取材・文●村松美紀 / 編集部 片柳 

1995年、北海道生まれ。札幌・ニューヨークにて写真家に師事した後、独立。映像制作をメインに、企画・編集・カラーグレーディング・モーショングラフィックスまで幅広く手掛ける。

大川原 諒 ’s PROJECT introduction

あたたかな日常を切り取る光の演出

ロイズTVCM『クリスマス篇』

北海道の製菓ブランド・ロイズのTVCM。2023年12月に公開。所属する会社で企画から撮影まで手がけ、道内およびWEBで放映された。アフターコロナや時代の雰囲気を掴み、車をモチーフに「移動」をテーマに撮影。あたたかな日常を切り取った。

ロイズさんから直接依頼を受けて、企画から撮影まで行いました。視聴者が共感できる心温まる場面を20〜30種類ほど考えた上で、チョコレートをどう紐づけるかが課題でした。現場は、僕がカメラや照明を担当し、ディレクターは師匠の鏡丞さんが行いました。

最初のイルミネーションのシーンは、キラキラとした光の反射を見せる工夫としてスモークの車を選び、僕が助手席からDJIのRonin 4Dを突き出して撮影しました。撮影期間は5日間と道内CMとしては長めの期間で、北海道のロケは移動距離が長く、1日2シーン撮れればいいほうでした。

最もこだわったのは、商品がしっかりと映る俯瞰のテーブルショットです。カメラマンやフードスタイリスト、照明部などのスタッフ合計10人ほどで撮影しました。照明は、陽が沈んだ後の15分間をイメージしました。テーブルを囲うように3mほどの枠を立て、上にパネルを2枚設置。夜になる前、これから人が集まる瞬間を表現しているところに注目していただきたいです。

カメラはソニー VENICE2 8K、レンズはCooke Anamorphic/i FFを付けて撮影しました。初めてのレンズでしたが、アナモフィック特有のクセがなく、現場のみんなが驚くほど良い映りでした。編集作業は、DaVinci Resolveで行いました。

◆大川原 諒とはどんなクリエイター?

高校までバイクレーサーをしていたという大川原 諒さん。イギリスで行われたバイクレース世界選手権で、愛読のバイク専門誌のフォトグラファーがレースを撮影している姿を見かけ、その格好良さに憧れて、地元・札幌の専門学校の写真コースに入学。

札幌で活躍するフォトグラファーに師事したのち、好きな写真家のもとで働きたい、とアポなしでニューヨークへ渡った。その写真家とコンタクトを取り、実際の撮影現場も経験したが、1年で札幌に戻ることに。「現地のプロデューサーに作品を見てもらう機会があり、『彼のことが好きなのはわかるけど君は何がしたい? 二番煎じだから今すぐやめなさい』と言われてハッとしました。北海道出身だと話したら『それを君の写真に感じたい』と言われて」

札幌に帰った大川原さんは、個人事業主として独立。写真だけでなく、映像の仕事も受けるようになった。映像のRAWデータの扱い方を学び、「グレーディングだけ依頼される映像の仕事も増えました。そして、様々なディレクターの考え方に触れて、映像制作の面白さにハマっていきました。なぜこのカットなのか? どう撮ったら良いか? 本当にこれで良いの? と思うこともあって。自身が撮って、編集されたものを見て納得することも多いです」

大川原さんは、露出の数値で自身の世界観を作る。「ハイライトの数値は僕なりに決めてあるので、大体同じトーンが作れます。僕が仕上げる時は青味を足すのですが、カラリストの方と仕事をするとやり方の違いに気がつきます」

今後目指していることについて「学生と僕らプロを繋げるコミュニティをつくりたい」と挙げた。地元札幌のクリエイターを盛り上げたい想いから、「写真や映像、デザイナーやライターを集めてワークショップをするのも面白そう。職業の選択肢を見せる場にもなれば良いと思います」と語った。

大川原さんのデスク環境

編集用PC(i7-14700KF・RTX4070ti・メモリ64GB)とロケ用PC(Mac Book Air 13′ 2022)を使い分けている。カメラは、ソニー VENICE2 8K、α7S IIIなどを所有。他ソニーFX6、ARRI ALEXA Mini (LF)をよく使用。好きなPLレンズは、Cooke Panchro/i Classic、ZEISS Supreme Prime・ Master Anamorphic、ATLAS LENS ORION SERIESなど。

VIDEO SALON 2024年3月号より転載