テレビの若手プロデューサーは何を考えて番組制作をしているのか。その頭の中をのぞいた。

取材・文●村松美紀 写真●編集部 片柳 

PROFILE
2016年に株式会社テレビ朝日に入社。バラエティ番組を中心にプロデューサー・ディレクターとして活躍。『ホリケンのみんなともだち』『イワクラと吉住の番組』『あのちゃんねる』などを手がける。

 

 

 

小山テリハ’s PROJECT introduction

ふたりの雑談や楽屋トークが聞きたいという思いから番組が誕生

『イワクラと吉住の番組』

お笑い芸人・蛙亭のイワクラさんとピン芸人の吉住さんが、街の人々が抱える“小さな悩みや秘密”にそっと寄り添うトークバラエティ。最近では視聴者に寄り添うだけではなく、演者の興味に寄り添い、推しについても熱く語る回も放送している。小山さん自身が、会社に企画書を通して実現した番組。

毎週火曜 よる26時16分放送 ※一部地域を除く。

(C)テレビ朝日

 

この企画を立ち上げたきっかけは、イワクラさんと吉住さんが別番組で共演した際、お互いが好意を持っているのに、付かず離れずの絶妙な距離感にあると感じたことです。ふたりの雑談や楽屋トークが聞きたいなと思いました。ふたりにはギラギラした雰囲気がないので、「今日も一日頑張ったし、深夜にこれ見て寝ようと思えるもの」がコンセプトにあります。ただ、ふたりが話すだけでは企画にはなりません。番組として幅が広がるように視聴者に寄り添うコンセプトも加え、一般の人が打ち明ける悩みにふたりがリアクションすると決めました。

またセットにもこだわっていて、背景や小物まで具体的に美術スタッフに提案しています。視聴者層となるふたりのファンに若い女性が多いことなどを考慮した上、この唯一無二のセットができました。

 

 

対象者の良さをもっと伝えたい

小山さんが撮影した葵つかささんの密着取材映像。『イワクラと吉住の番組』より。


(C)テレビ朝日

 

 

◆小山テリハはどんなクリエイター?

小山さんはテレビ朝日に新卒入社して7年目。『アメトーーク!』のADを経て、今は『イワクラと吉住の番組』『ホリケンのみんなともだち』など、プロデューサーとして自身の番組も持つ。「これってテリハの番組だよね」と言われるほど、ユニークな企画を世に送り出す小山さんだが「もともとテレビウォッチャータイプではなかった」という。ただ学生時代の地下アイドル経験や学校イベントの企画を通して、ものづくりの面白さに取り憑かれていた。はじめは映像ソフトの使い方もままならなかった小山さんだが、今では自らカメラを持ち、その人の魅力を切り抜く映像を生み出している。

それを象徴するエピソードが、AV女優の葵つかささんの密着取材だ。頭が切れた画角など、取材撮影の常識から外れた映像で攻める。「とにかく可愛く撮影したくて。画角の指摘も受けましたが、そのほうが可愛いと思いました。対象者の良いところをもっと伝えたい」と小山さん。対象者に真摯に向き合った結果、葵さんから「テレビでこんなに綺麗に映っていることはなかなかない。テリハさんのこだわりですか?」と感謝されたそうだ。

自身の思いを直結させた撮影手法は、企画の考え方にも表れている。小山さんの企画の流儀は「流行っているものよりも、自分が良いと思うものを広めていきたい」とのこと。「スタッフのテンションや熱量は画面を通して伝わると思います。自分の気持ちが乗ってないものって視聴者にバレちゃうんです」と語る。時々演者から「こんなに楽しそうなプロデューサーはいない」と言われることもあるそうだ。自身の好きをいかにテレビという箱に収めるか。それを考え抜いた末に面白い番組が生まれる。

テレビ離れという言葉も聞こえてきて久しいが、小山さんは「時代がどうなろうと、良いものを作ることには変わりはない」と真摯に向き合う。目標を聞くと「バラエティ番組でヒット作を出すことです」と返ってきた。

 

セットのぬいぐるみ制作もこだわる


 

 

 

VIDEO SALON 2023年1月号より転載