ファッションコーディネートが動く雑誌として楽しめる女性向けファッション動画マガジン『MINE』。
同メディアを制作している株式会社3ミニッツでは、創業初期の動画マガジンのローンチをきっかけにインハウスの動画制作チームをスタートさせた。
手探りで始まったにもかかわらず、たった3年で、本格的な広告動画を制作するチームに育った。

取材・文・構成●矢野裕彦

株式会社3ミニッツ
http://www.3minute-inc.com


▲話を伺ったコンテンツ事業部の小林伸次チーフプロデューサー。以前は大手制作会社のプロデューサーとして主にテレビCMの制作を担当していた。3ミニッツでは、広告と自社メディアコンテンツの両方を担当。ビデオグラファーと広告のプロを配したチームで、制作柔軟性と即応性の高い制作体制を構築している。

 

SNSビジネスから動画マガジンの制作へ

3ミニッツは、2014年に創業。インフルエンサーのキャスティング事業からスタートした。Instagramなどを中心としたSNSで若い女性に人気のインフルエンサーをアサインし、各種のプロモーションを行うビジネスだが、そこにとどまらない急成長を遂げているのが同社の特徴だ。インフルエンサーに代表される個の発信力の強さの高まりに、クリエイティブ力を掛け合わせた事業展開を押し進めている。その主力となっているのが、ファッション動画マガジン『MINE』の制作だ。

現在、3ミニッツの事業の柱となっているのは、インフルエンサーキャスティングなどを含む広告プロデュース事業、MINEを運営するメディア事業、そして、自社のアパレルブランド「eimy istoire(エイミーイストワール)」と「ETRÉ TOKYO(エトレトウキョウ)」を展開するコマース事業の3つだ。ちなみに2つのブランドは、インフルエンサーの女性がそれぞれディレクターを務めている。もちろんEC発のブランドだが、今では東京/大阪/名古屋に実店舗を構える。メディアの立ち上げから実店舗経営と、そのスピード感には目を見張るものがある。2015年に20名ほどだった社員は、現在200名を超えた。

 

動画メディアをきっかけにインハウスの制作体制を構築

今回、話を伺ったのは、コンテンツ事業部の小林伸次チーフプロデューサー。コンテンツ事業部は、広告プロデュース事業とメディア事業にまたがって動画制作を行う動画専門の部門だ。

「われわれコンテンツ事業部の動画のチームは、現在18名です。企画、演出、撮影、編集まで、動画制作に関わるさまざまなフローを、ひとりで何役もこなせるマルチなスタッフが増えてきています。若いビデオグラファーから、広告のことを熟知したテレビCM制作会社出身のメンバーまでそろった、ユニークな少数精鋭のチームですね」

3ミニッツが動画制作をインハウスで行うようになったきっかけのひとつは、MINEのローンチだ。MINEは、スマホアプリやWebブラウザーで閲覧できるファッション動画マガジン。このジャンルでもすでにWebサイトやスマホアプリで情報提供するメディアは数多くあるが、デジタル化されたとは言え、まだまだ静止画が主流だ。そんな中MINEでは、撮り下ろしのコーディネートやメイクの記事など、従来はスチルで掲載されていたコンテンツが、数多くのオリジナル動画で配信されている。ビジュアルの情報量が多く、かつリアリティのあるファッションコーディネート情報メディアとして人気だ。

刊行準備が始まったとき、記事となる動画は、編集部内で撮影/編集してすぐに掲載するという体制を考えた。

「他社にも動画を扱うメディアはありましたが、ほとんどが外部制作でした。しかし、当時の3ミニッツでは、品質の高いオリジナル動画を他社よりも早いタイミングで提供することを重視していました。そのためには、やはりインハウスの体制作りが不可欠ということで、動画制作チームを準備することになったんです。ただし、当初はまだ手探りの状態でした」

こうして2015年6月のベータ版を経て、9月にMINEがローンチ。当初のコンテンツは女性向けライフスタイル全般で、ファッションだけでなく、コスメやフード、ショップやイベント取材などさまざまだった。2016年の春頃からファッションに特化する方向に舵を切ったが、その結果、ユーザーも増え、ファッション動画マガジンならではの面白さも浸透し、タイアップなどの広告案件も増えてきた。そうなってくると、クライアントとのオリエンテーションからコンテの作成、プレゼンといったクライアントワークも必要となり、制作する動画もロケを伴う本格的なものが求められるようになってくる。

「そのため、広告制作会社出身のメンバーを増やして、社内でクライアントワークから制作まで、一手に担える体制を整えていったんです。雰囲気のいい動画を撮るだけではなく、数多ある動画コンテンツの中にあって、どうしたら消費者やユーザーに見てもらえるのか、広告としてクライアントの要望にどう応えるのかを考える制作体制になり、チーム全体の意識も変わっていったと思います」

現在では、動画制作のスタッフは、MINEの記事コンテンツとして表現開発を中心に取り組むチームと、広告案件をメインに扱うチームに分かれて制作を行なっている。

 

◉動画マガジンのコンテンツから本格的な広告動画まで

女性向けファッション動画マガジン『MINE』のコンテンツとなる動画をインハウスで制作する。ファッション情報などの記事コンテンツからロケ撮影を含む本格的な広告撮影まで行うが、規模や内容に応じて、編集記事担当のチーム、もしくは広告担当のチームがアサインされる。制作する動画は、16:9、正方形、縦型など、メディアに合わせてさまざまなフォーマットに対応する。

 


▲MINE 編集コンテンツ「新作アウター特集」

 


▲MINE 編集コンテンツ「“盛りメイク”卒業宣言、大人の引き算メイクにトライ!


