クリエイター視点の国際映画祭Q&A Vol.2『若手監督から見た東京国際映画祭とは?』



画像提供:東京国際映画祭 (c)2018 TIFF

日本のインディペンデント映画をフィーチャーした東京国際映画祭(以下、TIFF)の「日本映画スプラッシュ」部門。国際映画祭初体験の若手監督が多い同部門だが、クリエイターの海外展開の“第一歩”としてどのように機能しているのか?

 

答えてくれたのは
TIFF2018日本映画スプラッシュ部門に出品した
高橋賢成監督 『海抜』
日原進太郎監督 『僕のいない学校』
穐山茉由監督 『月極オトコトモダチ』


▲(左)1996年北海道出身。城西国際大学メディア学部の卒業制作作品『海抜』が、最年少の22歳でTIFF出品を果たす/(中央)1980年大阪府出身。中編映画『春夏秋冬くるぐる』が第33回PFFアワード2011の準グランプリを受賞。本作が自身初の長編作品/(右)1982年東京都出身。映画美学校の修了制作作品『ギャルソンヌ-2つの性を持つ女-』が第11回田辺・弁慶映画祭で入選。『月極~』は11月17日(土)より開催の「MOOSIC LAB 2018」長編部門でも上映。
画像提供:東京国際映画祭 (c)2018 TIFF

 

Q1 TIFFへの初参加の率直な感想は?

A. 「日本映画スプラッシュ部門のゲストは、みんな六本木ヒルズにある部屋の大広間で待機してたんですけど、その部屋のモニターに映し出されるレッドカーペットのライブ映像を見ていても、『これからあそこを歩くんだ』という現実味がなさ過ぎて(笑)。それに、人生であんなにたくさん写真を撮られたのは初めてでした。カーペット上で、『Sea(『海抜』の英題)』と書いたホワイトボードを持ったアメリカのケーブルテレビ局の方に呼び止められたのが、初めての海外取材になりました」(高橋監督)

「レッドカーペットを歩くこと自体が初めてだったので、あの神々しさは想像以上でした。あの非日常感で、『本当に国際映画祭に来たんだな』って実感できたかもしれません。でも、ぶっちゃけ記憶がないです」(穐山監督)

「出品作『僕のいない学校』の企画書にも書いてあるんですが、TIFFへの出品を目標にしていたので、まずは目標達成…と言いたいんですけど、レッドカーペットを前にして妙に冷静な気持ちで。ここはスタートライン、また次の目標に向かって歩かなくてはならないんだ、と感じていました」(日原監督)

▲終始笑顔だった『海抜』チーム


▲華やかな装いの『月極オトコトモダチ』チーム


▲写真撮影に応じた『僕のいない学校』


▲総勢39名!『21世紀の女の子』チーム


▲映画祭アンバサダーを務めた松岡茉優

▲『カメラを止めるな!』はJapan Now部門に出品


画像提供:東京国際映画祭 (c)2018 TIFF

 

Q2 TIFFにエントリーした経緯は?

▲高橋賢成監督
画像提供:東京国際映画祭 (c)2018 TIFF

A. 「PFFやゆうばり国際ファンタスティック映画祭、田辺・弁慶映画祭へのエントリーを考える人が、自主映画の監督たちの間では多いと思うんですが、自分はTIFFしか考えていませんでした。北海道から大学進学のために上京したんですが、毎年TIFFに通い詰めたおかげで、映画を見る目が養われたと心底思っています。在学中からいつかTIFFに行きたいとずっと思っていて、20代で出品できたら良いなと仲間内でも話していたんです。今回の卒制作品である『海抜』も、企画段階からエントリーすると決めて制作していましたが、絶対通るわけないと思ってました。

もちろんエントリーが長編のみというハードルはありますけど、(国内作品のコンペティション部門として)TIFFはフラットに作品を選出してもらえる映画祭だなと、身をもって実感しています。

選考結果を伝えられた後は、TIFFから一部のサポートを受けながら、ポスターや英語字幕入りの本編素材(DCP)を準備したり…。以前、短編の時には自分で作ったりもしましたけど、今回は初めて英語字幕を業者に発注したり、学生という特権も活用しながら何とか納品にこぎつけました」(高橋監督)


▲「レッドカーペットの雰囲気が、アウェー過ぎて逆に痛快だった」と語った高橋監督。
画像提供:東京国際映画祭 (c)2018 TIFF

 

Q3 TIFFに出品する最大のメリットは?

