ソニーモバイルコミュニケーションズは4月16日、2019年初夏に発売を予定する次期フラッグシップスマートフォン「Xperia 1(エクスペリアワン)」を報道関係者向けに国内初披露した。Xperia 1は今年の2月にスペインのバルセロナで開催された「MWC19 Barcelona」で発表されたもの。

Xperia 1の最大の特徴は「21:9」というアスペクト比(縦横比)のHDR対応6.5インチ有機ELディスプレイを採用している点。これは映画で使われている「シネマスコープ」のアスペクト比「1:2.35」を参考に算出されたもので、シネスコサイズの映像をほぼそのまま画面一杯に表示することができる(21:9は約1:2.33)。

「何で縦長なんだ?」と思った方もいるかもしれないが、それは映画の鑑賞や撮影を楽しむため…ということになる。このように今回のXperia 1は、クリエイターにとって必要な機能を搭載するために、ソニーがこれまで培った技術をいちから積み上げた、まったく新しいスマートフォン。従来のスマートフォンがスマートフォンという土台の上に動画撮影機能を付加していった…という設計思想とは根本から異なっている。

トリプルレンズカメラ

動画撮影機能だけに注目しても、注目点がたくさんある。まず、まるでレンズ交換が可能になったような感覚を味わえる3つのカメラ「トリプルレンズカメラ」を採用した点。内訳は超広角の16mm/F2.4、標準の26mm/F1.6、望遠の52mm/F2.4の3つで、それぞれ約1220万画素。この内、光学式手ブレ補正には26mmと52mmが対応している。

スマートフォンの中には感度を稼ぐために複数のカメラユニットを搭載するモデルもあるが、Xperia 1はあくまで3つの焦点距離を手に入れるための採用。これらは使用するカメラアプリによって挙動が異なり、通常のカメラアプリでは16mmは単焦点扱いだが、26mmと52mmのカメラユニットは電子ズームに対応させることで、26mmから52mm間を、そして52mmから260mmまでを電子ズームで補完するズームレンズとして機能する。

それが後述するシネマ撮影機能「Cinema Pro」では電子ズームはあえて機能させず、3つの単焦点レンズを意図的に切り替えながら撮影させるスタイルにしている。そのため、撮影中のレンズ切り替えはできないが、デジタル一眼での撮影と思えば、そういうものだ。

シネマ撮影機能「Cinema Pro」搭載

映画撮影を手軽に体験できる専用アプリ「Cinema Pro」を搭載してる。このアプリはソニーのCineAltaカメラ「VENICE」譲りのLookとインターフェイスでシネマスコープ撮影できるもの。8つのフィルムライクな「Look」設定を搭載し、さらに、インターフェイスはVENICEの標準インターフェイスをそのまま採用したという。シャッタースピード表示もシャッター角度表示にするなどのこだわりよう。

Cinema Proで撮影できるのは、あくまで21:9のシネスコサイズのみ(16:9などは設定できない)。4Kなら「3840×1644」、2Kなら「2520×1080」という解像度から選択できる。フレームレートは23.98fpsと29.97fps、記録形式はビット深度は10bit、コーデックはHEVC、ガンマはHLG、色空間はBT.2020となり、ダイナミックレンジの広いHDR撮影を基本としている。S-Logは非採用。

選択できるLookはCinaAlta開発チームの知見を取り入れて決めたもの8種類を搭載。デフォルトは「VENICE CS」というLook設定で、カラーグレーディングまで考慮するなら、このLookがおすすめという。その他は適用したままで楽しむ設定で、ストーリー性を感じられるLook(たとえばホラーなら青みがかった設定)という具合に選択して活用してほしいという。用意されている設定は「Opaque/BU60YE60」「Bright/BU20YE60」「Warm/YE80」「Strong/BU100」「Cool/BU60」「Soft/YE40」「Soft Monochrome」の7種類と、Lookをオフにできる「N/A」も用意されている。

ここまでくると「オリジナルのLUTを適用できる?」と期待する人も多いと思うが、残念ながら非対応。あくまで小さな撮像素子を使った動画撮影…という点は避けられない事実なので、大判カメラと同じように考えても無理があるのかもしれない。

マニュアル撮影ももちらろん可能で、マニュアルフォーカス時にはピント位置に印を付けられる「マーカー」機能にも対応する。

その他の注目機能

技術的には、スマートフォンでは世界初となる「瞳AF」に対応したほか、光学式手ブレ補正に対応する26mmと52mmレンズでは光学式+電子式の「ハイブリッド手ブレ補正」に対応し、デモ映像を見る限りでは、かなり有効だった。

低照度時に有効なノイズリダクションでは、YUVに変換する前のRGB画素のRAW段階でノイズを除去する「RAWノイズリダクション」を採用している。RAW段階で処理するほうが相関がとりやすく、ノイズを除去するには理想的な方法だそうだ。

スマートフォンとしては世界初となる4K有機ELディスプレイを搭載し、「クリエイターモード」という画質設定も採用している(設定で切り替える)。10bit入力対応とBT.2020色域と合わせ、マスターモニター的な使い方も可能にするまで性能をつきつめたという。

その実力の応用として、2019 NAB Showでコンセプト出展されたVENICEとXperia 1とを無線接続し、サブモニターとしてXperia 1を活用する使い方もデモしていた。ワイヤレス接続のため遅延も想定されるが、ヘアメイクさんなどが撮影部の間に入らなくても画面を確認できるなど、モニターする用途によっては充分利用できるシーンはありそうだ。

同時に、小型のHDRモニターとして使う用途も想定したデモをソニーのマスターモニターと共に展示していた。HDR表示は動画のメタデータに対応し、HLG形式ならHLGで、PQ形式(HDR10)ならPQで表示できる。輝度が何nitsなのかは公表されなかったが、手動でチャートを見ながら画質を調整する機能も用意するなど、やはりただのスマートフォンではなさそうだ。

まとめ

6.5インチという大きな画面を持つスマートフォンにしては、持った感じは軽く(約178g)、縦長画面も横で構えた時に持ちやすくスマート。値段はまだ分からないが、許されるものなら1台所有したいと思わせる製品力があったと思う。発売が今から楽しみだ。(編集部・佐山)