歴史のある建築を活かして地域に撮影スタジオを作る
取材・文/編集部 一柳
スタジオにリノベーション
今回は特別編として、岐阜県美濃市のうだつで有名な古い街並みにできた撮影スタジオを紹介する。
レンタルで使用できる白ホリやハウススタジオは特に首都圏に集中している。地方では、大規模なスタジオの需要そのものが少ない。もしあったとしても東京の映像制作会社に依頼されたり、都内のスタジオや大都市から行きやすい距離のスタジオで撮影が行われていた。
岐阜県美濃市で映像制作、写真撮影やグラフィックデザインなどを手がける株式会社HIORYES(ヒオリス)は、岐阜県美濃市の伝統的建造物群保存地区「うだつの上がる町並み」にある築350年以上の歴史を持つ旧鈴木公平家住宅をフルリノベーションし「STUDIOたまぼし」として再生させた。
この場所はもともと同社の所在地として、事務所、機材置き場として利用されていた。建物全体としては老朽化が進んでいたものの建物自体は旧郡上八幡藩主の本陣で1676年に建造されたもの。その後「玉星」という屋号で質屋、造り酒屋として代々使われてきた。その貴重な建築を、邸宅が持つ風情を最大限に引き出するようにリノベーションし、地域のクリエイティブ活動を活発化させるために、撮影スタジオとして9月にオープンさせた。
和室で望遠レンズを使える
まずそのロケーションだが、名古屋からクルマが便利で高速を利用して45分ほどで着いてしまう距離。美濃市は美濃和紙の生産で栄え、うだつのある街並みができ、それが現在まで残されている。スタジオは豊かな自然環境と歴史的な風情が広がるロケーションにあり、外観は本陣の雰囲気を残している。
ところが一歩中に入ると、撮影機材などが整然とラックに並べられ、一番奥には、天井を抜いた白ホリゾントスタジオ(幅3.8m×高さ5.5m×長さ7m)が目に入る。すぐ横にはキッチンが併設されている。
特徴的なのは書院と和室だ。日本家屋というと引き尻がとれずにどうしてもワイドレンズを使うしかなく、映画やCMではセットを組むしかなかったが、さすがは本陣として使われた家。和室が続くので望遠レンズで撮ることができるし、推定樹齢600年の楠のある庭も借景以上に使えそうだ。
2階に上がると、明治後期に作られた洋間があり、明治から昭和の戦前の雰囲気で撮ることもできる。
需要としては、まずはウェディング関係だが、最近は個人によるコスプレ撮影もニーズがあるという。
屋久杉材を用いた天井や欄間など本物で揃えられたセットだと考えると、映画やドラマでも使えるのではないだろうか? メイクルームやCスタンドや箱馬などの機材が常備されているのも便利そうだ。
プレオープンイベントとしてライティングのワークショップが開催された
スタジオDATA
料金:個人利用 7,150円/人(4時間まで)
商用利用①シロホリ 5,500円(1時間)、②和室館12,000円(1時間) ③全館16,500円(1時間)ほか
場所:〒501-3722 岐阜県美濃市常盤町2274番地 TEL: 0575-36-2049