A. 「自主映画をずっと撮り続けてきて、初の長編映画でぜひTIFF出品にぜひチャレンジしたいと、一般応募フォームからギリギリでエントリーしました。短編では香港の映画祭に出品して参加したこともあるんですが、TIFFをきっかけにして、海外上映につなげたいという心づもりです。昨年、TIFFのアジアの未来部門で作品賞を受賞した『僕の帰る場所』の渡邉一孝プロデューサーから薦められて、共同でTIFFCOM(TIFF併設のビジネスマーケット)にも参加しました。英語のプレス資料も作成して、海外関係者にPRしてみて、やっぱり国内だけでなく、海外で上映することの重要性も感じましたし、商業ベースで映画を作ることを第一に考えるのではなく、自分の伝えたいことを映画に落とし込んで表現していきたい。そのための課題も明確になりました。その第一歩は英語力ですね」(日原監督)


▲東京シネマナイトに参加中の日原監督。まずは海外のゲストと会話できるような英語力を身に付けたい、と話していた。

 

Q4 出品監督にはどんなサポートがあるのか?

A. 「オープンなお客さん向けの一般上映の場以外で、海外や国内の映画関係者と交流を図る機会という意味では、初日と最終日のセレモニーやプレス向けの上映、クローズドのパーティー、取材といった、様々な場が用意されていました。事前にTIFF事務局から、海外の国際映画祭関係者やプレスとの交流会、日本映画スプラッシュ部門に出品している方々、日本人監督やプロデューサーたちとの飲み会の日程をご案内いただくのですが、パーティーはほぼ毎日のようにありましたね。

海外プレスのインタビューでは、僕自身の考えをストレートに聞いてくる人が多かったのが印象的でした。そうした取材の申し込みや通訳の手配も、TIFF事務局を通じてセッティングしていただきました。一般上映のQ&Aで、次回作の構想を聞かれた時に『来年はコンペティション部門に出品したい』と回答したんですけど、今回TIFFに参加したことで、自分自身や自分の作品の弱さがうっすら見えてきました。また昨年、日本映画スプラッシュ部門の作品賞を受賞したドキュメンタリー『愛と法』の編集兼プロデューサーの秦岳志さんから、海外セールス会社の方と引き合わせていただいたんです。そうした経験や出会いも踏まえて、次回作では自分の長所を伸ばした作品にしたいと思っています」(高橋監督)


▲10月27日実施の『海抜』Q&Aにて。海外の観客が約半数を占めた場内はほぼ満席だった。
画像提供:東京国際映画祭 (c)2018 TIFF

Q5 海外関係者や周囲の反応は?

A. 「プレス向けの上映後に受けた海外プレスのインタビュー取材では、企画意図やバジェットについての質問を受けましたが、『月極オトコトモダチ』のテーマである“レンタル友達”に関する質問も多かったですね。海外では“日本的”なテーマと受け取られるようで、人付き合いのために、自己主張せずに他人に合わせる劇中キャラクターを見て、『日本人とはそういう価値観なのか?』と聞かれたり…(笑)。何より、海外のプレスや関係者の方々が直々にメッセージを送ってくれたり、アクションを起こしてくれているのがとにかく嬉しいです。

また、今年の日本映画スプラッシュ部門には、同世代の女性監督も多く参加されているので、交流会などで顔を合わせることも。同じ時代で映画を作っている同志、という感覚があって励みになりますね」(穐山監督)


▲『月極オトコトモダチ』1回目の上映後のQ&Aにて。国内外の大勢の観客を前にフォトセッションに参加。
画像提供:東京国際映画祭 (c)2018 TIFF

Special Report

出品監督が自ら切り拓く“海外への道”
TIFF期間中のネットワーキングの様子を観察してみた!


