インハウス動画制作の現場から〜社内ビデオプロダクションのススメ〜第5回株式会社ジャパンベンチャーリサーチ


インハウスの動画制作が進んでいる背景として、制作ツールの入手が容易になったことが挙げられる。
最新機材やソフトウェアの多くは初心者でも扱いやすく、以前よりもはるかに安価で入手できる。
「だったらやってみよう」と動画コンテンツを内製化し、ライブ配信にも挑戦中のジャパンベンチャーリサーチが提供する「ami」というサービスを紹介する。

取材・文・構成●矢野裕彦

 

株式会社ジャパンベンチャーリサーチ
http://jvr.jp
https://ami.live

 


▲ジャパンベンチャーリサーチの佐久間 衡 代表取締役(後列右から2番目)と、起業家を紹介するライブ配信サービス「ami」の制作スタッフ。スタート時に動画の専門家はおらず、カメラや編集ソフトの操作も一からの挑戦だった。毎日のライブ配信のほか、録画した動画を編集してショートムービーの作成なども行なっている。

 

 

マーケティングツールとしての動画コンテンツの必然性

今回話を聞いたのは、UZABASEグループの株式会社ジャパンベンチャーリサーチを率いる、佐久間 衡氏。現在同社では、「起業家の挑戦を応援する社会」の実現を目指したビジネス展開を進めている。

ジャパンベンチャーリサーチが提供する「ami」は、起業家にフォーカスした動画配信サービスだ。ユーザーは、同名のスマホアプリをインストールしてアカウントを作成すれば、サービスを受けられる。動画に登場するのは、さまざまなジャンルの起業家の人たち。現在は、なぜ起業するに至ったのかを起業家が語るストーリー動画と、インタビュー形式で進められるライブ配信の2種類のコンテンツが提供されている。登場する起業家をフォローすることで、視聴者と起業家が手軽につながることができる仕組みだ。起業家と視聴者をつなぐ手段として動画を選択したわけだが、その理由は、動画こそが有効なコミュニケーション手段と考えたからだ。

「先般、Twitter広告の動画の割合が50%を超えたという報道もありましたが、私があらためて語るまでもなく、マーケティングにおける動画の需要はこれまでになく高まっています。扱わない理由がないですね」

おそらくここまでの考えは、特にマーケティングの文脈では誰しもうなずける内容だろう。しかし「誰がやるのか」という部分が、動画の内製化を目指す多くの企業で課題となっている。同社のスタッフにも動画の専門家はいなかったが、当初からインハウスでの制作が基本的な考えだった。現在の動画制作周辺の事情を考慮すると、「動画を内製化しないという選択肢はない」というのが、佐久間氏の考えだ。

「今、動画制作をインハウス化するには絶好のタイミングだと思います。撮影機材に関しては、デジタル一眼カメラを選べば、プロと同じ道具で撮影できるし、編集ツールもプロと同様にAdobe Premiereを選択できます。いずれも導入コストはリーズナブルで、ハードもソフトも多機能な上に素人でも使いやすくなっています。つまり、道具自体の差は、あまりないのです」

機材や編集ソフト導入のハードルが下がり、ソフト自体も使いやすくなっている状況は、動画制作のインハウス化への入口が、すでに開かれていると言えるというわけだ。

「あとは、『迷ったら挑戦する道を選ぶ』という、UZABASEグループのスタンスで実行に移しました」

 

◉起業家の生きた言葉を毎日のライブ配信で届ける「ami」

ライブ配信は、スマホアプリ「ami」を介して視聴する(iOS版のみ。Android版は準備中)。メディア露出や情報発信が難しい創業したばかりの起業家のインタビューを見ながら、リアルタイムでコメントを投稿したり、拍手ボタンをタップしたりできる。気になる起業家の「サポーター」になることで、投稿される情報などを継続的にフォローできる。なお、起業家として登録し、ライブ配信に参加することもできる(要審査)。https://ami.live

 

 

人を中心に据えて共感を得やすいライブ配信に

amiは、インタビュー動画が中心のコンテンツ構成だ。起業家というニーズの限られたジャンルを動画で掘り起こす理由について、佐久間氏は次のように語る。

「ニッチなジャンルにフォーカスしたものであっても、動画は効果的なんだなという手応えはあります。動画にはマスのイメージがありますが、SNS広告などは特に行動解析を利用したターゲティングもできるので、ニッチなジャンルでも効果的に利用できます。その傾向は、今後ますます強くなっていくと思います」

それに加えて、動画のモチーフで重要なのが「人」なのではないかと、佐久間氏は考えている。従来のマーケティング系の広告動画は、スライドショーやアニメーションが多用される傾向があった。

「でも、人はリアルな人を見たいんじゃないかと思うんです。多くのテレビCMに人が出てくるように、人に焦点を当てた動画は、ブランディングであれ、マーケティングであれ、効果的だと考えました」

