ゼンハイザーから発売されたクリエイター向けワイヤレスマイクシステム「Profile Wireless 1-Channel Set」。ソロクリエイターに向けのシンプルな1チャンネルのワイヤレスマイクシステムで、収録ミスを防ぐ複数の機能も盛り込まれている話題の製品だ。今回は、ビデオグラファーのOGAHARUさんに実際に使用し、レビューいただいた。

レポート●
OGAHARYU
ビデオグラファー。映像制作チーム色彩として活動。iPhoneでの映像制作にも積極的に取り組む。
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映像クリエイターにとって「音」は作品の完成度を左右する重要な要素。けれど、現場での収録は常にトラブルと隣り合わせ。
「マイクは入っているか?」「音は飛んでいないか?」そんな不安を抱えながらカメラを回した経験、きっと多くの人があるはずです。

今回レビューするゼンハイザーの 「PROFILE WIRELESS 1-CHANNEL SET」 は、そうした不安を取り払うために作られたような製品です。手軽さと安心感、そしてゼンハイザーらしい高音質。この3拍子が揃ったワイヤレスマイクを、現場感覚でお伝えします。テスト音声も収録していますのでぜひご参考までにご視聴くださいませ。

開けた瞬間から“ゼンハイザー感”

筐体はシンプルながらも無駄がなく、黒とシルバーを基調にした落ち着いたデザイン。まさにゼンハイザーらしいプロフェッショナルな雰囲気です。

同梱物はかなり充実しており、送信機と受信機に加えて、TRSコイルケーブル、USB-Cケーブル×2、ライトニングアダプター、USB-Cアダプター、風防、マグネットプレート、コールドシューアダプター、小型キャリングポーチまで揃っています。つまり、届いたその日からカメラでもスマホでもPCでも収録を始められるセット内容ということです。

特に送信機は27gという軽さで、襟元やシャツの胸元に装着しても存在を主張しません。外観的にも「インタビューで相手に威圧感を与えない」「Vlogで自然に溶け込む」そんな安心感がありました。

電源を入れたら、もう準備完了

現場でありがたいのは、セットアップの速さです。送信機と受信機はあらかじめペアリング済みで、電源を入れるだけで接続が完了。アプリを開いて設定をいじる、といった手間は一切不要です。

OLEDディスプレイは小型ながらも視認性が高く、さらに内蔵されたジャイロセンサーを活用して表示の向きを自動で回転する設定も可能で、天地が反転しても快適に情報を確認できます。また、バッテリー残量や接続状況、入力レベルを一目で把握できるのは非常に助かります。

また、接続方式の柔軟さもポイント。カメラには付属のTRSケーブルで、スマホにはUSB-CあるいはLightningで直接、PCにもUSB-Cでそのまま接続可能。接続の自由度が高いことで、現場で「この機材に繋げれるかな?」という心配をする必要がありません。

操作ボタンも必要最小限で直感的。ミュートやゲイン調整が素早く行えるので、余計なメニューを探す時間を減らし、撮影に集中できます。

「録れていないかも…」という不安から解放される

ゼンハイザーといえば「音質」に定評がありますが、この製品でもその期待を裏切らない結果でした。

声のニュアンスを自然に拾い、耳障りなクセがありません。周波数特性は60Hz〜20kHzと十分に広く、人の声を中心に録音するコンテンツでは不満のないレンジ。S/N比も高く(78.5dBA)、雑踏や環境音がある場所でも声がしっかり前に出てくれます。

さらに注目すべきは「録り逃し対策」。これがこの製品の大きな魅力です。

・32bit float録音:録音した音が大きすぎたり小さすぎたりした場合でも音割れせず、後で自由に音量を調整できる録音方式 のことです。

・16GB内蔵メモリ:送信機自体に最大30時間の録音が可能。もし無線が途切れても、後から内蔵データをPCに取り込めば救済できます。

バックアップ録音モード:無線接続が不安定になった瞬間、自動的にローカル録音へ切り替わる仕組み。現場での“まさか”に備えられます。

バックアップ録音メニュー

・セーフティチャンネル:片チャンネルを-6dBで記録することで、突然の大声や環境音によるクリップを防止。後処理で安心して扱えます。

セーフティーチャンネルメニュー

「ワイヤレスマイクは便利だけど、もし音が飛んだら…」という不安を、ここまで徹底的にカバーした製品は珍しいと感じました。

外ロケでも頼れるタフさ

ワイヤレスマイクの評価は、外に持ち出して初めて決まります。

PROFILE WIRELESSは、送信機27g、受信機30gという軽量さで、服に装着しても違和感がほとんどありません。しかも最大245mという伝送距離を実現しており、見通しの良い環境なら距離を離れても安定した録音が可能です。

バッテリーは最大7時間の駆動に対応。日中のロケなら余裕を持って使えるレベルで、充電も約1.5〜2時間で完了します。短時間で次の現場に備えられるのは大きな利点です。

さらに風防の効きもよく、街中や公園での撮影でも風切り音をしっかり抑えてくれました。堅牢な筐体とあわせて「外で安心して使える」タフさを実感しました。

ソロ撮影の強い味方になる!

一通り使ってみて感じたのは、このマイクが「ソロで活動するクリエイターに最適な一本」だということです。

  • 高音質で自然な声を拾ってくれる
  • セットアップが簡単で、現場で迷わない
  • 録り逃しを防ぐバックアップ機能が充実している
  • 軽量で長時間の撮影にも対応可能

一方で気になる点を挙げるなら、周囲の環境音もそのまま入るため、静かな場所での使用にこそ真価を発揮するということ。また、1チャンネル仕様なので対談や二人撮影では物足りない場合もあり、そういうシーンでは2チャンネルセットが視野に入ってきます。

それでも、この1-CHANNEL SETが提供する「安心感と手軽さ」は、ソロクリエイターやVloggerにとって非常に魅力的です。音に悩まされる時間が減れば、その分撮影や編集に集中できますからね。

シンプル・イズ・ベスト

PROFILE WIRELESS 1-CHANNEL SETは、「小さな筐体にゼンハイザーの哲学を凝縮した一台」でした。シンプルに扱えて、プロ品質の音が録れて、しかもトラブルにも強い。これほど“現場で即戦力”と呼べるマイクはなかなか無いかなと感じます。

Vlog、インタビュー、街中ロケ、リモート取材。ひとりで撮影を回す機会が多い人にこそ、このマイクは心強い味方になってくれると思います!