8月2日に発売となったソニーのVLOGCAM「ZV-E10Ⅱ」。ビデオグラファーのOGAHARUさんにレビューを依頼したところ、記事の執筆に合わせてVlog形式でテスト動画を制作してくれた。Vlogは初心者ユーザーのリアルな機材事情を考慮し、キットレンズE PZ16-50mm F3.5-5.6 OSS Ⅱのみ、NDフィルターなしという条件下で撮影されたという。その仕上がりとユーザー目線の使用感をぜひチェックしてほしい。

レポート●OGAHARU(色彩-SHIKISAI-

はじめに

ZV-E10ⅡとパワーズームレンズキットでセットになっているE PZ16-50mm F3.5-5.6 OSS Ⅱ。価格はオープンで、パワーズームレンズキットのソニーストアでの販売価格は163,900円~

「ZV-E10Ⅱ」はソニーが8月2日に発売した新しいVLOGカメラです。ZV-E10シリーズは今作で2機種目ということで、前作の「ZV-E10」が発売されてから約3年ぶりの発売となります。レンズ交換も可能で、コンパクトながら高精細で美しい映像を撮影できるのが特徴的なカメラです。

今回は「ZV-E10Ⅱ」のパワーズームレンズキットのみを使用してシネマティックなVlogを撮影してきました。その際感じたことを伝えさせていただければと思います。もし良ければ実際に撮影したテスト動画もご覧ください。

 

ファーストインプレッション

初めてこのカメラを手に取った時「めちゃくちゃ小さくて軽いな」と思いました。僕が普段ソニーのシネマカメラであるFX3やα7Cを使っているのもあると思いますが、かなりコンパクトな印象を受けました。

左:iPhone 15 Pro Max、右:ZV-E10Ⅱ

 

また、グリップのホールド感がかなり良いです。ボディの持ちやすさは意外に重要で、カメラを落としにくくなるのはもちろん、疲れにくいという利点もあります。今回はキットレンズを使用したのでレンズも軽量なのですが、仮にレンズを重たいものに変えて長時間撮影したとしても安心して撮影することができそうです。

グリップ部分を上部から撮影

 

そして、SDカードスロットが左側についているのも嬉しい点だと思います。前モデルは底面のバッテリー部分に一緒に収納するスタイルだったようですが、底面ってなにかと干渉しがちなので左側に独立でスロットが付いているのは嬉しいです。

SDカードスロットの位置は前モデルから変わり左側になった

 

あと、これは余談ですが付属のウィンドスクリーンがモヒカンみたいでかわいいです。撮影中に何度か撫でました。

 

ZV-E10Ⅱで撮ったVlogをチェック!

今回のレビューに合わせ、OGAHARUさんが制作したテスト動画。レンズキットのE PZ16-50mm F3.5-5.6 OSS Ⅱのみで撮影している。S-Log3で撮影し、ソニー公式が配布している3D LUT「S-Gamut3 & S-Gumut3.cine/S-Log3(Rec.709)用」をのせ、一部明るさを微調整した。特別なカラーグレーディングなどはしていない状態なので、「ZV-E10Ⅱのパワーズームレンズキットでどんな映像が撮れるのか」おおいに参考になるはずだ

 

レンズキットだけで撮影した理由

僕は普段からソニーのカメラを使用しているのでレンズもいくつか持っているのですが、あえてレンズキットに含まれている「E PZ16-50mm F3.5-5.6 OSS Ⅱ」のみを使用して今回撮影してきました。NDフィルターも使っていません。

このレンズのみで撮影したのには理由があります。僕が初めてカメラを買ったのは中学3年生のお正月で、右も左も分からず、とりあえずかき集めたお年玉でカメラとレンズがセットになっているレンズキットを購入しました。僕だけかもしれませんが、初めてカメラを買う時ってだいたいレンズキットを買うと思うんです。誰しもが通る道みたいな…(笑)。

同じような境遇の方がこの記事を読んでくれる可能性を想定し、安易に高いレンズやNDフィルターなどの追加の機材をつけて撮影するのはあまり参考にならないかなと思い、この選択をしました。

 

実際に撮影してみて

とにかく映し出される映像の綺麗さに驚きました。

ボディがコンパクトなのに記録される写真や映像はとても迫力があり圧倒されるという…。これも新しいイメージセンサーと最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」が搭載されたことによる恩恵だと思います。個人的には4K60p 4:2:2 10bitでの記録ができる点がとても嬉しいです。α7Cをメインで使っていたことがありますが、8bit記録なので色の編集時に出したい色が出なかったりして、もどかしい気持ちになっていました。ZV-E10Ⅱはそのもどかしさがまったくありません。

キットレンズE PZ16-50mm F3.5-5.6 OSS Ⅱのみ、NDフィルターなしという条件下で撮影されたVlogから抜き出した画像
上記と同様の条件で撮影したVlogより

 

また、動画と写真の切り替えを物理的に行える点もとても嬉しかったです。撮影したい瞬間は意外と突然くることがあるので、わざわざメニューを開いてモードを切り替えるよりは、物理的に今のモードが把握できてワンアクションで動画と写真を切り替えることができるのはとても助かります。

撮影モードは、右側のスイッチによる切り替えで静止画/動画/S&Qをすばやく選択できる

 

センサータイプが裏面照射型になったことが影響していると思いますが、夜間での撮影がある程度ディテールを残したまま記録できていて驚きました。

Vlogの抜き出し画像。APS-C裏面照射型Exmor R CMOSセンサーを搭載している

 

そして、思いの外嬉しかったのは美肌効果です。これは前モデルでも搭載されていたようなのですが、今回は美肌補正ON時の色調の表現がアップしたそうで、髭剃り負けした肌もギリギリ隠せるくらいには綺麗に補正してくれています。

同じくVlogの抜き出し画像。「美肌効果」はOFF / LO / MID / HIの4つから、段階ごとに設定可能

 

様々な条件で変化する画角

非常に簡単に綺麗に撮影できるカメラなのは分かったのですが、少し気になる点があったのでお話しします。それは、設定によって画角が狭くなってしまうという点です。

設定ごとの画角の変化。比較しやすいように、画像の色味に微調整を加えている

今回レンズキットにこだわって撮影しましたが、16-50mmという焦点距離は少し足りないと感じました。どう足りないかというと、広角側の16mm(35mm換算で24mm)だと自撮りするには少し狭いかなといった印象です。動画内でも結構顔が近かったと思います(笑)。

実は撮影を通して、ZV-E10Ⅱの電子手ぶれ補正は基本的にはアクティブで使用していました。というのもスタンダードだとぶっちゃけ補正力が足りないと感じたからです。これは別売りのシューティンググリップで距離をとったり、もう少し広角のレンズに変えることで解決はしますが、メーカーが売り出しているレンズキットだったので少し残念な印象です。

 

まとめ

Vlog撮影時の様子

今回実際にシネマティックVlogをZV-E10Ⅱで撮影してみて、率直にめちゃくちゃいいカメラだなと思いました。最新の処理エンジンを積んでいて、かつ軽量コンパクトで4K60pの10bit撮影ができるという点だけでかなり贅沢な製品だと思います。

今回紹介した機能以外にも、写真や映像の色味をカメラ内部で変えられるクリエイティブルック機能が充実していたり、内蔵マイクの指向性を変更できたりと細かなニーズに寄り添った機能が盛りだくさんです。

僕が今中学生時代に戻るとしたらこのカメラをスタートにすると思います。ただ楽しむのも良し、写真や映像を深く探求するのも良し、そんな多くのポテンシャルを秘めている素晴らしいカメラだと思います。