最近は、マーケティング全般における「共感」の重要性が高まっている。ストーリーマーケティング、ナラティブマーケティングというキーワードで語られる、個別のユーザーの反応の獲得には、ビジネスライクなスライドショーの動画などではなく、人が登場するコンテンツが有効というわけだ。ライブ配信というスタイルを取ったのも、その共感の高まりを最大限に生かすためだ。

また、ネットを介したライブ配信のメリットもある。セミナーなどのリアルイベントは、「その場を共有している」というネットでは得がたいメリットはあるものの、規模次第ではデメリットも出てくるという。

「会場に実際に人が集まるイベントでは、人数が増えると場の熱が高まらず、むしろ冷めてしまうという問題があります。私も人前で話すことはあるのですが、300人とかを超えると、こちらに届く反応は薄くなるし、最後に質問を募集しても出ないなんてこともあるんです。そうなるとお互いに苦痛です(笑)。しかし、ネットを介した動画のライブ配信では、人数が増えれば増えるほど、拍手機能やコメントなどのリアクションが増え、盛り上がります。アプリ上だと盛り上がりが可視化されるので、出演者にも参加者にもそれが伝わるんですよね」

また、会場型のセミナーでは、参加者が登壇者の情報をフォローしたり、実際に応援したりするまでにはステップが何段階もあり、具体的なアクションにつなげることが難しい。アプリ上では、話を聞いて気持ちが盛り上がり、熱が高まった状態ですぐにフォローできるというのもメリットとなる。

 

 

毎日ライブ配信をしながら機材と技術をステップアップ

「とりあえずやってみよう」で始めたライブ配信だったが、佐久間氏のチームは、ライブ配信に関してももちろん初心者だった。実際に動画のライブ配信をやってみると、やはり苦労する点が多々あった。

「実際に始めてみると、課題が山ほど出てきました。最初は、Wi-Fiとスマートフォンで何とかなるんじゃないかと思っていたので(笑)」

毎日ライブ配信していることもあり、経験知は見る間にたまっていったようだ。機材の選択やソフトの使い方など、周囲のアドバイスも受けながら、どんどん見直していった。

「手軽に始めるはずでしたが、やはりデジタル一眼カメラを導入し、スイッチャーがあったほうが絵がいいので導入し、コンデンサーマイクでは音が拾えないのでピンマイクを導入し、という感じで、機材回りはすぐにアップデートしていきました」

機材や環境はそろいつつあるとはいえ、まだ万全の体制というわけではない。この段階まで来て強く必要性を感じているのが、動画のプロの存在だという。

「ライブ配信は、事後編集できる動画と違って、リアルタイムでのクオリティのコントロールがとにかく難しいです。機材と努力でカバーできる状態までは持ってくることができたと思いますが、さらなるステップアップのために今必要なのは、撮影を取り仕切って、さらに編集できる動画のプロですね。現在、絶賛募集中です」

amiの正式サービスが始まったのは2018年10月。まだサービスインしてからまだ日が浅く、課題は多く残されている。

「機材のセットも見えてきたし、アプリも日々改良を続けています。あとは毎日ライブ配信して、トライ&エラーを繰り返し、進化していくだけです。とにかく、ライブ配信に参加してくれた起業家の方々が、みんな一様に『楽しかった』と言ってくれてるんですね。この点を含めて、起業家のライブ配信というパッケージに手応えを感じています」

起業家のスピリットをリアルに伝え続けるamiは、配信スタッフのスタートアップスピリットに支えられ、今日もライブ配信を続けている。

 

◉40回のライブ配信を行いながら2カ月間で制作環境を構築

当初はカメラ一台、マイク一台で挑もうとしたライブ配信だが、回線や絵柄の不安定さ、単調なカメラワークなど、さまざまな課題が突きつけられる。2カ月で40回のライブ配信という短期集中の実地経験の中で、スイッチャーやデジタル一眼カメラといった必要な機材を導入しつつ、スタッフも知識と技術を獲得していった。

 

◉スタジオはシェアオフィスの会議室

平日の正午から毎日実施するライブ動画配信は、シェアオフィスの会議室を借り切って行なっている。コンパクトな機材構成なので短時間で簡易スタジオを構築可能で、15分のライブ配信後の撤収もスムーズ。

 

◉ゲスト単独の画と引き画用に2台のソニーα7 IIIを固定

カメラ/レンズ
▪ソニーα7 Ⅲ×2台
▪ソニーSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA.
▪ソニーVario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS

 

スイッチャー
▪ローランドVR-4HD

 

マイク
▪RODE Filmmaker kit(ワイヤレスラベリアマイク)

 

配信機材
▪MacBook Pro+Wirecast

 

三脚
▪ベルボンBK-3300(三脚)+PHD-66Q(雲台)
▪スリックAL-TIM330E(三脚+雲台)
※縦位置で動かさないのでスチル用三脚を使用

 

 

ビデオSALON2019年2月号より転載