第28回 スタジオ運営をはじめてよかったこと
トラスタ篇

写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)

 

ヒマスタ型スタジオ「トラスタ」、福田悟郎さんにインタビュー

合同会社ヒマナネコ代表。1976年埼玉県川口市生まれ。「好きなことをやりなさい」と言われ育ち、高校時代に見たMTVでミュージックビデオにハマる。建築、デザイン、政界と好きなことをやりながら映像に辿り着く。動画を用いた新たなコミュニケーションを模索中。

WEB●https://www.facebook.com/goro.fukuda

 

全国に広がるヒマスタ型スタジオオーナーにインタビュー

ヒマスタに影響を受けて立ち上がった全国のスタジオオーナーへのリモートインタビューをお届けしています。スタジオのコンセプトも配信しているコンテンツも様々ですがコロナ禍をきっかけに自社スタジオを作ろうと考え始めている方の参考になればと思います。今回は霞が関のSenQというシェアオフィス内にできた「トラスタ」の福田悟郎さんです。

ー最近ライブ配信の相談は増えました?

相談というより雑談の中で「ライブ配信をやってみたい!」という話はよくあります。ほとんどが、「司会がいないとやりたくない」「一緒に出てくれる人ないとできない」と、なんだかんだ理由をつけられてあと一歩のところで話が進まないことが多いです。映像で伝えることに興味はあるものの、あと一歩を踏み出せない雰囲気を感じます。あとは、Zoomなどのオンライン会議の相談がものすごく増えました(汗)

ーライブ配信と収録の割合はどんな感じですか?

ライブ配信3、編集収録7の割合です。虎ノ門という場所柄もあって、役所の方をメインとしてやっていますので、失言が許されない、方針と違ったことはNGという動画が多くなる特性上、収録して後から編集するという割合が高くなる傾向にあります。政治家さんの動画もやりますが、逆にこちらはライブ配信で少し行き過ぎた発言をする方が盛り上がりますね。配信スタッフとしては楽しいですが、事務所のスタッフさんはドキドキだと思います。個人的にはライブのやり直しが効かない緊張感が好きです。

ー自社でスタジオを持っていることでどんなメリットがありますか?

女の子にライブ配信スタジオを所持していることを話すと、かなり喰いついてきます。自撮りに近いモノを感じるのかしれませんが、「行ってみたーい」という反応になります。実際配信までは中々いかないのですが…。また、スタジオを持ってからは今まで関わり合いのなかった、異業種の人と関わる機会が増えました。異業種、異世界の人たちの考え方を直接聞くことは人生においてプラスになっています。

ーどんな顧客を想定して配信システムを組んできましたか?

3名による雑談のライブ配信を前提として配信システムを組みました。長時間の動画撮影に対応できるようにソニーのα6400×3台、映像も音声もいじれるローランドVR-4HD、手軽に配信LiveShell Xという王道の配信システムです。マイクは以前、バウンダリーマイクを使っていたのですが、どうしても紙をめくる音なども綺麗に拾ってしまうので、グースネックのSHURE MX418Dを追加で揃えました。照明はコスパが素晴らしいNeewerの製品を最近は使っています。

ー最近導入してお気に入りの機材教えてください!

虎ノ門スタジオのメインカメラα6400ですね。映像の外部出力はマイクロHDMIであっという間に端子がバカになるため、ケーブルホルダーは必須ですが、同梱なし、純正なし。ケーブルホルダー+ケージを揃えないと直ぐに使えなくなる手のかかる娘さん仕様。しかし、SIGMAのF1.4のレンズを着けると何とも言えない画が撮れます。あれ、カメラ本体ではなくレンズがお気に入りですね。SIGMA 16mm F1.4 DC DN、SIGMA 30mm F1.4 DC DN、SIGMA 56mm F1.4 DC DN

この3兄弟ばかり使っております。

ーどのように営業していますか? 広告や広報はしていますか?

いままでの仕事関係を中心に「ほぼ口コミ」の営業をしていましたが、機材やスタッフの体勢も整ったので、11月以降は本格的に稼働をスタートさせたい。広報はFacebookを中心に考えておりますが、ライブ配信なので常識の範囲内での行動、発言を心がけてもらう必要があると考えています。そのため、知り合いの知り合い位までが安心できる範囲と思いますので、Twitterは用いずにFacebookと口コミになりそうです。

ーひやっとしたトラブルありましたか?

一番焦ったのはLiveShellを友人に貸して帰ってきた際に確認せずにテスト配信をしたら、別現場のロゴが画面全体に散りばめられていたのは焦りました。テロップ機能を理解していない時期でしたので何が起きたのか理解できずに焦りました。機材が帰ってきたときには設定を確認しないといけないことを学びました。他は、音が出ていなくてコメントで気がついたり、終了時に音声のフェーダーを上げっぱなしで雑談が全て流れてしまった事もありました。

ー顧客のフィードバックでうれしかったことありますか?

弊社は配信、収録の時間よりも前段の打ち合わせに力を入れ、何を伝えたいのか、どのように見せたいのかをしっかりヒアリングした上でカメラを回しますので、「丁寧に仕事をしてくれてありがとう」と言われるとやって良かったと感じます。視聴者からのコメントも非常にありがたいですね。音が小さい、大きいから画面に対しての評価などコメントは本当に力が湧きます。

ーこれからスタジオを作ろうとしている人に一言お願いします!

お金がいくらあっても足りないので注意してください(笑)。欲しい機材がどんどん出てきて毎日が楽しくなるのは確実です。真面目に話をすると、昔に比べると機材も安くなり、性能が上がったので配信自体のハードルは低くなりましたが、閲覧者側の目が肥えつつあるので弊社は演出面を強化しようと考えています。また、コミュニケーションとして動画が当たり前になりました。これからもっと形を変えていくと思われますので参入するなら早いほうがいいです。

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「トラスタ」はコロナ禍の2020年の7月にオープンしたばかりですが、霞ヶ関から近い虎ノ門交差点に立地しているので早くも相談が殺到しています。シェアオフィスの一室ながら角を活用した上手なセット配置が印象的でした。次回はリモートインタビューをお休みしてヒマスタ大手町におけるローランドV-8HD活用術をお送りします。

 

霞が関のシェアオフィス内にスタジオを開設



霞が関のシェアオフィスSENQ内にある「トラスタ」。カメラはα6400。ローランドVR-4HDをスイッチャーに自動スイッチングのシステムを構築。場所柄官公庁や政治家の配信が多いという。

 

VIDEOSALON 2020年11月号より転載