クラウドファンディング用の写真とムービーを FUJIFILM X-H1で撮る


 

Report◉編集部 Supported by FUJIFILM

 

奈良で生まれ育った堀川雄一さん。大学進学で上京し、就職した博報堂プロダクツでレタッチャーを務めた後、制作会社でフォトグラファー、レタッチャーとして活躍。4年前に奈良に戻ってきた。奈良が好きでいつかは戻ってきてこちらで恩返しをしたいと思っていたと言う。しかし、東京でやっていた仕事は持ってきていないため、最初は収入がゼロ。フォトグラファーとして関西で少しずつ活動しているうちに「写真だけでなく映像も何とかならないですか?」という依頼が増えてきた。しかし映像制作の知識はまったくない。そこで付き合いのあったプロショップの銀一に相談すると、大阪のシステックインターナショナルを紹介された。そこに手伝ってもらってなんとか映像の仕事もこなすことができるようになった。

そのシステックのスタッフがクラウドファンディングのプラットフォーム会社のMakuakeと一緒にコンテンツの映像制作をしていたのだが、単なる写真撮影、映像制作ではなく、企画、ライティング(文章)まで含めた一貫した制作が求められる。そこでトータルで制作全般を担える堀川さんに声がかかった。それから2年、関西を中心に40本以上のクラウドファンディングのコンテンツを制作してきた。当初は3か月に1件くらいのペースだったのが、今は1か月に2、3件。着実に件数が伸びている。

ビジュアルも当初は写真のみだったが、すぐに映像コンテンツを加えるようになった。解説動画ではなく、トップバナーに15秒から30秒くらいのCM的なダイジェスト映像を埋め込む。クラウドファンディングの案件は数が増え過当競争になっているが、映像を入れることによって見てもらえる率は高くなり、確実に効果があるという。

今回、堀川さんの撮影現場に同行した。和歌山県橋本市の米阪パイル織物株式会社が売り出したい「マユケット」という商品のクラウドファンディングの取材だ。スタッフはライターの中道達也さんと堀川さんの二人のみ。米阪社長と打ち合わせをした後、その「マユケット」を生み出した伝統と技術のある織物工場に入れてもらい、イメージを撮影していく。案内する米阪社長を中道さんが取材するのとは別に、堀川さんが自由に工場のシーンを切り取っていく。カメラは富士フイルムのX-H1にマンフロットの一脚、外部マイクというシンプルなスタイル。通常は現場音声を使わないことが多いのだが、今回は織物工場の織機の音がBGM的に使えるのではないかと予想し、アツデンのSMX-30で音も一応録っておこうと判断した。

 

■堀川さんの使用機材
X-H1(メイン)
X-E3(サブ)
XF16-55mm F2.8 R LM WR
XF23mmF1.4 R
XF35mmF1.4 R
XF56mmF1.2R APD
XF60mmF2.4 R Macro


 

このセットでスチルとムービーを同じカメラ位置で両方撮っていく。カメラの設定は、まずシャッターは1/60。これは関西だからシチュエーションを気にせず設定しやすい。それをベースに絞りとISOを決める。今回の工場内は絞りはF4、ISO800にした。X-H1の場合、ダイヤルでスチルとムービーのモードが切り替わるが、露出設定は同じで、フィルムシミュレーションはスチルとムービーで別設定にできるのがいいと言う。スチルはRAW+JPEGでフィルムシミュレーションは「クラシッククローム」。ムービーはフィルムシミュレーションが「エテルナ」で、シャドー-4、ハイライト-4、カラー-2。編集時にコントラストは調整するが、色はほぼこのまま。堀川さんはレタッチャーだから、当然色には強いこだわりがあり、映像でもグレーディング作業はしていたが、X-H1でのこの仕事は、完全に富士フイルムにおまかせすることにしたそうだ。

レンズはXF16-55mm F2.8 R LM WRのみ。本来は単焦点を使いたいのだが、現場は次々に進行していくので、交換している暇はない。ただ富士Xシリーズのズームは単焦点レンズ並みに綺麗なので、単焦点との差はまず分からない。そこもXシリーズのメリットだと言う。

 

