レポート◎ 編集部 一柳

●審査員 池田千尋(映画監督・脚本家)、増田英明(映画プロデューサー)、一柳通隆(VIDEO SALON  シニアエディター)

選出された全29作品はこちらのサイトから見られます。
https://microcinemacontest.jp/

 

ケーブル4K 特別番組 放送日のご案内
2023年9月10日(日)前編22:00-23:00/後編23:00-24:00

再放送もあります。詳細はケーブル4K番組表をご確認ください。
https://www.cable4k.jp/

 

マイクロシネマコンテストとは、  「作品尺5分以内」「ストーリー性がある」「日本国内の『地域』特性が伝わるシーン(またはセリフなど)を作品中に含んでいる」をすべて兼ね揃えた映像作品を募集するコンペティション。ケーブル4Kチャンネルを運営する日本デジタル通信が主催し、ビデオサロンもその主旨に賛同して、協賛してきた。

第2回となる今年からは、ビデオサロンの特集企画がきっかけで誕生した「地域プロモーション」が加わり、「ドラマ」「ミュージックビデオ」と合わせて3部門に。

2022年12月8日から2023年4月30日まで作品が募集され、昨年を超える247作品が集まった。6月の審査会により各賞が決定され、YouTubeチャンネルで公開、ケーブル4Kでの特別番組でも審査員のインプレッションとともに公開される。

今回の特徴は、新設された「地域プロモーション部門」において、完成度の高い作品が見られたこと。「その場所に行ってみたくなる」ということはもちろん、切り口が斬新なものが高く評価された。

またミュージックビデオ部門にも優秀作が数多く集まった。男女ツインボーカルバンドの arne が本コンテスト用の書き下ろし曲「nostalgia」をベースに、ふるさとの要素を盛り込んだものというお題で募集。楽曲のイメージから、イラストやCG、アニメーション表現がマッチするのではないかと予想されたが、その通り、イラストと実写の合成作品やCG作品が印象に残った。多くの作品で、しっかり歌詞の世界を読み込み表現するだけでなく、間奏の激しく歪んだギター部分も効果的に使うなど、音や曲の流れとのマッチングも考慮されていた。

なかでもマイクロシネマコンテストが重視しているのがストーリー性があるかどうか。ミュージックビデオにおいても、そこを映像で表現できている作品が最終的にチョイスされた。

唯一残念だったのはドラマ部門。昨年は5分でドラマを表現でき感情を揺さぶる作品が見られたが、今年はドラマを作ろうという意図や設定に説得力が感じられない作品が多かった。池田監督からは、「心を動かされないとドラマではない。ドラマになっていない作品が多すぎる。セリフですべて説明しまう傾向が強い」という手厳しいコメントが。5分でもドラマは作れることは昨年証明された。水準を維持するためにグランプリは該当作品なしに。次回、傑作が集まることを期待したい。

 

地域プロモーション部門

『街と二重奏 マリンバネリネリ in ニイハマ』
あかがねミュージアム運営グループ 山本 清文さん

愛媛県新居浜市に流れる浜や町の音とマリンバの即興セッション。野木青依さんのマリンバが練り歩き、街の音とセッションしていく。地元で暮らす人たちが「新居浜っていいところだな」と気付いてもらうことを意識して作ったという地域プロモーション作品。現場音とマリンバの音も丁寧にミックスされていて、大画面で映像と音を堪能したい作品。保育園で園児とマリンバ奏者の会話が入ることで生き生きしてくるが、このシーンに象徴されるように、街の人とマリンバ奏者とのふれあいのシーンがもう少しあっても良かった。

 

『変わらない景色 新しい自分』
株式会社ニューステラ 一守 大成さん

岡山で映像制作に取り組むニューステラが、地元岡山の魅力をドラマテイストで表現した観光PRムービー。あの頃と変わらない、ゆっくりとした時間が流れる岡山の各地を巡り、いつの間にか忘れていた気持ちを思い出せるような作品を目指したという。ドローンや風景ショットも効果的に使われ、カメラワークも自然で、丁寧に編集されている。審査員の池田監督も「癒された」という作品。ただ、前半の日常部分が長すぎるので、ここをもう少しコンパクトにすると、視聴離脱されない、引き締まった作品になっただろう。

 

 

ミュージックビデオ部門

『nostalgia』
株式会社Days 下山 佳吾さん

母親とケンカ別れしたひとりの女性のストーリーを描いた作品。人物はイラストで描き、背景は実写を加工して合成し、過去のストーリーを連想させながら物語は進んでいく。車窓に昔の自分が映るという幻想的なイメージショットはこの手法だから自然に受け入れられる。過去のオレンジ色の思い出の世界と、現在の青い世界が、最後に母を抱きしめるシーンで融合する。偶然にも、準グランプリともに母と娘の関係を描いたものが評価された。

 

『nostalgia~ふたりの家~』
株式会社カズモ 小菅 規照さん

待っている「人」がいるから、飛び出すことも帰ることもできる。 高校生のマリが母が作ったお弁当を残して帰ってきた。 あの日言えなかった「ありがとう」と「ただいま」。 気づいたときには…… 母と娘の「想い」をめぐる素直になれない親子の物語を懐かしい映像表現とオールドローン撮影で挑戦した作品。セリフがないからこそ、表情と動きで丹念に捉えてストーリーを描いていく。間奏でドローンが空中に上がる部分が作品の転換点になっている。

 

 

ドラマ部門

『ORIGIN』
藤沢 和央さん

過疎化が進むふるさと。町役場の地域振興部開発課に勤める北山陽介(33)と妹の絵里(27)。ふるさとの発展に尽力をつくす。ふるさとを残したいがこのやり方でほんとにいいのか? 大型商業施設建設で立ち退きで取り壊される予定の亡くなった幼馴染の家に最終確認に行くふたり。中にいたのは幼馴染の幽霊だった。そこから会話劇が始まる。演技やカメラワークの完成度よりも、ドラマを作ろうとしている姿勢が評価された。脚本はよくできているが、演技の間が気になったり、凝りすぎたカメラワークやアングルで芝居の世界に入り込めない部分もあった。この脚本でもう一度作り直すことに挑戦しても良い。

 

 

敢闘賞

ドラマ 『青い竜は少女を乗せて』西端 実歩さん

 

地域 『阿蘇茅葺工房』藤本 周一さん

 

MV 『nostalgia』TOKABI 長尾 朋佳さん

 

MV 『nostalgia』古厩 阿子さん

 

 

入賞

ドラマ 『閉校』NicholasVさん

 

地域 『大鰐温泉もやし』中田 巨人さん

 

地域 『水と生きる、下田市』岩本 崇穂さん

 

MV 『nostalgia』  CORE ENGINE 小林 周平さん

 

MV 『nostalgia 〜現像〜』  Simply 浦本 竣莉さん

 

 

 

VIDEO SALON 2023年9月号より転載