REPORT◉江夏由洋 株式会社マリモレコーズ  協力◉Nextorage株式会社

Designed in Japan―Nextorageの妥協なきモノづくり

みなさんはNextorage(ネクストレージ)という会社をご存じだろうか? 「初めて聞く名前だ」という方もいらっしゃるかもしれない。私はデジタルシネマの撮影を生業にしているが、最近この会社にずっとお世話になっている。そう、このNextorageという会社、SDXC/SDHCといったSDカードやCFexpress Type Bメモリーカードメディアなどを開発・生産している日本の会社なのだ。

もっと詳しく話をすると、Nextorageの前身はソニーのプロメディアを支えていたソニー子会社のソニーストレージメディアソリューションズという会社。Nextorageのホームページには「Nextorage株式会社(ネクストレージ株式会社)はメモリー・ストレージ・ソリューション事業に特化した会社として2019年10月1日に発足しました。ソニーにおけるメモリーストレージ20年の歴史を継ぐ技術者とスタッフ集団を中心に創られた会社です。」と記されている。

いわばソニーのメディア事業がSONYという名前を下ろし、新しく名前を変えて独立した会社と言っていい。次に向かうメディアメーカーという意味で、Nextorage(Next+Storage)ということなのだ。

最高のクオリティを新世代のメディアで実現

 そして今、このNextorageの躍進が素晴らしい。

まず製品のラインナップを見てみると、SDXC/SDHC、microSDXC/microSDHC 、CFexpress Type Bに加え、M.2 2280タイプの PCIe 4.0 NVMe SSDなど、記憶メディアが多数あるこの市場の中でも、商品のターゲットをかなり絞っている。もちろんまだ独立して間もないため、取り扱う種類もこれからもっと増えていくことが予想できるが、会社名と同様、新しい規格のメディアを攻めいているという印象だ。

逆に言えば、すでに競合他社が多くあるメディア業界の中で、ユーザーの信頼を得るために、まずは商品のクオリティの高さで勝負しようとしているのかもしれない。

Nextorage商品が掲げるモットーは「Designed in Japan」である。つまりソニーで培った技術を活かし、日本で完全に開発・設計しているということだ。

ユーザーからすると、同じ規格・容量であればメディアは安いほうがお得だとか、結局中身は同じでしょ、などという考えも少なからずあるだろう。

私もデジタルシネマの時代が始まって間もない時は、SDカードやコンパクトフラッシュなど、安いところを目指して秋葉原によく通ったことを思い出す。あれから10年以上の月日が経ち、4Kや高画質化が進み動画ファイルのビットレートも相当高くなり、メモリーカードの容量も急激に増えた。もちろん、規格やジェネレーションも日進月歩で進化する中、転送速度もその桁数を増やしている。

そこで問われるのが、ずばり、クオリティだ。もはやスーパーカー並みのスペックを持つメディアを扱うにあたり、メディアロスは当然ながら、転送速度の低下や使用回数による劣化などは、撮影現場において大きな事故を招く原因になりかねない。ましてや、新しい規格のメディアを扱うということは、相当なクオリティと信頼性を求められるということにつながるのだ。

そこで注目を集めることになったのが、Nextorageが持つ高い技術力だ。繰り返し使われることが宿命であるメディアの耐久性はもとより、その減衰しにくいスピードを確保するためのアーキテクチャ設計などすべてにおいて他社には見ることのできない技術が詰まっている。私が撮影においてNextorageのカードを使う理由はここにある。絶対に裏切られないというDesigned in Japanの信頼だ。

他に類を見ないCFexpress Type Bのラインナップ

実際に私はNextorage製のCFexpress Type Bのカードをふだんから使っている。使用するカメラはFUJIFILMのX-H2Sだ。カメラが2台あるため、7枚のカードを使っている。CFexpress Type Bといえば、メディアメーカー数社から発売になっているが、Nextorage製のスペックがとても私のワークフローにマッチしているため、使うすべてのカードがNextorageだ。

NextorageのCFexpress Type Bのカードはその使用スタイルに合わせて2つのラインナップがある。主に静止画のメディアとして作られたB1 SEと、動画記録をターゲットとしたB1 Proだ。

スピードと価格も違うのだが、それぞれ用意されている容量も異なる。B1 SEは128GBと256GBに対し、B1 Proは165 GB、330 GB 、660 GB そしてなんと1330 GBの4種類だ。

▲B1 Proのラインナップ。容量は165 GB、330 GB 、660 GB、1330 GB。

B1 ProはVPG400(動画撮影における最低書き込み保証速度:400 MB/s)に対応しているため、ビットレートの高いハイエンドの動画撮影であっても、安定した記録が保証されている。1330GBという大容量が用意されているのも素晴らしい。

実際にスピードテストをすると、その速度READ/WRITEともに900MB/s近い数字を測定した。

Dynamic Auto Power Saveという技術

 

