第9回 V-60HDを使った 自動スイッチングシステムの構築

写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)

 


★V-60HDとV-02HDを棚に配置
▼制御PC
■フットペダル

VR-4HDからV-60HDにスイッチャーを アップグレード

ヒマナイヌスタジオ神田店はVR-4HDを中心として配信システムを組んできましたが、高円寺店はV-60HDで組むことにしました。V- 60HDはHD-SDIが4系統とHDMIが2系統の6入力あります。出力もAUXがあるので、例えばPowerPointの資料を映したパソコン画面だけをAUXに出力してスタジオのモニターに映しながらも、スイッチングはカメラとパワポを混ぜて収録・配信できます。

V-60HDはこれまで出張配信のメイン機材として使用していたのですが、これを高円寺店の中核スイッチャーにすることにしました。これは対談と鼎談だけに特化してきた神田店とは違い、高円寺店ではステージを使った一般的なイベントなどにも対応していきたいと考えたため、入出力ともに余裕のあるシステムにしたかったのです。

▲棚の上に置いたV-60HDとV-02HD。

 

フロアを効率的に使うため機材は棚に設置

高円寺店は三角形のフロア形状で、フロアに機材を置くと人の動線を塞ぎ途端に狭くなってしまいます。悩みながら、いろいろな場所に配置してみた結果、機材はカウンターの上にある棚に設置しようと考えました。ここは元イタリアンレストランの居抜き物件なので、お酒などを置くような棚があります。そこに機材を設置することにしたのです。

スイッチャー周りは電源だけではなく、あらゆる映像ケーブルが集約されるのでカメラに近いところにあったほうが接続しやすいという理由もあります。人の手が届かず脚立がないとアクセスできない位置にスイッチャーを置くと操作性が著しく低下しますが、LANケーブルで制御パソコンをつなぎマルチビューを延長することで階段下にある副調整室に操作卓を設置します。機材ごと設置するより配線がシンプルです。またV-60HDはマルチビュー映像に音声が載っているので、そのままヘッドフォンでモニターすることもできます。

▲ホストの手元にはスイッチャーを制御するアプリを入れたノートPC、各カメラの映像を確認するモニター、配信中の画面を確認するモニター、収録用レコーダーを配置。

 

自動スイッチングで より高度な設定が可能

自動スイッチングはローランドのスイッチャーにある「オートスキャン」という機能を使っているのですが、V-60HDにはVR-4HDにはない機能が使えます。例えば、どのソースを自動スイッチングの対象にするかを設定で選べます。つまり、6入力にカメラやパソコンを接続しておきながら自動スイッチングはカメラだけを対象にするということができるのです。

さらに個別カットの秒数も設定できます。たとえば、人物のアップは7秒、引きは5秒という具合にアングルごとに使用秒数を変えられるのです。本体のボタンだけでは、これらの機能にアクセスするには、メニューの奥深くに入らなければならないのですが、後述する制御アプリの入ったノートPCをLANケーブルでつなぐことでGUIで直感的に設定を変えられます。

▲V-60HDの制御アプリ。

 

割り込みスイッチングはフットペダルで

自動スイッチングの映像にPowerPointや画像を割り込ませるためのサブスイッチャーは神田店ではV-1HDを使っていましたが、高円寺店ではフットペダルの使えるV-02HDを採用しました。入力数こそ4から2に減るもののホストがしゃべりながら足で操作するのはおもしろいと思ったことも採用の決め手になりました。

こちらは本体は棚の上に置きフットペダルだけをホスト席の足元に設置しました。2ペダルのBOSS FS-6のAペダルにカット、Bペダルにディゾルブを割り当て、一度踏むとパソコンの絵になりもう一度踏むと戻るようにしました。

これまでいろいろな番組のホストに「スマホやパソコンの絵をカメラに割り込ませるにはこのペダルを踏むんです!」と説明すると「わー!おもしろい!」というリアクションが返ってきて、何度かテストすると、すぐに使えるようになります。最初は足元を見ながら踏んでいても番組は進むにつれ慣れてきてしゃべりながら自然に足で踏めるようになり、ちょっと見た感じでは「スタッフが割り込みスイッチングをしているのかな?」と思えるくらいです。高円寺店はフットペダルがうまく対談コンテンツに馴染み自然な割り込みスイッチングができるようになり、いい選択をしたと思っています。

▲自動スイッチングの映像にPowerPoint資料などを割り込ませるためにV-02HDを使用。ホストはフットペダルで映像を割り込ませる。

 

V-60HDの制御用には 3万円の中古ノートを採用

番組によっては自動スイッチングではなく手動スイッチングで対応するものもあり、通常のノートPCでのV-60HD制御はレスポンスが悪いと感じていたので専用に中古パソコンを買ってきました。ソフマップで3.4万で売っていたのがVAIO Duo 11というWindowsタブレットパソコンです。

これは昔のワープロのようにユニークな形状をしたノートPCで端子もLAN端子からHDMI/VGA/SDカードスロットまで一通り揃っておりV-60HDの制御用にはあつらえ向きです。ローランドの制御アプリは全画面表示ができず、解像度も固定なのでそのまま使うとパネルが小さいのですが、ディスプレイ解像度を変えることでボタンが大きくなり、操作しやすくなります。トラックパッドなどを使わずスイッチャー本体のない副調整室からでも画面のソースボタンを押すだけで手動スイッチングできるので非常に便利です。こうした制御用のパソコンはCPUパワーなどをほとんど使わないので中古の型落ちタブレットでも充分です。

こうしてヒマナイヌスタジオ直営店として2店舗目となる高円寺店は物件入居から1ヶ月でシステムの最適化が行われました。次回は全国に広がるヒマスタ型スタジオについてご紹介します!


▲V-60HDの制御アプリの「SETUP」メニューにある「SYSTEM」の「AUTO SCAN」タブで各入力ソースの使用秒数を個別に設定できる。

 

ビデオSALON2019年4月号より転載