マイクロフォーサーズが再熱している!  新製品が発売され賑わっている様子でとても嬉しい。私は普段LUMIXカメラを主軸に使用しているため、OM SYSTEMのカメラシステムに触れることは少なかったが、野鳥撮影×マイクロフォーサーズと言ったらOM SYSTEMを無視はできない。今回は野鳥撮影に使わせていただき自分ながらのレビューと感想をお伝えしたい。

REPORT●小川浩司 撮影助手:寺田留架


OM-1 Mark II

オープン価格(オンラインストア305,800円)

OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400㎜ F4.5 TC1.25x IS

1,000,000円(オンラインストア880,000円)

OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600㎜ F5.0-6.3 IS

500,000円(オンラインストア440,000円)

使用感

デモ機を受け取りバッテリーグリップとレンズを装着し、持ち上げてみると感じる持ちやすさ! ボディのグリップが握りやすい! 私は手が大きいほうなので、どうしても中指がボディに届いてしまいカメラの上げ下げを繰り返すと指がだんだん痛くなってくるが、OM-1 Mark IIにはそういったストレスが一切皆無。ボディは前機種と同様とのことだから、昔からこういったスペックデータということであり、現場で使うにあたっての性能を追求していたのではないかと、カメラを握りしめ、まだ何の撮影もしていないのに感心していた。 

 初めて使用するカメラのため、ボタン配置など理解するのに戸惑うことがあったが、これは慣れの問題だろう。今や主流のバリアングルモニターなので撮影は容易だった。メニュー内は大変充実していて、ボタン割り当てやフォーカスの調整など、撮影スタイルに合わせてより細かな自分好みに設定することができる。なかでも良いと思った機能はフォーカスリングの回転方向を変更できること。MF時には反射的にリングを回すので、自分の慣れている方向じゃないとどうしても間違えることがあるが、これが選べるって素晴らしい !

フォーカスリングの回転方向をボディ側のメニューで変更できる。

動画形式

動画は4K/60p、シネマ4K、FHD240pのHS撮影も可能であり、Atomos社のNINJA製品へ外部出力するとRAW動画も収録可能。HDR動画や10bitのOM-Logでグレーディング用の撮影もできるので、ここらへんは充分なスペックじゃないだろうか?  欲を言えばAll-Iも内部収録できれば良い。

少し気になったのは数時間の間、録画と停止を繰り返してふとボディに手を添えると温度が若干高めだった。録画が停止するようなことはなったし問題はなかったが、長時間ぶん回した際の熱暴走への耐性は気になった。 

画質・色

裏面照射積層型 Live MOS センサー、有効画素数は約2037万画素と、標準的なセンサースペック。OM-Log撮影しているので、元データは色が乗っていないが編集時にLUTを乗せるとどんな色が出るのか楽しみだった。実際に色を確認してみると、水面に映る緑や黄金色に光る葦の色合いが目で見た印象より濃くコントラストが少し高めに感じ、個人的には美しく感じた。下手にカラーグレーディングで色彩補正を行わなくとも、動画単体の色味は仕上がっている印象だ。

解像感に関しては圧縮のせいか質感を損ねている印象があり、4Kでもトリミングするのは少々厳しそう。スチルでの静止画RAWはとても解像感のある画像だったので、動画ではさらに良好な画質を得るならば外部RAW収録するのが良いだろう。写真+動画でサクッと撮影するか、ガッツリ外部収録機を備え動画撮影に挑むか、フレキシブルに選べるのはこのカメラの嬉しいところだ。

高感度耐性

4月の午後6時頃の干潟、日も暮れ残照を頼りに高感度ISO6400撮影。ノイズリダクションのせいかディテールにのっぺり感が出てしまっている。これは低照度下で他のカメラでも同じであろう。ノイズはチラチラ乗るもののそこまで気にならなかった。マイクロフォーサーズらしい質感でまずまずといったところ。 

