TVCMや映画でのドローン空撮ではRAW収録の膨大なデータのバックアップが必要。SSDの導入でバックアップの時間が大幅に短縮できた
Report◉遠藤祐紀
協力◉サンディスク株式会社
ドローンの解像度は4Kから6Kへ、そして8Kの道も見えてきた
4K収録が当たり前になってきた最近の状況では、編集でのマシン負荷やデータのハンドリングは頭の痛い問題です。ドローンや実機ヘリでの空撮を専門とする私たちとしては、RAW収録が始まった段階から「エクストリーム500 ポータブル SSD」「エクストリーム900 ポータブルSSD 1.92GB」「エクストリーム ポータブル SSD 500GB」の三機種を利用してきました。DJI Phantom 4やMavicなどの機体でmicroSDにH.264で収録している分には従来のHDDでも充分対応できたのですが、ドローンでのRAW収録が可能になり、データサイズが急激に大きくなったことによる長時間のデータコピーに悲鳴が上がり、早々に導入しました。
現在私たちが主力としているドローンはDJI Inspire 2です。ドローンに搭載するジンバル一体型カメラの解像度はX5Sで最大5.2K、X7では6Kと、地上カメラよりも空を飛ぶカメラのほうが高解像度という奇妙な状態になっています。もちろんデータサイズも巨大です。収録に使うメディアはDJI CINESSDという専用メディアで、最大4.2Gbpsの書き込み速度を誇ります。6K(6016×3200)で収録する場合、フレームレートにもよりますが、480GBのメディアで15分弱しか収録できません。6K RAW 23.976fpsでの14ストップの品質は非常に素晴らしいので、ついつい最大画質で収録したいという欲望に駆られますが、不用意に長く収録しつつテイクを重ねてしまうとデータ量も超膨大になってしまいます。専用CINESSDの所有数も限られますので、やりくりも大変なのですが、撮影終了後の長時間にわたるバックアップ祭りは深刻な負担となります。
テラバイトの撮影データをベリファイコピーでバックアップすることも
Inspire 2の専用SSD 480GBを5本分フルに収録すると合計2.4TBとなってしまいます。DITがいる現場では撮影済みのメディアと専用リーダーを預ける形で納品しまえば良いのですが、低予算でDITがいない場合など、撮影終了後に長時間のデータコピーとバックアップが待っています。撮影データの入っているCINESSDからの複製コピーやバックアップにはDaVinci ResolveもしくはRapidCopyを利用していますが、RapidCopyはデータのベリファイ機能とプログラム自体が軽量という事で大抵こちらを使うことが多いです。データを納品する際、オリジナルのデータからバックアップ機器にただ単に複製コピーをする方もいるようですが、もしデータの欠落などがあった場合、オフライン後の本編集時にデータ欠落で迷惑をかけてしまうので、ベリファイを実行することは重要だと考えています。ただ、ベリファイには単なるコピーよりも2倍近くの時間がかかるので、バックアップ用外付けのメディアは早ければ早いほど助かります。
CinemaDNG RAWのバックアップには一晩かかってしまっていた
CinemaDNG RAWで収録するとワンテイク毎に数千枚〜1万枚を超える連番ファイルが生成されます。この膨大な連番ファイルはデータのコピーにとても負荷がかかります。例えばフルに収録した480GBのCINESSD 3本を従来のHDDにバックアップする場合、合計1.44TBを一般的なHDDの速度の45MB/s程度で作業すると約8時間半となるので、これでは確実に一晩中かかってしまいます。この作業を「エクストリーム ポータブル SSD」でのスペック値最大550MB/sで計算すると約45分で終わるという計算になりますから、非常に期待が膨らみます。実際にはそこまでの速度は出ませんが、HDDよりも4倍以上早いことは確かです。
私の使用している数世代前のMacBook Pro 2015に「エクストリーム ポータブル SSD」をUSB 3.1 Gen 2の超高速転送ではなく、USB-C/USB-Aポートの変換ケーブルで接続。Inspire 2 で撮影したRAWデータ約55.89GB(もちろん連番ファイル)をRapidCopyでコピーとベリファイを実行してみます。実際に計測してみますと、一般的なHDDでは平均48MB/sの速度で、フィニッシュまで19分29秒という結果。
「エクストリーム ポータブル SSD 900GB」で実測してみたところ、USB 3.1 Gen 2接続ではないので約187MB/s程度しか速度が出ませんでしたが、5分04秒という結果が出ました。もし、先ほどのフルに収録した480GBのCINESSD 3本合計1440GBを180MB/sでコピーした場合を計算すると2時間半程度ということになりますから、HDDの8時間半と比べて随分と現実的な作業時間となりますが、それでも撮影終了後、その場で納品するためには2時間半居残って作業しなければならないので中々現実は甘くないということになります。
▲ベリファイコピーが可能なRapid Copyの画面。上はHDD。下はエクストリーム900にバックアップした場合の画面(MacBook Pro2015にUSB-C/USB-A変換ケーブルで接続)。転送時間を大幅に短縮できた。
性能を引き出すためにはUSB 3.1 Gen 2対応のモデルが必要
「エクストリーム900 ポータブルSSD 1.92GB」は850MB/sということになっていますから、上記のケースであればスペック上27分でフィニッシュする計算になります。流石にそこまでスピードは出ないとしてもできる限りの最高スペックで周辺環境は揃えたいものです。USB-AやThunderbolt 2しか搭載されていないモデルはもとより、USB-Cであっても最高速が出ないモデルもあるので一概には言えませんが、最新のモデルであれば先の計測データよりも1.5倍から2倍程度の速度が出るようなので、さらなる高速化を期待するならばUSB 3.1 Gen 2対応のMacBook ProやAirを利用するのが望ましいと思います。なので私もそろそろMacを買い変えたいです(笑)。RAW収録時代では、CINESSD 480GBを5本をバックアップするには最低でも2TBのSSDを複数台運用する必要があります。納品後のデータバックアップも一定期間保管する必要もあるので、さらに高速なバックアップ体制も必要なのですが、現状、作業に必要な容量を確保でき、時間を大幅に短縮できるなど様々な要因を考慮してもサンディスクのポータブルSSDを選ぶのがベストではないでしょうか。
◉遠藤祐紀(Yuki Endo)
ドローンカメラマン。 株式会社HEXaMediaに所属し、自身の空撮チーム【AIR FLEET】率いている。ギタリスト、Webプログラマー、BAR店主、ラーメン店経営など、Catch Allで様々な顔を持つ。TVCMからミュージックビデオなど様々な映像昨日の空撮を手がける。近年の作品にはSTU48『風を待つ』MVやJR東海『そうだ京都へ行こう 2018春』篇などがある。http://www.hexamedia.co.jp/
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