▲女性のエンパワーメントを目的としたドキュメンタリー「Future is MINE

◉撮影用のスタジオを者にに用意「今撮りたい」に対応する


▲MINEの記事では、ファッションコーディネートの写真や動画が多数掲載されるため、社内に撮影スタジオが常設されている。大きな窓があり、自然光を生かした対応も可能だ。ちょっとした商品の撮影など、「今すぐ撮影したい」という場面でもすぐに撮影できる社内スタジオのメリットは大きい。なお撮影は、スマートフォンの画面に合わせた縦位置のモニターでチェックしながら行う。

企画から撮影、編集まで一貫作業が生み出すメリット

本格的な動画部門ができたことによって、単に広告動画の制作が自社で可能になっただけでなく、クライアントの要望にクイックに応えられる制作体制になったことも大きなメリットになっている。

「良くも悪くも、CMなどの広告制作は発注から制作まで旧来の仕組みが決まっています。制作を指揮するディレクターがいて、カメラマンや編集などの制作スタッフがその号令のもとに動くわけです。そのため制作体制も大がかりになることも多く、制作側が現場で細かな調整をするのも難しいのが現実です。3ミニッツでの広告動画の制作では、クライアントの悩みや要望を直接聞いて、それをダイレクトに制作内容に反映させることができます。また、コンテの制作から編集までの作業を一貫して制作チームが考えるので、効果的な絵作りなど現場レベルですぐに対応できるというメリットもあります」

こういった制作者とクライアントが直接やり取りができる体制は、発注側のコストメリットにもつながっているという。
「予算の相談から、制作内容の調整までをまとめて行える体制だと、制作コストと同時に時間的なコストの削減にもつながります。またコミュニケーションの早さだけでなく、クライアントと制作チームの間に齟齬が生まれにくい点も重要ですね」

実際に、クライアントからの直接の依頼は増加傾向にあるそうだ。
2017年には、元雑誌編集者を編集長に迎えてメディアとしての方向性も定まってきた。今後の展開はどのように考えているのだろうか。
「MINEでは、女性のエンパワーメントを応援する『Future is MINE』というショートドラマを制作し、たいへん好評です。こういったストーリーのある動画が、広告としてクライアントワークとも結び付きつつあり、今後も増えていくと思います。また、動画制作の人間としてのモチベーションとしても、ストーリーを描くコンテンツを作りたいという思いがありますね。これからも、プロのアイデアを通して、“ユーザーの二歩先行く、手の届く憧れ”をオリジナルコンテンツとして制作し、発信していきます」

この先も、新しい取り組みが生まれてきそうな3ミニッツのインハウス動画制作チームの、次の一手にも注目したい。

 

手軽さと本格派をそろえた幅広い機材ラインナップ

【カメラ&レンズ】


▪ソニー FS7 ▪ソニー α7S Ⅱ▪パナソニック GH4▪キヤノン EF50mm F1.8 STM▪キヤノン EF70-200mm F2.8L IS II USM▪メタボーンズ EF-F mount T Smart Adapter(マウントアダプター)▪パナソニック LUMIX G X VARIO12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S. ――ほか

 

三脚


▪ザハトラー FSB8T/2D(三脚・雲台)▪マンフロット MT055CXPRO3(三脚)MVH500AH(雲台)▪リーベック TH-X(三脚・雲台)

 

【照明】


▪ALUMOTECH TopFoto 50W(LEDライト)

 

【モニター】


▪SmallHD MON-702(7型モニター)▪SmallHD MON-502(5型モニター)▪ソニー PVM-A170(17型モニター) ▪アトモス SHOGUN INFERNO(モニター一体型レコーダー)
――ほか

 

【編集機材】


▪アップル iMac▪アドビ システムズ Adobe Creative Cloud

 

【特機】


▪DJI Ronin-M(ジンバル)▪DJI Osmo Mobile2(スマホ用ジンバル)

 

【マイク】
▪RODE NTG2(ガンマイク)▪ゼンハイザーMKH 416(ガンマイク)▪ソニーUWP-D11(ワイヤレスマイク)▪ズームF1-LP(PCMレコーダー)▪ズームF8(PCMレコーダー)

 

◉社内のカフェスペースも撮影に使用


▲社内の一角には、カウンターまで配した広めのカフェスペースが確保されている。普段は打ち合わせやデスクワークなど、社員が自由に利用している場所だが、この空間も撮影に使用される。活躍の場面は意外に多く、重宝しているという。

 

●ビデオSALON2018年11月号より転載