被写体認識AF

さて、肝心の野鳥撮影における重要なポイント、オートフォーカスの性能について述べる。被写体認識AFは動物(犬・猫)認識と鳥認識が独立しており、さらに瞳オートフォーカス機能も付いている。

動体を撮影する際、動画の場合はAFの迷いを映像に入れたくない(&AF設定がめんどくさい)ので、基本はMFにこだわって動画撮影をしていた筆者だが、今回使ってみてその不安は払拭された。鳥への認識度は抜群で、フレームインすれば即座にピントを合わせてくれる。

ヨシなどの障害物にかぶった時は、被写体のサイズにより手前のヨシに動いてしまったりはあったが、ここは設定の追い込み次第だろう。最初に鳥を認識をしてピントが合ったなら、その後はフォローを続けてくれる様子である。あえて素早くズームイン・アウトやパンをしてみたが、即座に追いかけてくる。AFの食いつきは優秀だ。水上で首を丸めたカモを「浮寝鳥(うきねどり)」というが、カメラからしたら丸い茶色い物体であろう。しかししっかり鳥だと認識してくれた。  

また実際に三脚に置き、ズームリングに手をかけ、パン棒で雲台を操作すると、MFだとフォーカスがおろそかになりがちだし、カメラの小さなモニターでは、ピントの山が掴みづらい。外部モニターを外付けすれば良いだろうが、なるべく本体のみで完結したいものだ(野外であれこれ付けると物損リスクもある)。 800㎜を超える超望遠でパンニング中にフォーカスリングに手をかけることは、カメラブレへとつながるのでなるべくは触れたくない。撮影中にフォーカスを気にせず撮影できるということは、動き続ける野鳥のフォローに徹することができるので、安心してカメラにピント合わせを任せ集中することができる。 

AFの被写体検出は人物、航空機、鉄道、鳥、猫といった選択肢があり、ここで鳥を選択する。コンティニュアスAFで被写体をフォローし続けてくれる。

AF被写体検出の鳥認識は優秀

首を丸めたカモは鳥の形には見えないがしっかり鳥だと認識してくれたのには驚いた。


M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400㎜
F4.5 TC1.25x IS PRO 300-1000㎜ 相当 (35㎜判換算)

テスト機が自宅へ届き段ボールの封を開け、いの一番に発した言葉は「でか !」だった。昨今小型化が進むなかマイクロフォーサーズレンズらしからぬ堂々とした姿。もちろんフルサイズカメラの同スペックレンズに比べれば遥かに小さいが、ボディにバッテリーグリップを取り付けこのレンズと合わせると少し前の一眼レフを持っているかのよう。当然防塵防滴で温度耐性などアウトドアに適した堅牢な設計で安心感がある。PROの名を冠するOM DIGITAL最上位のレンズだ。

いざ持ってみると、とても持ちやすい。ボディとレンズ合わせて3kg程度なので意外と軽く、また三脚座が長いのでグリップ感が良いのだ。よく見ると細かな部分に設計者のこだわりを感じる。なにげに嬉しいのは三脚座リングが90度ごとにクリック感があること。三脚使用時、水平をとるのに素早いセッティングができるので良い。超望遠撮影では水平をシビアにとらないとパンしたときにかなり斜めになってしまうのでこういった配慮は助かる。

そして素晴らしいのがインナーズームであること。全長が変わらないので三脚のバランスに影響がない。さらにF値が通し! レンズの明るさ(開放F4.5)がズームで可変しない。つまりREC中にズームによる露出への影響やカウンターバランスのズレが生じないので動画撮影中ストレスなくスムーズなズーミングが可能となる。

またズームリング・フォーカスリングともに滑らかで回しやすく、業務用カムコーダーのレンズを回しているような心地であった。公園で水鳥であるカイツブリを撮影していたが、右奥から左手前に徐々に泳いでくる場面でスローなズームとパンニングが必要となったが、滑らかなオペレーションをすることができた。   

