【映画作家主義】ふるいちやすし 第16回スチルカメラマンが陥りやすい シャッタースピードの間違いとキーアングルの罠


ふるいちやすし プロフィール
脚本、監督、撮影、編集、音楽を一人でこなす映画作家。モナコ国際映画祭:最優秀撮影監督、脚本、音楽、アートフィルム賞。ロンドンフィルムメーカー国際映画祭:最優秀監督賞。アジア国際映画祭:最優秀監督賞。最新作『千年の糸姫/1000 Year Princess 』はアメリカSMGグループから世界配信中。

 

第16回スチルカメラマンが陥りやすい シャッタースピードの間違いとキーアングルの罠

こまで動き、カメラワークについて書いてきたが、一つの区切りとして、最後に特にスチルカメラマンが陥りやすいポイントを上げておこう。最も多いのがシャッター速度に対する誤認識で、プロのスチルカメラマンでさえ、誤った認識のまま動画を撮っているケースを度々見かけてしまう。多くのカメラを動画モードにするとデフォルトのシャッター速度は1/60になるが、それはなぜなのか? この際、ビデオグラファーの皆さんも改めて確認してほしい。そもそも一枚の静止画を見せるのとは違い、動画は1秒間に30枚の静止画をパラパラマンガのように見せるものと決まっている。これが30p(プログレッシ)。この一枚をくし型にさらに2つに分け、動きを滑らかに見せようとするのが60i(インターレース)というテレビ放送が採用している方式で、このメリットを最大限に活かすには一秒間に30枚の2倍、1/60の細かさで動きを読み取る必要があるのだ。なので30pや24pで撮る時は理論上はそれぞれ1/30、1/24秒が最適なシャッター速度となる。

ところが、例えば明るい場面で絞りを開けたい時や、被写体の動きが速い時など、平気で1/500、1/1000とシャッター速度を上げてしまう人が少なくない。そこはサングラス(NDフィルター)を使ってでも光量を減らし、最適なシャッター速度にしなければならないのだ。そうしなければフレーム間に隙間ができてしまい、滑らかな動画にならないし、最悪、変なチラつきが生まれてしまったりする。ただ経験上、1/100くらいまでは上げてもチラつきは目立たないと感じているが、これはあくまで個人的な考えだ。皆さんも自分の目で経験を積んでほしい。もう一つ、シャッター速度を上げたくなる理由は、ブレのないスクリーンショット(動画から切り出した静止画)が欲しいという場合だろう。特にHDや4Kで撮ったものなら、解像度的にはWebや小さな印刷物に使えるからだ。結論を言えば、そんな時はやはり動画とは別に速いシャッター速度で静止画を撮影しておくべきだ。

もう一つのポイントはスチルカメラマンとビデオグラファーとの生理的な感覚の違いと言ってもいい。例えば最高のアングル、キーになる構図を見つけた時に、多くのスチルカメラマンはすぐにそこから録画を開始するのに対して、私はどこからその構図に“来る”べきかを考える。もちろんそんなことをしているとチャンスを逃してしまうので報道や記録には向かない考え方だが、カメラが動いて最後にキーアングルで決まるというのが基本なのだ。キーアングルからだんだん外れて行くというのは、不安感や浮遊感を表現する特別なカメラワークだと言える。

もちろん、そのシーンの前後のカットがどういうものかにもよるのだが、ただ美しいものに飛びつくのではなく、いつも完成した編集を意識して最適なカメラワークを選択するということが映画の撮影には求められる。綺麗に撮ったつもりでも、いざ編集する段になって、「ああ、このカットは右から動かして来るべきだった!」などということがあるもので、私もそういう失敗と試行錯誤を繰り返すことによって、カメラワークとその設計図とも言える絵コンテの重要性を学んで来た。映画にとって重要なのは流れであり繋がりだ。スチルカメラマンの優れた構図感覚を活かすも殺すもそれ次第。“動き”に関しては一から鍛えるつもりで臨んでもらいたい。

シャッタースピードの違う動画を比較して見てみる

連続したフレーム。一枚ずつを静止画として見てみると、どう考えてもシャッタースピード1/1000秒のほうが正解に見えるだろうが、走らせてみると1/30秒のブラーがフレーム間を補完し、滑らかな動きに見せる。逆に1/1000のほうは間が写っていない、飛んでいるとも言え、これがおかしなチラつきになる。

KEYになるフレームからカメラワークを始めない

キーになるアングルをカメラワークの最後に持って来るのが基本と言える。逆にキーアングルから始めて外していくと、不安定感、浮遊感を演出することになる。(女優:平間 枝里香)

 

 

ビデオSALON2019年7月号より転載