TASCAMライブストリーミングエンコーダー VS-R265 で4K LIVE配信をしてみた


REPORT◉駿河由知(株式会社スタートライン)
2006年より株式会社スタートライン設立。外務省、国連機関、国際NGOなどの国際会議やシンポジウム、企業イベントや音楽ライブなどのライブ配信を担当。

 

VS-R265は、より効率の良いHEVC(H.265)ビデオコーデックに対応した4K/UHD AV over IPストリーミングエンコーダー/デコーダー。4Kビデオストリーム(3840x2160p)の録画・エンコード・ストリーミング・デコードを同時にできるオールインワンの映像配信機器で価格は28万円。VS-R264(写真右/16.8万円)はその型番通り、H.264でのエンコードとなり、解像度はFull HDまでとなる。

 

 

どんな位置付けの製品か?

「STAY HOME」が叫ばれている現在、ビデオコミュニケーションの役割が注目されてきている。無観客でのライブ中継(音楽ライブ、セミナー、株主総会、新製品発表、記者発表など)は、この時期、効果的に活用している方々が多い。TASCAM ストリーミングエンコーダー/デコーダーVS-R265は、最大解像度4K/30pまで対応しているライブ配信用映像機器である。多くのライブ配信映像機器は、配信用ソフトウェア(OBS、Wirecastなど)をインストールしたPCに、ライブ配信用映像機器をUSBやThunderbolt経由で接続しライブ配信を行うことが一般的で、4Kライブ配信を行う場合は、高速グラフィックボードと4K映像取り込みインターフェイスを搭載したタワー型のハイスペックPC(ゲーミングPC級)が必要になる。配信者が4Kライブ配信を行う場合は、職人的な知恵(筆者も多くの現場の失敗から学んだ)からPCスペック、周辺機材、ケーブルなどシステムデザインを行わなければならないのが現状である。

VS-R265は、映像入出力、音声入出力、ネットワークインターフェイス、ライブ配信エンコーダ、同時記録(SDカードおよびUSB外部ストレージ)がすべで内蔵されたオールインワンパッケージ製品だ。大きな特徴は、VS-R265をPCに直接接続せずに、PCと同一の有線接続されたネットワークに接続するところだ。ネットワーク接続したVS-R265を、付属される専用ソフト「TASCAM DISCOVERY」を使ってVS-R265を選択し、Google Chromeなどのブラウザから各種設定が可能だ。

例えばYouTube Liveを行う場合、ブラウザが動くPC(低スペックでも大丈夫)さえあれば、4Kライブ配信が実現できる。(設定写真1/設定写真2)

【設定写真1】▲付属ソフトでIPアドレスを割り当てる。

【設定写真2】

▲VS-R265はエンコードで4K UHD解像度(3840X2160)を選択できる

 

VS-Rシリーズには VS-R264とVS-R265がラインナップされている。VS-R264は最大Full HDまで、VS-R265は最大4K/30pまでの対応の違いだ。型番にも表されている通り VS-R264は最大30MbpsのH.264 Long GOPエンコードを採用し、VS-R265はH.265ビデオコーデックに対応している。ともに100Mbpsまたは1Gbpsの標準ネットワークに接続可能だ。

 

 

4K配信をやってみた

今回は実際に4K YouTube Live配信をやってみた。機材構成もシンプル。人気急上昇中の4K CINEカメラSIGMA fpを直接VS-R265のHDMI入力に接続し4K/29.97pで配信した。設定もシンプルでストレスフリーな4K YouTube Live配信を行うことができた。特に好感を持てたのは、ライブ配信で重要な音声の入力が、バランス入力、アンバランス入力、HDMIエンベデッドの3種類から選択できるところだ。VS-R265には、ミキシング機能、ディレイ機能、リミッターやEQなどは搭載されていないため、TASCAMが得意としているマイク、ミキサー等の充実したラインナップから好みの音響機材と組み合わせることでシステムの拡張が可能だ。

▲音声入力はHDMIエンベデッド以外に、バランス音声、アンバランス音声を選択できる。

 

最も驚かされたことは、4K配信中のVS-R265本体からの放熱も少なく効率よくエンコードと配信が行われていたこと。YouTube Liveの設定方法も設定ブラウザから、YouTubeチャンネルを紐づけでき、ストリームキーによる配信、予約リストから配信が可能だ。(設定写真3 /設定写真4)

【設定写真3】

【設定写真4】

 

 

エンコーダーとデコーダー

SNSなどのインターネットライブ配信の利用用途の他に、ネットワーク内に接続されたVS-R265同士でエンコード→デコードが可能だ。また1対1や1対複数の接続も可能になる。企業、学校、商業施設などネットワークが構築されていれば、それぞれのVS-R265にIPアドレスを設定することで低遅延ライブ中継も容易に実現できる。

 

バランス入力のメリット

TASCAMは音響機器の老舗メーカーである。今回同時にテストで使用した12トラックレコーディングミキサー「Model 12」Bluetooth対応 3ゾーンオーディオミキサー「MZ-123BT」はどちらも音声のバランス出力を搭載したコンパクトな高音質のミキサーだ。複数人数が出演するトーク番組や小規模音楽ライブなどは、コンパクトなミキサーは必要不可欠になる。TASCAMブランドの音響機器は現場でも信頼性が高く、今回のバランス入出力でシステムを組むことができれば、特にノイズ対策のメリットが大きく安心できる。ただし、Euroblock (balanced)3.81mm ピッチの変換ケーブルは必要不可欠になるので写真を参照してほしい。

▲設備系の機器で採用されているユーロブロック(Euroblock」端子。省スペースでバランス入力が可能。XLRからEuroblockへの変換ケーブルが必要。

▲VS-R265はエンコーダーでもあり、デコーダーでもあるので複数台利用し、IPアドレスを設定して中継システムを構築することも。手前が今回使用したオーディオミキサーTASCAMのModel 12。

 

 

まとめ

実際に使用してみて、VS-R265は、1Uハーフラックサイズの筐体でタワーPC並みの処理能力があることに驚かされた。有線インターネット接続が必須になるが、安定した回線速度を確保できればコンパクトな4Kライブ配信システムの構築が可能になる。

専用回線を確保できればエンコーダーとデコーダーとしての利用用途も期待大である。これまで4Kで遠隔低遅延システムは1ペア数百万円のコストがかかっていたが、1ペア数十万円で実現可能になったことは本当に驚きだ。

 

 

VIDEOSALON 2020年6月号より転載