TEXT○一柳

富士フイルムから11月末に発売開始されたミラーレス一眼カメラ、X-Pro3は、フィルムカメラのようなデザインと撮影スタイルに立ち返ったカメラとして話題になっている。写真機としてのインプレッションはぜひこちらをお読みいただきたい。

ほとんどの一眼カメラで高画質な動画、しかも4Kで撮れるようになった今、動画的観点でもデジタル一眼カメラを評価しなければならないのだが、実際にはビデオサロンで取り上げる一眼カメラはかなり絞られてきてしまっている。なぜかというと動画ユーザーが使うカメラが完全に絞られているから。特にこれから導入しようという場合は特に。今ならソニーで言えばα6600、α7III、パナソニックならGH5とGH5S、S1H、ニコンはZ 6、富士フイルムならX-T3で決まり。動画を重視していないカメラをわざわざ動画ユーザーが使う意味はないでしょ? ということになる。たとえばパナソニックで言えばG9 Proはとてもいいカメラだけど、動画メインならGH5でいいし、S1RじゃなくてS1Hを選んだほうが後悔しない。

そこでFUJIFILM X-Pro3なのだが、これは完全に写真ファン向けのカメラ。X-Proシリーズの3世代目だが、そのコンセプトをさらに押し進めて、液晶パネルはデフォルトでは閉じられていてモニターを見ながら撮影することはできなくはないが、想定していない(やりにくい)。開くと液晶になる部分にはカラーメモリ液晶の窓があり、そこにフィルムシミュレーションの種類とISOデータが表示される。昔々フィルムの箱を切り取って詰めてフィルムの種類とISOがすぐに分かるようにしておいた行為をデジタルで再現したアイデア。ということで、X-Pro3はまったくもって動画を意識していないカメラなのだが、ニコンDfのように動画記録機能を排除するということはなく、ちゃんと4Kムービー(DCIとUHD/30p)を撮影できる。

エンジンはX-T3と同世代なので、潜在能力的には同じ画質が出せるのだが、いくつか制限があるので、それをここで整理しておきたい。

●HEVC(H.265)が選択できないので、10bit記録に対応していない。

●連続記録時間は4K時は15分、HD時は約59分。

●HDMI出力端子はなし。

ということで、わざわざX-T3ではなく、X-Pro3を選ぶ理由はないということになるのだが、個人的にはX-Pro3にカメラとしての魅力を感じてしまうので、動画の画質はどうなのか少しだけ試してみた。

やはりセンサーとエンジンはX-T3と同じものだけあって、FUJIFILMの精細な4Kムービーの印象はそのままだった。FUJIFILMの特徴であるフィルムシミュレーションは静止画も動画でもそのまま同じ感覚で使えるのだが、X-Pro3で新たに加わったのが、「クラシックネガ」。これはムービーで使っても面白そうだと思った。ぜひ、X-T3にもファームアップで採用してもらいたい。

 

FUJIFILM X-Pro3の情報サイト

https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/cameras/x-pro3/