第42回 1台の4Kカメラから 4つの疑似マルチアングルを切り出す「A-PRO-1」が面白い!

写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)

 

 

ATV A-PRO-1
140,800円

A-PRO-1は、2系統の4K/60pのHDM I映像・音声信号が処理可能な、コンパクトAVミキサー。各種コンバーターで培った技術をベースに、サブ入力された信号をメイン側の信号フォーマットに自動的にコンバート。ユーザーは映像の解像度やフレームレートの違いを意識することなく、ふたつの映像信号の合成や切り替えが行える。

 

 

演者を同じ方向から4台のカメラで撮っているならそれは1台にできる!

ライブ配信でもっとも多いレイアウトが演者横並びのバラエティスタイルです! これは長い机などに演者が横並びになるレイアウトのこと。同じ方向から複数台のカメラが演者を違うアングルで狙い、それをソースとしてスイッチングします。小さな会議室を使ったバラエティ番組からステージを使ったシンポジウムや座談会まで幅広いジャンルで使われています。カメラは横並びで同じ方向から撮影するので複数台のカメラを使わず1台に集約する方法があります。それが4KスイッチャーのROI機能です。

ROIとはRegion of Interestの略で関心領域と訳すことができます。つまり特定の領域を切り出して使用するというわけです。HDのスイッチャーでも工夫すれば似たようなことはできますが、そもそもHDの映像を切り出して拡大し、HDで出力すると解像度が足りず、映像が粗くなります。そこで4Kカメラと4Kスイッチャーを使うことで画質劣化させずにHDで最終映像を出力することができます。

 

8万円のスイッチャーと4Kカメラ2台で 8カメが作れる!

ライブ配信の解像度は2022の今もまだ1080pや720p一般的です。そのため、最終映像の解像度はHDスイッチャーでも充分。4Kスイッチャーは、まだまだ高価でリサーチ段階という人も多いのではないでしょうか?

ところがATVが発売している2入力の4KスイッチャーであるA-PRO-1は実売価格が79,800円で8万円を切っています。2入力しかないと思われがちですが、それぞれの入力からROIによる切り出しで4アングルずつ、つまり8アングルを作ることができます。カメラを2台入力すれば8カメ相当になります。

同じ方向から被写体を捉えるのであれば、カメラ台数を大幅に減らせるので現場でのセッティングが楽になります。カメラマンがいない、ワンオペでやらなければいけない、そんな状況にはぴったりのスイッチャーです。

▲A-PRO-1は底面に三脚穴を備えている。

 

A-PRO-1とSTREAM DECKは 最強のコンビ!

このA-PRO-1のROI機能による擬似マルチアングルが特に使いやすいのはSTREAM DECKでコントロールできるからです。STREAM DECKはパソコンでの特定の作業をショートカットにして液晶ボタンに任意の画像と共に登録できるガジェットです。6ボタン、15ボタン、32ボタンのモデルをラインナップ。

A-PRO-1のメーカーであるATVのWEBにあるサポートページからSTREAM DECKのプラグイン/マニュアル/プロファイルをダウンロードすればセッティングも簡単です。

2入力をそれぞれ4アングルに切り出すので、画面切り替えのみであれば15ボタンでも充分。演者が自ら画面切り替えするなら4アングルとパソコンで6ボタンもあり。1台のパソコンに2台のSTREAM DECKを接続できるので演者用に6ボタン、管理者用に32ボタンなどの同時接続もできます。

A-PRO-1+STREAM DECKヒマナイヌスタジオプロデュースキット

▲ヒマナイヌスタジオ大手町に設置したA-PRO-1を基盤としたライブ配信システム。

 

驚異的になめらかな登録アングル間のカメラワーク!

ヒマスタ大手町では「A-PRO-1のお触り会」を実施し、ATVの渋谷さんや既に通販番組で毎晩のようにA-PRO-1を使いこなしているヘビーユーザーの大間知さんに来ていただき、その機能をプレビューしてもらいました。

その様子をライブ配信したところ興味を持ったユーザーがスタジオに来て合流し、最終的には10人ほどに。特に参加者を驚かせたのが登録アングル間をまるで有人カメラのようにズームしたりパン・チルトする機能でした。高価なPTZカメラコントローラーでも登録アングル間の移動はテイクできるようなものではなく最短距離で監視カメラのように画角が変わりますが、A-PRO-1は動き始めと動き終わりの加速減速を細かく調整できるので、上手いカメラマンが操作しているかのように見えるのです。

音楽ライブなどではカメラがズームしながら、パン・チルトしている画をミックスして使うことでエモーショナルに仕上げていきます。通常のシステムでは4台のカメラと4人のカメラマンが必要になりますが、それを1カメで無人の固定カメラから作り出せるのは驚異的! ROI機能をPTZカメラのように使えます!

最初のセッティングこそ慣れが必要ですが、A-PRO-1によるROI疑似マルチアングルは一方向から演者をとらえるセミナー、シンポジウム、トーク、音楽ライブ、ダンス、パフォーマンス、イベントなどにフィットしそうです!

▲A-PRO-1のお触り会の模様。

 

 

VIDEO SALON2022年3月号より転載