米阪パイル織物(和歌山県橋本市)が作るマユケットのクラウドファンディングサイトのコンテンツを作る


▲マユケット:米阪パイル織物独自のパイル織による綿100%のブランケット。繭の形に似た「ウェーブ」に滞留する空気が温度調節をし、「軽くて薄いのに、あたたかい」を実現。

【織物工場内のムービーから】


▲米阪パイル織物の工場を見せてもらいながら、X-H1でスチルとムービーを撮影していく。ムービーは基本的にフィックス(一脚使用)。フィルムシミュレーションは「エテルナ」でコントラストは調整している。

▲4K動画から切り出したカット。

 

実は堀川さんはこの仕事を始めるにあたって、他社のシステムをまるごと売却して、富士フイルムのXシリーズに入れ替えた(当時はX-T2)。作例ムービーの色に感動したのと、単焦点レンズ、とりわけXF35mm F1.4Rの表現力、フィルムでアクロスなど富士のフィルムが好きで使ってきたので、そのフィルムシミュレーションで撮れるということで飛びついた。

もちろんスチルとムービーを同時にこなせる効率の良さも重要だ。地方でも高額なシネマカメラを借りてブランディング映像を撮るケースはあるそうだが、制作側の自己満足に陥っていることが多い。アウトプットを明確にした上で、機材や技術を選び価値訴求をしていかなければ、その後が続かない。

商品の「マユケット」はお借りして後日撮影する。現地で撮ろうとすると、ライティングシステムが必要になるからだ。小物であれば、以下で紹介している簡易スタジオでスチルとムービーを撮る。今回は羽織るものなので、家族を使ってイメージカットを撮ろうと思っている。

トータルの制作期間は1か月くらい。写真点数は20〜25点ほど使用。映像は編集担当の松尾さん(有限会社テクノトップ)に編集してもらい、15〜30秒くらいのダイジェスト映像を作る。最終的には文章含め、堀川さんがトータルディレクションをして、商品を買ってみたくなる=クラウドファンディングが成功するようにページを仕上げていく。

クラウドファンディングが広まった時代のWEB上の商品・企業広告といったら言いだろうか。新しいコンテンツには新しい制作スタイルと機材とノウハウが必要。今回の堀川さんとXシリーズの事例は実に無理がない制作スタイルに見えた。


▲新幹線の700系のシートの生地も担当しているという米阪パイル織物。その工場に入ってみると、様々な織機が各所で稼働しており、活気ある光景が広がっていた。堀川さんがイメージになりそうなところをスチルとムービーで切り取っていく。取材時間は通常はトータルでも1時間程度だが、米阪社長との話も盛り上がり、お昼やコーヒーを挟みながら、3時間くらいが経っていた。


▲ライター中道達也さん(左)に説明する米阪佳久社長。

 

 

商品撮影は持ち帰って自宅近くのスタジオで


▲ストロボを使った写真撮影。モデリングがついた状態(商品はダミー)。


▲商品撮影はマクロレンズXF60mmF2.4 R Macroを使用することが多い。


▲ムービー撮影時は同じ場所でライトをLEDライトに変更する。039のSh 50Pro-Vはバーンドア付きで光も切りやすく、スマホアプリで光量の調整もできる。


▲PELICANの中型ケースに余裕で収まるXシリーズのボディとレンズとマイクなど。レンズはXF16-55mm F2.8 R LM WR、XF10-24mmF4 R OIS、XF23mmF1.4 R、XF35mmF1.4 R、XF56mmF1.2R APD、XF60mmf2.4 R Macroなど。


▲ムービーでは商品を回転させたり、カメラを動かして角度をかえて見せると効果的。同じ動き、速度を実現するには、電動のモーションコントロールシステムがあると便利。これはエーデルクローンのSURFACE ONE。例えばカラーバリエーションがあっても、まったく同じ動きを再現できれば編集で繋ぐことができる。

 

動画はvimeoにアップしてトップバナーに入れる


▲堀川さんが手がけたクラウドファンディング用のムービーは堀川さんのvimeoのページで見られる。

 

◉完成したクラウドファンディングページ

 

堀川 雄一(HOLIGON)http://www.holigon.com/
米阪パイル織物 http://www.yyypile.com/
Makuake https://www.makuake.com/

 

ビデオSALON2019年2月号より転載