Vol.12 広告配信の管理と改善

前回までは動画広告におけるクリエイティブ(制作した動画やその素材)をPDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)で回す方法について解説しました。今回は広告管理画面上でのPDCAについて解説します。

 

 

CVにつながる訪問数を最大化するのが基本思想

広告運用の改善とは、ゴールとなるコンバージョンに至るまでの間に阻害する要因を見つけて改善を施し、CV(コンバージョン)につながるユーザーの訪問を最大化する一連の作業です。改善すべき点を把握するには、フローの中の各指標を調べて問題箇所を特定します。問題を特定するにあたり、各指標を「比較」し特定します。

□広告稼働前に設定している各指標の想定数字と実際の数字の比較

□ 稼働後、各指標の期間での比較

 

 

1.広告の評価

1-1:目標を満たしているか

広告稼働前にまず目標となる数字を設定しているかと思いますが、その数字が達成されているのかが最初に見る点です。ここでいう目標というのは広告上での最終目的であるCVを指しています。

広告は表示されているのか→IMPを確認

広告を見たユーザーは問題なくクリックしているか→CTs、CTRを確認

訪問したユーザーは求めている行動を起こしているのか→CV、CVRを確認

 

1-2:満たしていない要因はどこにあるか・各指標は想定していた数字になっているか

CVの数が満たない場合、どこに要因があるのかを特定していきます。

まずはIMP(インプレッション数)を見て、広告そのものが問題なく表示されているのかを確認します。また検索広告であれば、月間の検索ボリュームを調べることができ、想定値を出すことができるので、想定値と乖離がないかを確認します。

▲広告管理画面の機能のひとつであるキーワードプランナーから月間の検索ボリュームが確認できる

 

次にCTR(クリック率)を見て、表示された広告は問題なくクリックされているのかを確認します。CTRは何%が適切なのか、開始した当初はわからないかと思います。業界や広告形態により%は異なるため平均数字はお伝えしにくいですが、ザクッと検索広告では2〜10%(商標ワード除く)、動画などのディスプレイ広告では0.3〜0.8%ほどの間で推移することが多いです。まずはこれらの数字を想定数字として設定し大きく外れていることはないかを見ていきます。

 

最後にCVR(コンバージョン率)を見て、サイト訪問したユーザーが目標となる行動を起こしていくれているかを確認します。目標とするCVRはGoogle analytics(グーグルアナリティクス)等を見て想定数字を算出。比較検証を行なっていきます。

 

 

広告の改善

広告の改善は各フロー「認知」「誘導」「獲得」のそれぞれで行います。

2-1:認知に関する修正

認知に関する修正点としては、主に下記の2点です。

□ 日額予算の変更

□ オークション単価の見直し 等

IS(インプレッションシェア)を確認しターゲットとなるユーザーに対して広告は最大限充てることができるよう改善します。

※ISは広告が表示可能であった回数のうち、広告が実際に表示された回数が占める割合のことを指します。インプレッションシェアは検索広告、ディスプレイ広告共に確認することができますが、確認するのは検索広告だけで良いです。ディスプレイ広告は表示可能な面が膨大にあるため、シェア率が10%以下であることがほとんど。判断指標としては使用が難しいです。

運用開始時にはシェア率はわからないかと思いますので、稼働どの数字を見てシェア率を見て数字が低いものは改善対象として判断します。

 

2-2:誘導に関する改善

誘導に関する改善点としては、主に下記の点です。CTR(クリック率)の改善がメインになるかと思います。

□ 広告クリエイティブの訴求軸の変更

□キーワードの見直し(キーワード除外)

□ 入札単価の見直し

広告表示されているユーザーに対して「興味を持ってもらえているか」がひとつの判断ポイントです。CTRが低い場合はユーザーに興味を持たれていない可能性が高く、訴求軸自体がずれているケースと、もしくは他の競合と比べて訴求が弱くなっているケース等が考えられます。修正するために、なにが要因なのかを特定しましょう。

まずは実際に登録している検索ワードを調べてユーザーが求めている解答になっているかを調べます。ニーズに答えていない場合は訴求軸がずれている可能性を考えます。例えば「エアコン取り付け」といったワードで検索しているユーザーに対して、「エアコンパーツのお買い求めなら」等の文言では、ユーザーが求めているニーズとアンマッチしているためクリックされません。

また競合の広告を調べるには広告出稿している検索ワードで実際に検索し、同時に出てくる競合サイトの広告を調べます。例えば自社広告と比べて価格が安い点を訴求している場合は、価格で負けて他広告に流れている可能性があります。その場合は価格以外の訴求に切り替え、自社広告に興味を持ってもらえるようにしてCTRの改善を図ります。