さらにテレコン内蔵。1.25倍と控えめだが最大1000㎜相当(開放F5.6)までの超望遠撮影が可能となる。テレコン使用時の解像感の低下などほぼ見られず、ほとんど入れっぱなしで使っていたが、ヒキや明るさが必要な際のシチュエーションによって上手く使い分けられるだろう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400㎜ F4.5 TC1.25x IS PROを動画撮影の現場で使うと、インナーズームのありがたみを感じる。REC中でもパンチルトしながら、ズーミングしてもバランスが崩れない。カイツブリが泳いでくるところも、滑らかなオペレーションができた。


M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600㎜
F5.0-6.3 IS  300-1200㎜相当(35㎜判換算)

えっシグマのレンズ? って思うくらい各部分がそっくり。150-600㎜というレンズは昔から各マウントで使い慣れているので手にしっくりきた。マイクロフォーサーズの場合、換算焦点距離300-1200㎜相当という驚異的な撮影範囲になり、野鳥撮影はこれ1本で賄えてしまう。

繰り出し式ズームのため三脚使用時にはバランスが変わってしまうので、パンするならば雲台トルクを強めるなど多少工夫が必要。ズームリングもなかなか滑らかで使いやすかった。なにより直進ズームが使えるので、手持ちでの動画撮影時に安定した体勢で体を固定できる。

アルカスイス互換のプレートなのはありがたい。私は二台体制で撮影する際には両方にアルカスイスのプレートを取り付け、雲台にも互換クイッククランプを取り付けて共通にし即座に入れ替えをできるようにしているが、このレンズはそのままの状態で取り付けができるため大変重宝する。

車を走らせているとキジが飛び出てきたので、路肩へ駐車し手持ちで撮影した。ズームヨリ切り1200㎜相当の手持ちでの動画撮影は、呼吸を整え自らがジンバルになったような気持ちでないと像が乱れてしまうので慎重に臨む。だが手ブレ補正もあってほとんどブレずに安定して撮影することができた。三脚を出したりバタバタして下手にチャンスを逃すくらいなら、よほどの条件でない限りは手持ち撮影でいいんじゃないかと思う。撮影した動画を見てみると、移動するキジを追いかけて撮っているがなかなか滑らかでとても良い。若干、たまに数フレームだけ手ブレ補正のセンサーが動いているのか乱れが見られたが、普通に再生したら気にならないだろう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600㎜ F5.0-6.3 ISは1200㎜相当の手持ちでの動画撮影でも、手ブレ補正の効果で、ほとんどブレずに安定して撮影することができた。とっさの撮影に向いているレンズ。

OMレンズ+LUMIX

番外編でLUMIX G9 PRO IIに150-600を装着して撮影してみた。さすがにカメラが違うと出てくる動画の雰囲気は違いが出てくる。これは各社の処理エンジンの違いといったところで個性のでるところであり、特別画質について他社だから劣るということはないが、AFには差があった。離れた2羽のカモをわざと交互に撮ったり、素早くズームすると、LUMIXカメラのほうが一足AF(動物認識)が遅く感じたのだった。ここはやはり純正同士の組み合わせに軍配が上がった。 

番外編として、LUMIX G9 PRO IIに150-600を装着して撮影してみた。AFという点では純正どうしの組み合わせのほうがレスポンスが良かった。


総評

今回初めて使わせていただいたOM-1 Mark IIは、 画質の能力というより、 被写体を取り逃がさないための能力、そのための設定が細かくて、直接カメラを操作するにあたっての利点をたくさん感じることができた。また何と言っても望遠レンズの出来が素晴らしい! 今回紹介した150-400㎜の150-600もマイクロフォーサーズでは唯一無二であり、筆者も欲しくなり返すのが惜しかったくらいだ。きっとまだまだたくさんの便利な機能や使い方があると思う。これは場数を経て、各々の撮影スタイルに合わせ変化する「成長するカメラ」なんだろうとふと思い、質実剛健な機材に信頼と敬意を感じるのであった。



VIDEO SALON 2024年6月号より転載