第1回ヒマナイヌスタジオ構築の狙いと目指す世界
写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)
ヒマナイヌスタジオを作った理由
ヒマナイヌスタジオは神田にある対談と鼎談に特化した動画配信&収録スタジオです。対談は2人、鼎談は3人を意味します。「場末のスナック」をテーマとしたカウンターバーの美術セットが常設されており、壁際には4台のマイクロフォーサーズのミラーレス一眼が添えつけられていて、ローランドのスイッチャーを使って、7秒ごとの自動スイッチングで動画を収録します。収録中はスタッフゼロにできるので出演者だけのリラックスした状態で収録配信が可能です。
筆者はこれまで出張ライブ配信チーム「LiveNinja」として芸能人から一般人までざまざまなスタイルのトークショー、シンポジウム、プレゼンテーションをマルチカメラ収録してきました。そこはすべて晴れの舞台! テンションを上げた出演者が進行台本に沿ってしっかり進めていくテレビ的な世界でした。「もうちょっと生々しさのあるドキュメンタリーっぽいライブ配信ができないだろうか?」と考えてきました。その問いに対する自分なりの答えがヒマナイヌスタジオです。
◉場末のスナックをモチーフに構築し対談・鼎談に特化した配信&収録スタジオ
ヒマナイヌスタジオの特徴
スタジオの特徴は大きく3つあります。1つめは飲食店ライクなカウンターバーのセットです。テレビのセットはカメラに向けて作りますが、ヒマナイヌスタジオはまず飲食店のようなセットを作りそれを狙うカメラは目立たないようにさりげなく配置しました。大きな三脚は使わずクリップ三脚で棚に設置しケーブルなども床に1本も通さないようにしました。こうした映像機器の存在が目立つと出演者の人は撮られているとという緊張感が生まれるからです。
2つめはマイクロフォーサーズの単焦点レンズを使ったシネライクな画作りです。イマジナリーラインを考慮した4カメの画は繰り返し見ても飽きのこないアングルに設定され人の表情とアクションを捉えます。
3つめが自動スイッチングによる無人システムです。スタッフをゼロにすることでスタジオ内を出演者だけにして自然な会話を引き出します。お酒を呑みながら会話を進めていくうちにそこがスタジオであることを忘れ行きつけのスナックやバーで話しているかのような錯覚を覚えます。その効能はナチュラルな会話を生み、ライブ配信を見ている人にはまるでどこかの呑み屋での会話を盗み聞きしているかのような生々しさを感じさせます。から元気でテレビバラエティごっこをするのではなく、もっとリアルな会話をコンテンツにしたい! それがヒマナイヌスタジオのコンセプトです。
ヒマナイヌスタジオの目指す世界
人と人の関係性を可視化し、そこでかわされる会話をコンテンツと定義。ヒマナイヌスタジオは人がリラックスした状態で気のおけない相手とした会話から砂金のような金言を収穫するのが目的です。そのためにこれまでの映像スタジオの構築手法をくつがえすような大胆な設計思想で構築しています。セットはカウンターバーのみのワンシチュエーション。カメラ位置もすべて最初に固定されているので変更することはできません。そのかわり4つのカメラアングルは作り込んだ背景美術と相まって何度見ても飽きない絵になっています。ライトレールについた照明はリモコンひとつで個別のオンオフ可能で明るい絵から暗い絵まで自由自在に短時間で変更可能です。ビール、ウィスキー、ワイン、焼酎などを飲むためのグラスも飲食店レベルのものを揃え小道具としても映えるようにしてあります。初めてヒマナイヌスタジオに来た人は「ここ飲食店?」と必ず質問するのはこの作り込みの成果です。
◉スタジオ見取り図
この連載では「ヒマナイヌスタジオ」を構築・運営していく中で生まれる様々なノウハウを可能な限りわかりやすく伝えていこうと思います。「コミュニティの可視化」に興味があるすべての方にお届けしていきます!お楽しみに!
PICK UP CONTENTS! ヒマスタの収録動画を紹介
『ヒマスタ3分動画「動く人間図鑑:山岸 伸」より抜粋』
ヒマナイヌスタジオのオリジナルシリーズ動画『動く人間図鑑』は毎回濃いキャラクターのゲストを迎えるサシ飲み番組! 神田にスタジオを構えるグラビア写真の巨匠フォトグラファー山岸 伸さんとの熱いトークの一部をどうぞ!
◉この記事はビデオSALON2018年8月号より転載