第20回 見えるラジオに対応した 「ヒマナイヌスタジオ大手町」

写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)

 

リスラジプレミアムは 見えるラジオ?

ひょんなことで収録の相談を受けたのが「リスラジプレミアム」の収録という案件でした。これは全国のコミュニティFMを聞くことができる「リスラジ」というアプリに新設される新しいチャンネルのことなのですが、映像付きのラジオ番組なんです。

その昔、「見えるラジオ」という曲名が液晶に表示される文字多重装置対応のラジオ端末が発売されたことがありますが、「リスラジプレミアム」の場合はラジオがまるごと映像で配信されるのです。通常のラジオ局は録音機能はあっても映像収録機能まではありません。そこでヒマスタに相談が来たというわけです。

 

ヒマスタ神田がクローズすることになり物件探し

これまで世界初の自動スイッチングによるコンテンツ制作に特化したスタジオとして運営してきた「ヒマナイヌスタジオ神田」でしたが、定期借家の期間満了に伴い移転させる必要が出てきました。そのため2019年の11月くらいからリサーチをはじめていたのですがいい縁があり、大手町にある小さなギャラリースペースをスタジオ化するという話が浮上しました。

下見に行ってみると4m四方くらいの正方形のスペースで外堀通りに面して大きな1枚ガラスの窓がありました。まるでラジオ局のサテライトスタジオのような感じ。そこでこの新しいスタジオはこれまでのカフェバー風の高円寺やライブラリーカフェ風の六本木とは趣向を変えてラジオ局に寄せていくことにしました。

 

ラジオ局のサテライトスタジオを デザインコンセプトに

神田にあったセットを移植することを前提に図面をGoogleスライドで引いてみると、ぴったり収まることがわかりました。使用する単焦点レンズも計算上ではぴったり設置できそうです。主要機材は使いまわしながらも路面から中が丸見えという特性を考慮して三脚はやめて1本足でスッキリ見えるベルボンのドリーポッドを新調。

オーディオミキサーも個別トラックを同時に録音できるズームのLive Track L-8を追加しました。マイクロフォーサーズの4カメによるシネライクな対談動画の収録にも対応しつつ、オーディオだけの収録も気軽にできるようになり、見えるラジオに対応したスタジオとして2020年1月に完成。

スタジオのレイアウト図と使用機材一覧

 

スタジオはラジオ局のサテライトスタジオ風のデザインに

▲スタジオでの収録風景。ラジオ局のサテライトスタジオをモチーフとしたデザインに。


▲全国のコミュニティFMを聞くことができる「リスラジ」のアプリ。「リスラジプレミアム」ではラジオが映像付きで見られる。

 

スタジオから街全体が見える開放感のあるショット

機材をすべて設置してチューニングをはじめると4カメの引きのショットがテーブルごしに話すゲストとホストごしに街全体が見渡せて、とても開放感のあるものになりました。

この4カメのレンズはいろいろ試したところ、35mm判換算で50mmのポートレートレンズがぴったり! これまで35mm判換算で高円寺は35mm、神田は40mmだったので、これまでより寄っています。F1.4の開放値も活かして目の前の歩道を通る人の動きも借景としてとりこめます。

これから都心の旗艦店として「ヒマナイヌスタジオ大手町」は様々なコンテンツに対応できるようにチューニングしていこうと思います。

 




▲元々は小さなアートギャラリーをラジオ局のサテライトスタジオ風に改装した。ガラス張りで歩道からスタジオの中を見られる他、街頭の風景を背景として活用できる。スイッチャーやミキサー、カメラ、マイクなどヒマナイヌスタジオ神田で使用していた機材をそのまま流用している。

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次回はヒマスタ型スタジオをサポートするオンラインサロン運営についてご紹介します。

 

 

VIDEOSALON 2020年3月号より転載