レポート 編集部 一柳
ビデオサロンではソニーストアでの映像クリエイター向けのワークショップやイベントなどを取材してきたが、特にソニーストア福岡天神はクリエイターどうしの交流が活発であり、かつクリエイターどうしが刺激し合い、競い合うような展開になってきている。
昨年、ウェビナーに登壇していただいた映像制作会社KAGEのNORIさんの企画として、KAGEが主催する映像作品展『ローカルから浪漫を掲げろ』がソニーストア福岡天神で1月23日〜2月3日に開催。こちらは映像展というだけでなく、甲冑着装の公開実演をおこなったり、特別な屋台空間を作ったり、華道家のインスタレーションがあったりと、映像というジャンルを超えた展示イベントとなっている。
実は同じくウェビナーに登壇していただいた株式会社リーボ REEVO Inc.もイベントを企画してきたが、彼らがプロデュースしたスペースは常設になっている。ソニーストア福岡天神のショールームはソニー機器の紹介に限定したスペースというよりも、全ジャンルのクリエイターが交流する場というスタンスになりつつある。



地方では珍しくソニーストアでBURANOとVENICE 2を展示!
2025年の11月29日(土)~12月28日(日)までの1か月間は、CREATORS JAMと題して、写真、動画のクリエイターがイベントを開催した。そのタイミングに合わせて、12月19日(金)~28日(日)の期間限定で、シネマカメラやハンドヘルドカメラなどプロフェッショナル機材の特別展示を実施した。
【 展示機材 】・BURANO・VENICE 2・PXW-Z200・HXR-NX800
特にBURANO、VENICE 2は地方では見られるところはほぼない状況。ただ福岡の映像クリエイターたちからは、一度触ってみたいという声が寄せられていたという。
ストアに入ってすぐのところにBURANOとVENICE 2を展示。通りはショッピングにきている人たちが行き交う場所。映画やドラマを撮影するシネマカメラが一番目立つところにあって、実際に映像をモニターに映し出していた。



BURANOを地方の短編映画制作で使った事例をもとにトークショー
CREATORS JAMの最後のイベントとして、BURANO展示期間とも合わせて、そのBURANOでプロモーション用の短編映画を制作した福岡在住の映像クリエイター、重田 瞬さんによるトークショーが開催された。重田さんは1997年生まれ。山口県柳井市出身。「人に寄り添う映像」をテーマに、ドキュメンタリーやコンセプトムービーを中心とした映像制作を行なっている。活動拠点としては福岡がメインだが、今回のムービーは小豆島の自動車販売会社、株式会社セブンティーオートからの依頼でプロモーションムービーを依頼されて制作したもの。手法としては、観光PR動画やインタビュー形式のドキュメンタリーなどがノーマルかもしれないが、あえて、短編映画を選択した狙いから、その企画と演出、具体的な撮影設計の裏側まで、同じように制作しているビデオグラファーにとっては参考になりそうな、かなり踏み込んだ内容のトークが繰り広げられた。


今回制作した短編映画『きみの車』
構成としては以下の二部構成。
■ 第1公演(企画・構成編)
『地方企業のプロモーションとしての短編映画という新しい表現手法』
観光PRでも企業紹介でもない。地域の“想い”を物語として描く短編映画という表現手法とは?
なぜこのアプローチを選んだのか、何を企画で大切にしたのか。映像で“伝わる空気”を作るための構成の工夫を語る。

このトークショーで印象に残ったのは、重田さんが企画・構成編で、プリプロの部分の舞台裏を懇切丁寧に解説していたこと。地方企業のプロモーションとして、短編映画がなぜ有効なのか、企業や地域の価値を映像で伝えるときに、単なる紹介ではなく、物語としての企画という選択肢が、なぜ有効なのかについて、言葉を尽くして説明していたこと。実はこの企画部分と、それをクライアントや周囲にプレゼンする能力というのは、制作する能力以上に重要かもしれないと思わされた。
■ 第二公演(機材・技術編)
『短編映画制作の裏側——BURANOとGMが支えた表現力』
限られたロケ条件でも“映画の質感”を実現したソニーのBURANOとGMレンズ。島の光、車内の空気、人物の距離感をどう切り取ったか。カメラとレンズの実践的な使い分けや撮影設計の裏側を解説。

BURANOを選択したのは、決してソニーからの依頼ということではなく、ふだんからFXなどを使用している重田氏が、今回の短編映画では、映画としてのクオリティを担保し、かつワンオペ(1人での撮影)での撮影できるということを考えてみずから選択した。重田氏がカメラマンでありディレクターという立場。レンズはオートフォーカスを生かすために、EマウントのGMレンズを中心にセレクト。メインはFE28-70mm F2 GMだったという。
後半はそれぞれのシーンを見ながら、どのように撮影設計をしていったのか、レンズ選びを中心に話が進んだ。
全体として企画段階から実際の撮影現場の様子、現場での判断や演出まで含めて、すべてを担当しなければならないビデオグラファーにとって有意義なセミナーだったと思う。単に予算があるから映画やドラマで使われているカメラを使えばよいということではなく、目的をもって機材やレンズを選ぶことが重要だということに言葉を尽くしていた。ソニーのラインナップがαからFX、BURANO、VENICEと選択肢のバリエーションは他の追随を許さないところだが、それはグレードの上下ということではなく、そもそも目的が違うということ。ビデオグラファーにとって「いつかはBURANO」という憧れの存在ということではなく、BURANOが生かせるコンテンツとはなにかを見極めて選択することが重要だろう。