▲矢田部吉彦(プログラミングディレクター)を取り囲んだ笑顔の一枚!

期間中の中盤、10月28日には、六本木ヒルズ内のラウンジで「東京シネマナイト」と称した立食パーティーを開催。これは、世界中から招聘された海外プログラマーと、日本人監督・製作者との交流を促すためにTIFF事務局が企画した催しだ。事務局スタッフ曰く、国内の映画会社や、海外セールス担当者も参加しており、ビジネスマッチングの場も兼ねているよう。

受付では、顔写真入りのゲスト一覧表が配布。見ると、釜山(韓国)、香港、上海(中国)、シンガポール、インドネシア、ラオス、タイ、カンボジア、フィリピン…と、アジア各国の映画祭プログラマーがずらりと並んでいるほか、カンヌ映画祭(フランス)、トロント国際映画祭(カナダ)、ロッテルダム国際映画祭(オランダ)といった、欧米の名だたる映画祭関係者も。対して、日本人ゲストからは、コンペティション部門に出品していた今泉力哉監督(『愛がなんだ』)や、日本映画スプラッシュ部門の高橋賢成監督、野尻克己監督(『鈴木家の嘘』)、穐山茉由監督、日原進太郎監督、大木萠監督(『漫画誕生』)、田中征爾監督(『メランコリック』)と、多数が来場。会場は、溢れんばかりの人、人、人…でごった返していたが、パーティーの途中にはステージ前に日本人監督を招き、短いPRタイムも設けられていた。

このほかにも期間中は、「日本映画監督協会」や「国際交流基金」主催のパーティーなど、連日のように交流会が開催。ただTIFFが用意するのは、あくまでマッチングの場。こうしたネットワーキングの機会をいかに活用するかで、海外展開の道筋も大きく変わってくる…監督たちの様子を見ていてそう感じた。


▲海外からのゲストが半数以上を占める「東京シネマナイト」。会場内にいた監督には、数分のPRタイムが設けられ、中には流暢な英語で堂々たるプレゼンを披露する監督も。

ドイツの映画祭ディレクターよりひと言!

▲マリオン・クロムファス  ニッポン・コネクション フェスティバル・ディレクター

ドイツ・フランクフルトで開催される日本映画祭。商業映画から自主映画までを網羅したそのラインナップは実に多彩で、作品数では世界最大級の規模。マリオンは、2000年のスタート時から映画祭ディレクターを務めている。

Q 日本の若手監督に期待するポイントは?

数年前までは、強烈な作家性の女性監督は限られていたけれど、ここ最近、“自分の個性”を見つけた若い女性監督が増えてきていると感じています。今回の日本映画スプラッシュ部門の特別上映『21世紀の女の子』のプロジェクトは、その中でも特に興味深くて、期待しています。

私たちが、若い監督の作品に注目しているポイントは、テーマが自分自身のストーリーに基づいているか否か。小説や漫画などの原作ではなく、彼らが本当にやりたいことや描きたいことを映画で伝えているかどうかを、私たちは注目しています。

第19回ニッポン・コネクション
2019年5月28日~6月2日
https://www.nipponconnection.com/

 

第31回東京国際映画際
日本映画スプラッシュ部門受賞結果

《作品賞》野尻克己監督 『鈴木家の嘘』 
《監督賞》武正晴監督  『銃』
《監督賞》田中征爾監督 『メランコリック』

日本映画スプラッシュ部門の審査員を務めたパオロ・ベルトリン氏(カンヌ映画祭監督週間プログラマー)、ノア・コーワン氏(サンフランシスコ国際映画祭エグゼクティブ・ディレクター)、入江悠監督から、各賞の発表に続き、トロフィーが授与された。


▲野尻克己監督(写真右)と審査員の入江悠監督(写真左)
画像提供:東京国際映画祭 (c)2018 TIFF

 


[第31回東京国際映画祭 開催概要]
会期:10月25日(木)〜11月3日(土・祝)
劇場動員数/上映作品数:62,125人/181本
(第30回:63,679人/231本)
https://2018.tiff-jp.net/

 

ビデオSALON2018年12月号より転載