂いた翌日に私物で発注済みだったMBP16が届いたので、筆者の編集環境で検証実験を行なってみた。編集で使用しているメインソフトであるDaVinci ResolveはGPUに大きく依存するソフトで、しっかりしたGPUを組み込んでおけば16〜32GB程度のメモリとそこそこのCPUでも問題なく動くのだが、他のCPUやメモリを使うソフトもあるので、せっかくカスタマイズできるようになったこともあり、今回発注したMBP16はストレージ以外は最上級の全部載せモデルにした。ストレージも正直外付けSSDを使うことが多いのだが、「出先で撮影データのバックアップなどをする際に内蔵ストレージが大きいほうが取り回しが楽だな」という経験上、4TBのストレージを選択した。

 

今回の検証に使用した筆者所有Macの主なスペック比較

 

 

検証①BMPCC6Kで Blackmagic RAW 6K(8:1)素材を 4K/24pのタイムラインで編集→4K書き出し

このMBP16と2017年発売のMBP15、現在のメイン編集機であるiMac Proを同じ条件でDaVinci Resolveを動かし、書き出し速度をテストしてみた。まずはポケシネ6Kで撮影した6K/50p、24p素材で制作したミュージックビデオを4Kのタイムラインで編集し、4Kの動画ファイルとして書き出しテストを行なった。映像尺は3分45秒。書き出しコーデックはH.264。

ポイントとしては6K素材で構成された本編の中の1/3の素材にノイズリダクションをかけていることである。

ノイズリダクションは相当な負荷がかかる。リアルタイムで再生できていた素材でもノイズリダクションをかけることで再生フレームレートがiMac Proでも4コマ程度になってしまうことがある。この書き出しに時間を要する構成でどのくらい差が出るだろう?

まず本命のMBP16で書き出してみた。かかった時間は15分10秒。なかなか時間がかかった印象だが、2017年式のMBP15で書き出してみると32分5秒。最新モデルは過去のモデルに比べ、倍以上の速さを叩き出している。たった2年での進化に驚く…というより顕著にGPUの性能がDaVinciでは影響しているのだな、と実感する。iMac Proで書き出してみたところ、9分7秒とやはり速い。ちなみにCPUの負荷をアクティビティモニターで確認したところ、負荷はほとんどなく。主にGPUが使用されている。以前から言われていることだが、DaVinci Resolveを使用するのであればGPUは最大のものを積んだほうが良いだろう。

驚いたのが熱処理についてだ。放熱設計がよく作られているとはいえiMac Proで90℃前後をリーチするのに、MBP16はずっと70℃前後をマークしている。排気音こそ大きいが、その効果は絶大で背面両サイドからもファンの動きを感じ、筐体を触ってもMBP15に比べて熱くない。以前8コア化した際に問題になった熱問題は解決されていると言っても過言ではないだろう。

 

BMPCC 6Kで撮ったBRAW 6K素材でテスト

▲素材は6KのBRAW(8:1)。4K/24pのタイムラインで編集。尺は3分45秒。本編の素材の1/3にノイズリダクションをかけている。

▲放熱シンクが大型化され、従来よりも効率的に冷却放熱フィンを追加している。

▲書き出し時、CPUにはさほど負荷はかかっていない。

 

 

検証②FS7のXAVC-I 4K/60p素材とα7SⅡなどのX-AVC-S 4K/30p素材をHD24pのタイムラインで編集→HD書き出し

次はDaVinci Resolveで扱う場合、下手をするとRAW素材よりも動作がもっさりしてしまう、ソニーのXAVC素材を使っての書き出しテストをしてみた。動作がもっさりする、というのはXAVCというコーデックをデコードする際にCPUに負荷がかかってしまい、CPUが頭打ちになってしまうとリアルタイムに再生されなくなってしまう感じだ。従来そういう場合はメディアをProResなどの中間コーデックに変換・最適化することで対応・解決しているのだが、今回はProResなどに変換せずネイティブのまま扱ってみた。

