月刊誌「ビデオサロン」で連載中の読者投稿コーナー「魁!! ビデオ道場」では、毎月1作品を「大賞」、次点の数作品を「入賞」としてセレクト。大賞受賞者には金2万円ほか、大賞・入賞および掲載作品にもその栄誉をたたえてステッカーを贈呈しています。詳細は誌面をご覧ください。今回は2013年8月号掲載の作品を紹介します。
●途中まで再生リストになっていたのを直しました(8月1日)
審査/解説◉岡野 肇


大賞◉「開聞岳で珍発見」オキーフ・グレッグさん(福岡県福岡市)

テイストが独特で、色の使い方も個性派。見るものの立場にたったいろいろな遊び心が嬉しく感じます。起承転結のメリハリも効いていて、 おまけの「音」の恐怖感も最高です。ウェラブルカメラも使った撮影も見事ですが、やはり構成・編集の見事さに大賞を贈ります。このテンポ感に皆さんも是非挑戦してください。
入賞◉「素晴らしい徐伸線の紹介by After Effects」渡辺考三さん(埼玉県上尾市)

「How to型鑑賞作品」という新ジャンルを開拓した作者の、今度はずばり「紹介」と銘打った、テンポの良い鑑賞作品。生き生きとした自身のナレーションも勢いを感じます。勉強意欲をわかせるためにはまずその素晴らしさを徹底的に見せるという姿勢は面白いです。ちなみに「おわり」も徐伸線になっていました。
入賞◉「筑北村 岩殿山」吉野和彦さん(長野県松本市)

4年前、1人で登った岩殿山に今度は親子で登頂。作者である父親のワクワク感が伝わってきます。今回のカメラワークのテーマは「2ショットの自分撮り」でしょうか、新鮮な感じがします。親子愛ときっちりとした山岳撮影手法が見事に調和しています。せまい岩稜からのショットは迫力。BGMもベストマッチです。
「モノホンの博多らーを堪能せよ!」にゃおんさん(東京都)

ハードボイルド感いっぱいで、エフェクトの遊び心満載の「男のムービー」といった印象を受けました。少ないカット数でも充分楽しまさせていただきました。
 ノリと編集手段で心情を表現する新感覚作品。細かく見るとかなり手がこんでます。チャーシューメンが食べたくなりました。
「とある家族のお花見」太田智大さん(東京都荒川区)

ミラーレスカメラとステディカムによる全編ハンディショット。被写界深度が浅いので周りに人が多くても、常にフォーカスは息子さんに合っていて、ちょっと不思議な世界観。何気ない一コマにも独特の個性を感じます。息子さんのちょっとご機嫌斜めの表情もまた良いです。
「水芭蕉の頃」綿貫紀元さん(東京都江戸川区)

残雪と水芭蕉が同居する風景を途中の遠景や花々のインサートとともに、体感的に伝えています。水芭蕉の図鑑ショットも良いのですが、群生する花の小川越しのショットと遊歩道のローアングルが印象に残りました。
「カルスト台地に春を告げる 平尾台の野焼き」田中俊雄さん(福岡県直方市)

北九州市平尾台の野焼きドキュメント。アップと遠景を織り交ぜてリアルに描かれています。火・煙・風、そして燃える音が感情を揺さぶりますね。説明テロップにタイトルが乗っているところとか、カットつなぎのディテールに配慮を。
「ゆいとれいの城崎旅行」広瀬友三さん(兵庫県加古川市)

肩の力を抜いたシンプルな家族旅行記。しかし細部は手を抜いていません。道の反対側からの温泉街を行く家族や、ちょっとしたインサートカット。お孫さんたちも顔と後ろ姿をそれぞれよい高さで捉え、テロップの量も適度。
「国宝の彦根城」関口豊さん(埼玉県狭山市)

珍しい厩も現存する国宝彦根城への撮影旅行。ガイドさんの音声にのせて詳しく理解できましたが、もう少し城の外観も見たくなりました。作者がこの城で一番感銘したのはどこだったのでしょうか?
「湯島の白梅」木村精二さん(東京都北区)

定番のものを、当たり前のように作品にするのは難しいものです。正確な時期や場所、アイテムや背景のわかるカット等一つでも抜けると急につまらない作品に思われてしまう。作者はあえてその「定番」をしっかり描ききりました。
「親緑⑤SINRYOKU」金谷功さん(京都府京都市)

今回のテーマは「春を待つ枯れ木・枯れ枝」でしょうか。あえて同じタイトルで1作品ごとに個性を出すのは結構大変。今回の力強い枯れ枝は立派ですね。「枯れ枝」であえて「新緑」をイメージさせる作者の心意気がすごい。
「奈良若宮おん祭り」大矢治朗さん(岐阜県安八郡)

静かな始まりが良いですね。マメに拾ったインサートカットも祭りを予感させる効果を出しています。静かに淡々と進む祭りもさすが古都奈良の風格を感じます。数少ない競馬等の「動」の部分の迫力をどう撮るかを、次回期待します。
「千年乃藤」田中憲司さん(東京都調布市)

あまり広い場所ではないのですが、手を替え品を替えの撮影術。メイキングカットのサービス付き。苦心のカット数には拍手を送りますが、構成的にもう一つ視点があると。「藤」一本で攻めるなら、半分の尺のほうが締まったかも。
「森の恵みを求めて メイプルシロップ」羽鳥允祥さん(山形県米沢市)

残雪の残る森で淡々と作業。この日本らしい風景と舶来イメージの「メイプル・シロップ」というギャップが不思議。撮影はドキュメントタッチで淡々と進みますが、例えば対象の木についてのもう一ネタあるとと良かったですね。
◆この動画に関する記事はビデオSALON2013年8月号をご覧ください。
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1180.html