通販会社を営みながら、Instagramリールにシネマティックな風景映像を投稿

取材●編集部 片柳 文●村松美紀

PROFILE
京都府宇治市生まれ。京都在住。武蔵野美術大学工業工芸学部卒業。辻村久信デザイン事務所にて内装設計業務に従事した後、家業である通販会社に転職。会社経営を行いながら、商品撮影などを行う。

 

 

正垣琢磨’s PROJECT introduction

雪が積もる冬の平等院鳳凰堂をシネマティックに

『雪の日の平等院』

動画URL● https://bit.ly/shogaki2

 

平等院のある京都・宇治での積雪は珍しいため、前日から天気と時間を狙って、開門と同時に撮影に出かけました。地元ということもあり、ある程度おいしい撮影ポイントは頭に入っていたので、撮影は1〜2時間ほどでした。ニコン Z 7IIをジンバルに載せて、ワークをつけています。

編集で注力したことは、雪や白いサギなど、白を「白」に見せることと、動画全体を清々しい色に仕上げることです。また、SNSでは、目を留まらせるためにメインのクリップを冒頭に置くほうが良いと言われますが、僕の場合は、途中に入れています。今回は鳳凰堂の画ですが、なんとなく冒頭はもったいない気がして…。見た人が行った感覚になれるよう動線通りに編集しています。これは僕のこだわりだと思います。

 

 

HOSHINOYA Kyoto

星のや京都に宿泊した際に制作した映像。自己最高の288万再生回数(23年6月)を記録し、ハリウッドスターや海外の政治家からもいいね! が届いた。

動画URL● https://bit.ly/syogaki1

 

 

◆正垣琢磨とはどんなクリエイター?

美大時代に写真を始めた正垣琢磨さん。現在は、通信販売の会社を営んでいるが、「商品の写真撮影を外部スタジオに依頼していましたが、5年前に内製化することになり、カメラの知識がある私が携わることになりました」と、写真が自身の業務に加わった経緯を話す。

その後、ライティングなど撮影関連のことを勉強するうちに、カメラにのめり込み、その流れで映像制作もスタート。約1年前から、Instagramリールに動画投稿も始め、仕事以外の全ての時間を映像制作に注ぎ、3000人だったフォロワーは、12万人を超えた。地元・京都の神社仏閣などの風景をシネマティックな映像に仕上げた映像が人気を博している。「コロナ禍に日本を調べる人が増えると予想し、海外向けに日本の良さが伝わる動画を作ろうと、ある意味戦略的に考え、制作に取り掛かりました」

制作は、特に台本を作らず、現地で思うがままに撮影。ジンバルに縦用のアダプターを付けて行う。その後、Instagram用に15〜20秒の尺に編集し、地名のテロップを載せて、楽曲を選んで完成。「選曲で再生回数は変わると思います。Instagramのトレンドを見て、1万〜2万人に使用されている楽曲を選ぶと、再生回数が増えると分析しています」

また撮影は、ニコン Z 7IIを使って10bit N-LogやRawで外部レコーダーに記録していたそうだが、「機材を持ち運ぶのが重過ぎて肩を痛めてしまいました」と正垣さん。それをきっかけに、最近はカメラ内部で10bit記録できるソニー FX3を導入した。編集は初め、アドビ Photoshopで行なっていたが、現在はDaVinci Resolveを使用。カラコレやカラグレも行う。LUTはあえて作らず、毎回色は自身の感覚で作り上げている。

現在は風景がメインだが、今後は「職人など手仕事している人を取材をし、ドキュメンタリーと映像美を混ぜたものにも挑戦したい」と語った。

 

 

主な機材・ツール

自宅の作業環境。

 

 

 

VIDEO SALON 2023年7月号より転載