使用したのはFS7のXAVC-Iでの4K/60pとα7系のXAVC-S(100Mbps)の4K/30pの混合素材にて全体尺2分25秒のイベントのショートダイジェスト映像。HD納品だったので、HDのタイムラインで編集→HD書き出しという実際の案件によくあるような条件だ。

こちらも暗部での撮影要素があったため、一部素材にノイズリダクションをかけてある。編集の操作感としてはXAVC系はCPUの性能がある程度あったほうが動作が滑らかな印象だ。少なくともMBP15よりMBP16のほうが作業動作感は快適に感じた。とはいえProResに変換したほうが動作にストレスはないだろう。書き出しにかかった時間の速度の速さは結論から言えばiMac Pro>MBP16>MBP15だ。単純に倍ではないが、約2倍弱の速度で書き出した。

ここでも特筆するのがMBP16の放熱処理の安定性だろうか。ずっと70℃以下をキープし、上回ることがなかった。そしてやはりXAVC系を扱うとCPUの負荷がかかる。ということモニタリングするとわかる。圧縮コーデックを扱う人はGPUの他にもCPUとのバランスも考えてシステムを構築すると良いのではないであろうか。

 

XAVC-I 4K/60p素材やX-AVC-S 4K/30p素材でテスト


▲XAVC素材などのコーデックはCPUに負荷がかかる

▲素材はFS7で撮影した4K/60pのXAVC-Iやα7SⅡ等で撮影した4K/30pのXAVC-Sが混在。1080/24pのタイムラインで編集。尺は2分25秒。

 

 

 

検証③Cinema DNG (3:1)4K/60p素材を 4K/24pのタイムラインで編集→4K書き出し

今でこそBlackmagic RAWでRAW動画が手軽になっているが、RAW動画の基本?とも言えるCinema DNGでの動作も検証してみた。BMPCC 4Kが発売した頃、Cinema DNG3:1で制作したMVのデータがアーカイブ化して残してあったので、それを使って試してみた。尺は5分6秒。同じように一部素材にノイズリダクションも使用している。

もちろん尺が長いこともあるが、iMac Proで13分強、MBP16で 21分強、MBP15で45分強と書き出しにかなり時間がかかった。DaVinci ResolveはGPUの性能が大きく関わってくることが改めて分かった次第であり、Blackmagic RAWを使い慣れてしまった筆者は「Cinema DNG」はやはり重いのだなという印象を改めて受けた。語彙不足かもしれないが編集作業のサクサク感、動作感はCinema DNGよりもやはりBlackmagic RAWが上手というかMacBook Proでの取り回しが良い印象だ。

 

BMPCC 4Kで撮った4K/60p Cinema DNG素材でテスト


▲素材はBMPCC4Kで撮影した4K/60のCinema DNG(3:1)。4K/24pのタイムラインで編集。尺は5分6秒。

 

 

どんなシステム構成がいいの?

MBP16はBlackmagic RAW素材をDaVinci Resolveで扱う人にとってはオススメである、と言えるだろう。DaVinci だけにフォーカスを当てるならGPUを最高のものを選んでおけばメモリも32GB(16GBでもどうにかなる)、CPUも6コアと8コアの値段差が22,000円なので、8コアにしておけばかなり使えるマシンになるであろう。iMac Proには及ばないものの、近いパフォーマンスがモバイル環境で使えるというのは多くの利点がある。また、最近はラップトップを自宅でもモニター接続で使用する方も増えてきている。そういう方にも最適かもしれない。もちろんWindowsで組めばもっと安くパフォーマンスが良いものを作れる、という意見があるかもしれないがそれでもMacが好きな我々はMBP16の可能性と性能に胸ときめくのだ。

 

 

●MacBook Pro16インチモデルの製品情報

https://www.apple.com/jp/macbook-pro-16/