第7回 自動スイッチングに任意のタイミングで スライドや写真を割り込ませるシステム
写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)
段取りなしの無人システムでも打ち合わせたかのようなライブ番組ができないか
ヒマナイヌスタジオは無人システムにより収録中のスタッフゼロを実現しています。カメラマンもミキサーもスイッチャーも配信エンジニアもいません。それでもホストの進行力さえあれば相当おもしろい対談番組が作れることがわかりました。
でも続けてみると、欲も出てきます。話している内容を補足するスライドや写真や動画が入るとさらにおもしろくなる!でもそのためにひとりスタッフが必要になるようでは無人システムを極めてきた意味がありません。そこで考えたのがホストが進行しながら自らインサート映像を割り込みスイッチングするシステムです。
ローランドV-1HDの コントロールパネルを タブレットPCで起動!
VR-4HDは4カメを7秒間隔で自動スイッチングしています。このプログラムアウトをV-1HDに入れてここに出演者のiPhoneやiPadもしくはノートPCを接続します。VR-4HDの下流にV-1HDを接続しそこを最終のプログラムアウトにするわけです。
これをHDMIスプリッターで分配してレコーダー、エンコーダー、静止画キャプチャー機、確認モニター、返しモニターなどに出力します。V-1HDは機材ラックに配置されているのですが、ホストはカウンターにいますので、ここに向けてUSBケーブルを伸ばしタブレットPCを接続し、V-1HDの制御アプリを立ち上げます。
通常のノートPCだとキーボード部分が邪魔になり、絵的にも良くないので小型のタブレットPCがオススメです。そもそもV-1HDの制御アプリはCPU負荷はほとんどなく画面の解像度も横1280ピクセル程度で充分なのです。
▲VR-4HDのプログラムアウト(最終出力)にV-1HDを接続して、そこでカメラ映像とPowerpoinとのプレゼン画面や写真、WEBサイト等を表示したパソコン画面を入力して切り替える。
割り込みスイッチングを ホストが自ら操作しながら番組を進行!
こうしてホストが座る席には返しモニターの横に割り込みスイッチャーの制御アプリが立ち上がります。制御アプリと言っても本体を模したわかりやすいUIなので操作は簡単です。画面外のフレーム部分にもテプラで「①カメラ②ホスト③ゲスト④スタッフ」と補足して貼り付けます。
さらにどんなスマホやノートPCが来てもすぐに変換できるようにショットグラスに各種の変換アダプターを用意しました。最近のUSB-CしかないノートPCも受け入れ体制はバッチリです。
ちなみに信号が出る出ないのトラブルが多いUSB-Cですが、まずパソコンにUSB-C to HDMIのアダプターを挿してからHDMIケーブルを接続するのがコツです。こうしてホストは自分やゲストのスマホのスライドや写真、WEBサイト等を話の進行に合わせていつでも割り込みスイッチングできるようになりました。
いろいろなホストにこの機能を紹介して実践してもらっていますが、15分もあれば慣れてきて無人スタッフとは思えないライブ番組になっていくのを実感しました。
▲ホストが操作するタブレットPCはUSBでV-1HDと接続。操作アプリでタッチして切り替える。傍らには、配信中の番組を見られる返しの小型モニター。
▲PC接続用のUSB-C to HDMI等の変換アダプターも常備している。
自然な会話のまま いかに高度な割り込み スイッチングをできるか?
よくシンポジウムなどで登壇者がPowerpointの操作をスタッフに任せている場合があります。その時に「はい、次お願いします」とページめくりを指示するのってものすごくもっさりした印象になりますよね? だから割り込みスイッチングの操作を教える時に「ゲストの方は写真を入れて欲しい時はご自分で見せたい写真をスマホで表示したら『これ先週行った旅行の写真なんだけど』というように先行して話してください。ホストは『これはどこですか?』などと話しながら少し遅れて切り替えても見ている人は自然に受け取りますから」と説明しています。
そもそもヒマスタに来るゲストとホストは長い付き合いであることが多いので、お互いの呼吸も合いやすいのです。こうしてシステムを拡張しそれを上手く使えるようにオリエンすることでヒマスタの番組は進行台本なしのぶっつけ本番にも関わらずまるで事前に打ち合わせをしたかのような番組の仕上がりになっていくのです。
次回はヒマスタ直営の2号店である高円寺店の立ち上げレポートをお届けします!
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●ビデオSALON2019年2月号より転載