▲Google検索の上部をみて、掲載されている率が低い場合は入札単価を見直す

 

また設定しているキーワードの中には、ニーズが異なるワードが含まれることがあります。例えば「エアコン 取り付け」と登録しているのに、実際は「エアコン 取り付け diy」と検索している場合など。「エアコン 取り付け diy」は自分で取り付ける方法を調べてる方であり、広告で誘導したいユーザーとは異なります。これらは検索語句をみて判断できるためニーズが異なる場合は除外ワードで広告が表示されないようにします。

最後に広告掲載位置についても確認します。機械学習が促進している現在はほぼ自動化されており、以前ほど注力する箇所ではなくなりましたが、クリックされていないひとつの要因となります。検索結果の上位に掲載される数(率)が少ない場合は、オークションで負けている可能性があるため、設定している入札単価の見直しを図りましょう。

▲Google検索の上部をみて、掲載されている率が低い場合は入札単価を見直す

 

 

2-3:獲得に関する修正

誘導に関する修正点は、主に次の2点です。主にCVRの改善がメインです。

□ ランディングページのコンテンツ構成を見直す

□ 広告で設定しているキーワード・ターゲットを見直

広告をクリックして訪問したということは、少なくとも何らかの興味を持って訪問しているはずです。しかしクリックしてみたものの想定した内容と異なっているため離脱する場合があります。訪問したユーザーが求めている情報をランディングページ上で提示できていないことを表しており、主に直帰率という数字から確認することができます(上図)。※直帰率は訪問したユーザーが他のページへ遷移することなく離脱した率を表し、数字がが高いほど、訪問したユーザーとページはマッチしていない可能性を示唆し、ページ内コンテンツや設定しているキーワード・ターゲティングの見直しを図る必要があります。注意点はページが1枚もの(ペラページといわれることがあります)で構成されている場合は、コンバージョンするかしないかの2択の選択肢しかなく、複数のページで交際されているサイトと比べて直帰率が高くなる傾向にあります。評価する際はご注意ください。

また訪問したユーザーがページのどの部分に興味を持ったのかを確認します。確認する為に使用するツールはGoogle analyticsとヒートマップツールのふたつ。

▲ヒートマップとは、訪問したユーザーのマウスやタップの動きを解析して色を付けたもの

 

まずGoogle analyticsで確認する箇所は、「ユーザーの滞在時間」や「ページ/セッション」など。基本的にこれらの数字が多いほどユーザーに興味を持たれていることを示しています。基本的にというのは、例外もあるためです。例えば訪問したユーザーがサイト内で迷子になる場合も数字が高くなる傾向にあります。広告を運用し始めた当初は見極めは難しいため、まずは高くなるほど興味を持たれていると判断して問題ありません。複数のページが存在しているのに「ページ/セッション」が少ない場合は、ほぼ回遊されておらずユーザーが求めているものを提示できていない可能性が高いため、ページ内のコンテンツを変更・整理を行います。ヒートマップは具体的にどのコンテンツに興味を持ったかを知ることができます。赤くなっている箇所ほどユーザーに興味を持たれたコンテンツです。

こうしたツールを使用し、広告を訪問したユーザーに興味が持たれたページやコンテンツが届けられているのかが次に確認するポイントです。ヒートマップをみてユーザーの何%がコンテンツを閲覧しているのか。数(率)が少ない場合は、よく見られるコンテンツを上部に置き、訪問時に閲覧されやすい状態を作ります。

Google analyticsやヒートマップを確認して、まったく興味を示さないような数字である場合は、訪問したユーザーとそもそもマッチしていない可能性があります。そのため、設定しているキーワードやターゲティング自体を見倒すことを検討します。

 

各指標の改善を施し、目標とするCV数を獲得する

どこか一か所だけに改善するということはほぼなく、認知・誘導・獲得をそれぞれに改善を施し、目標とするCV数の獲得を目指します。

全指標が想定より悪い場合は、獲得の影響の大きい指標から改善するよう心掛けてください。ひとつずつ改善を行い、目標となるCVの獲得を目指していきます。

 

今回のまとめ!

広告運用は数値を確認しながら軌道修正をする。

広告運用は獲得までの一連の流れの中で、数字を見ながら問題点をひとつずつ解決していく作業。劇的に数字が改善することはまれで、コツコツと改善し数字を伸ばしていくことになります。あきらめず改善し、目標を達成しましょう。

 

 

VIDEO SALON2021年9月号より転載