「ビデオサロン」で連載中の読者投稿コーナー「魁!! ビデオ道場」では、毎月1作品を「大賞」、次点の数作品を「入賞」としてセレクト。大賞受賞者にはその栄誉をたたえて金2万円を贈らせていただきます。大賞・入賞および掲載作品にはそれぞれポイントがつき、累計ポイントによって当ビデオ道場における段位が認定されます(最高位:師範代)。
今回は2017年1月号掲載の作品を紹介します。解説とともに動画をご覧ください。<解説:岡野 肇>
<大賞>
紀行ビデオ 「八重山ひとり旅」 8分
広瀬友三さん(兵庫県加古川市)
●作品紹介●
ある日突然「スキューバーダイビングを始める」と言い出し、次に「石垣島に一人旅に行く」と言い出した娘さん。その娘さんが初めて一人で撮ってきた撮影素材を父親が編集。ナレーションも含め、家族で作り上げた一作。
■解説■
ゆったりとした時間が流れる沖縄八重山の海を、そのまま作品にしたような終始落ち着いた流れがとても良いですね。ひとつひとつを深く描いているわけではないのですが、自分撮りの固定カメラやタイムラプス撮影、そして何よりしっかりとしたカメラワークが光ります。それによって八重山の自然と海が、変に総花的にはならず、個性的な作品に仕上がっています。娘さんの初撮影を作者が編集でサポートするという、息のあった世界観で描いているのも素晴らしい。娘さんの撮影第2弾にも期待します。
<入賞>
ドキュメント 「遠藤シロ」 5分
Seirituさん(東京都足立区)
●作品紹介●
遠藤家の愛犬シロ君7才、その飼い主親子へのインタビュー作品。広角を使ったインタビューシーンとさまざまなインサートカットが目を引く。(BGMは権利者からの許諾を得て使用しているとのこと)
■解説■
この作品で印象的なのは被写体と共にその周辺まで入れ込んだ構図です。話の内容にとどまらないこの親子や愛犬の居る風景というか、世界感全体を伝えようとしているようにも感じます。インサートは話の内容に沿ったものというのが定石ですが、そこにも広い構図で思わず想像力を働かせて見てしまう魅力があります。もちろん的確なアップも混ぜ込み、同じ空気を吸っている感覚を覚えました。
<入賞>
スポット紹介 「天空の城」 5分58秒
稲垣育宏さん(東京都大田区)
●作品紹介●
霧の中に浮かぶ「天空の城」として話題の竹田城と備中松山城。残念ながら霧の中に浮かぶカットは資料映像ですが実際に登って撮った作者のリアル感を感じさせるナレーションが印象的。
■解説■
見学ツアーに参加しての撮影のようですが、その行程に終始せず、きちんと調べて自分の口から語るスタイルにされていることに好感が持てます。2つの城を対比しているわけではないですが、2カ所を紹介したことで構成的にもメリハリが付きました。どちらの城も予想外のきつい登りだったという作者の感想もいいですね。テロップについても、表示場所やフォント、スタイルに気を遣っておられたのが目を引きました。
スポット紹介 「紅葉(もみじ)比べ」 7分30秒
吉見秀雄さん(神奈川県南足柄市)
●京都と長野を対比しながらそれぞれの紅葉を味わう。■紅葉比べとは何だろうかと想像しましたが、しっとり「赤」の京都、自然の中の「黄金色」の長野と分かりやすい結論をうまく導きだす構成は見事です。雨の撮影が良いアクセントになっています。
歴史ドキュメント 「信長 四、濃姫」 8分
林 幸司さん(岐阜県揖斐郡)
●信長の生涯を描くシリーズその4、濃姫の回。■歴史物の常である素材不足を動くテロップや2DCG等を駆使した力作ですが、信長の結婚というところでひとまず連投はお休みとのこと。実写をどう使うか、何を撮り下ろすか次シリーズが楽しみです。
スポット紹介 「英国の城を日本で探訪」 7分31秒
木村精二さん(東京都北区)
●イギリスから移築された古城見学記。■作者のスタイルであるツアー参加の疑似体験ができる構成でワクワク感がうまく表現できています。また移築の背景もしっかり語るナレーションも軽快。ただ手持ち撮影時の水平具合が少し気になりました。
イベントビデオ 「天草Xアスロン2016」 7分51秒
高西洋一朗さん(熊本県天草市)
●陸・水・空を制覇するXアスロン大会を撮影。■見慣れない競技ですが、すべての種目を押さえた撮影とテンポの良い編集で楽しめました。この競技を伝えるという意味では充分合格です。全体に暗めなのでマニュアルをうまく使ってみてください。
イメージビデオ 「路(みち)」 3分15秒
佐藤昌孝さん(埼玉県八潮市)
●人生を山に続く路と捉えて素材映像を再編集。■山のロングショット、テロップの短文と画像のシンクロ具合が素晴らしい。構成は起承転結の転をもう少し強調しても良いと思います。順調と困難を描くシーン、例えば音楽を変える手もありますね。
祭りビデオ 「愛宕山火の祭典 火祭火渡り」 7分
河合典之さん(三重県松阪市)
●松阪愛宕山龍泉寺の行事、火祭火渡りを撮影。■テロップによる説明で行事を追う構成。場所を変えながら様々なアングルの撮影、そして要所で思い切ったクローズアップを交えるのは作者の真骨頂。カメラワークによるメリハリが活きていました。