 一瞬の最高速度をそのカードのスペックとしてうたうメーカーもあるようだが、どんな使用状況においてもNextorageのB1 Proカードは正真正銘のVPG400の規格を持つ。

もちろんカードに使用するメモリパーツのクオリティや、高いレベルのアーキテクチャもカードの高品質化につながっているのだが、この堅牢なスペックを支えるのがDynamic Auto Power Saveという技術だ。これは速い記録スピードの特性を利用して、動画撮影時にカードへの書き込みがない時間をカード自体が能動的に探し、宜自動で低消費電力モードに切り替えるというものだ。

つまり、カメラの動画記録のビットレートよりもカードの記録ビットレートのほうが圧倒的に速いため、カードには記録の待ち時間が生じる。この待ち時間の間、電力をセーブするというモードだ。これにより動画撮影時におけるカードの消費電力を最大でなんと68%も削減(使用する機材にも依存する)。記録時におけるカードの発熱を大幅に抑えることに成功した。

記録時においてカードの大敵となるのが熱だ。記録が続くとカードに熱が生じ、その安定性を失うことになる。よく「動画記録が途中でストップする」などということを耳にするが、こういった熱がいろいろな問題を起因することになる。NextorageのB1 Proが魅せる高いパフォーマンスは、他社にはない技術力がその礎となっている。

高品質なpSLCのNANDフラッシュを採用

そしてさらにB1 Proシリーズは内蔵のNANDフラッシュメモリに、耐久性が最も高く、高品質なpSLCモードのNANDフラッシュを採用している。pSLCのNANDフラッシュの場合、実容量は表記容量の3倍になるため、たとえば1330GBのB1 Proには、その3倍にあたる4TBものNANDメモリが実搭載されていることになる。pSLCモードのNANDフラッシュは容量が減る代わりに、非常に高速な書き込みを実現することができる。通常であれば、実容量が表記容量と同じTLCタイプのNANDフラッシュを採用するカードが多い中、Nextorageが一切の妥協をせず、ハイエンドのクオリティをB1 Proには追求していることが伺える。

FUJIFILM X-H2Sで[B1 Pro]にProRes記録

FUJIFILMのX-H2SはApple ProResを内蔵で記録できるようになった。4K/60pの場合、Apple ProRes 422 HQはビットレート約260MB/sにもなるため、やはりNextorageのカードが必須と言える。同様に660GBのカードであればDCI 4K/60pが約40分記録可能だ。

 

660GBのカードを使用したときのApple ProrResの記録時間(概算)

ProRes HQ ProRes LT
DCI4K/23.976p 約1時間40分 約3時間40分
DCI4K/59.94p 約40分 約1時間25分

通常の撮影ではDCI4K/23.976pのProRes LTで充分なクオリティが得られる。合成が必要なシーンのみHQを使用するといった使い方をしている。つまりB1 Proの660GBがあれば、1日のロケを賄うだけの充分な記録時間を確保できるということだ。

 

キヤノンEOS R5 CやニコンZ 9の8K RAW記録などにもオススメ

もちろんRAW記録などのさらに高いビットレートを必要とするキヤノンEOS R5 Cでの8K/60p RAW記録や、RED V-RAPTORの8K/120pRAW記録など、ハイエンド画質にもしっかりと対応している。最近はニコンZ 9や パナソニックLUMIX GH6など各社から動画に力を入れたCFexpress Type B対応のカメラが続々と登場しているため、安定したカードの需要はますます高まるだろう。

ただし大容量になると、コピー時間もばかにならなくなるが、B1 ProはREADも速いので660GBのカードであってもそのデータのコピーはそこまで時間を費やすこともない。

「スピード」という剣と「堅牢」という鎧

  またNextorageのカードの良さはその速さや安定性だけではない。あらゆる外的障害に対して堅牢な作りを保証している。耐熱性(-10 ℃~70 ℃)、耐衝撃(EIA-364-27A準拠)、耐X線(ISO7816-1準拠)、耐紫外線(ISO7816-1準拠)耐磁性(Nextorage独自テストを実施済)、耐静電(IEC 61000-4-2準拠)など、おそらく最強のスペックといっていいほどの堅牢性を兼ね備えている。

 撮影データは絶対に破損してはならない。ちゃんと収録できて、編集できる。当たり前のようではあるが、ここで「万が一」というのは許されないのだ。私が収録メディアに期待することはただ一つ「信頼」である。繰り返し何度も使うことになるカードだからこそ、納得のいくものを選びたい。

神奈川県川崎市にあるNextrorage本社を訪問して[B1 Pro]に採用された技術を取材。

 

Nextorage製品サイト

https://www.nextorage.net/cards/cfe-b/b1pro/

Nextorage amazon サイト

www.amazon.co.jp/dp/B0BPCZB211