After EffectsでVFXはじめました。Vol.7 黒い煙に包まれる悪の化身(前編)


 

Vol.7「黒い煙に包まれる悪の化身(前編)」

作例・文●タイム涼介

週刊ヤングマガジン(講談社)で漫画家デビュー。近年はコミックビーム(エンターブレイン)にてI.C.U.を連載。主な著作に「アベックパンチ」、「日直 番長」、「あしたの弱音」などがある。2011 年に「アベックパンチ」が映画化され映画原作者となったのをきっかけに、映像制作を開始。過去の劇場公開作品には「男女大戦」、「実験失敗家族」、「イルカ少女ダ、私ハ」があり、いずれも脚本、監督、編集、VFXのすべてを手がけている。新潮社のWEB漫画サイト「くらげバンチ」で新連載「セブンティウイザン」がスタート。隔週金曜日更新。

無料プラグインSaberだけでどこまでできるか?

【After Effects用無料プラグイン】
VideoCopilot社が提供するプラグイン。STAR WARS風のライトセーバーなどを手軽に制作できる。販売代理店のフラッシュバックのサイトでダウンロードできる。https://www.flashbackj.com/video_copilot/saber/

 

今回も無料プラグインソフトSaberをだけを使い黒い煙を作成する方法を説明していく。真っ黒い煙を体にまとう表現は2010年台からハリウッド映画で増え始めて、今では日本のTVCMなどでも見られるようになった。煙に加えてススのような粒子が舞う退廃的で毒々しい表現は目新しく悪魔的表現にぴったりだった。SFやホラー好きの私も初めて見たときは驚き憧れたものだ。数年経ち日本のTVCMにまで使われるようになった頃にはだいたいエフェクトが一般向けに発売されたと合図だ。

しかし価格を見て購入を見送ることが常だった。自力でいろいろなエフェクトを重ねて挑戦してみたこともあるが、工数が多かったりレンダリングが重くてトライ&エラーにも時間がかかり心を折られたことがある。それがどうだろうか? 今回のこの出来栄え! 私はついに悪魔の煙を手に入れたのだ! しかも何の努力もしないで!

裏技を使ってSaberで 煙の表現にチャレンジ

この煙は前回に引き続き、VideoCopilot社が提供する無料プラグインソフトSaberで簡単に作成可能なのだ。Saberはノイズとディストーションとグローをかけ合わせたようなエフェクトだ。もともと単独でも汎用性の高いエフェクトが複数合わさっているためライトセーバーから煙まで表現できる万能エフェクトになっている。

前回までとの使い方の大きな違いは、CoreTypeをデフォルトのSaberからLayerMasksに変更した点だ。これによって直線的な表現からペンツールで自由に書いたマスクパスに添ってエフェクトが描画できるようになる。

今回は黒い服を着たモデルの輪郭に合わせてマスクパスを切り、SaberでCoreTypeをLayerMasksを設定した。エフェクトのプリセットはひとまず煙の形だけを考えてSolar Waveを使用した。色は完成目標とかけ離れているが一旦無視して先に進める。理由は、ライトセーバーを作るのをメインとしたエフェクトなので光の表現に特化して作られているため、暗い色を作るのを想定していないようだ。実際にSaberには稲妻系や炎系など数十個ものプリセットが用意されているが黒系のプリセットは存在しないからだ。

SaberのエフェクトコントロールパネルのGlow Colorで黒を選んでも黒くならない。単色ではないため他のエフェクトで色を真っ黒に変更しようとしても上手くいかない。これについてはちょっとした裏技で解決可能だ。

レイヤーの描画モードをシルエットアルファに変えて黒くしてしまうのだ。ここまで完成したら煙のレイヤーを複製する。とかくエフェクトというものは単独ではパラメーターを弄っても目標の色の濃さやボリュームに到達できないことが多い。そんな時は無理せずレイヤーを複製しパラメーターを少しだけずらせば、お手軽にボリュームアップできる。今回は複製したレイヤーのNoise Scaleを変更することにより毒々しいススのような煙が追加された。これでついに憧れの悪魔の煙が無料で手に入ったのだ。なんの努力もしていないと述べたが、Saberを煙に使う作例は見当たらないしシルエットアルファを使う裏技は私が考えたのだ!私を褒め称えよ! そして崇めよ!

 

【STEP1】素材を読み込み、平面にSABERを適用する

❶ 新規コンポジションに黒服の人物素材を配置する。

❷ SABERで煙を作るための平面レイヤーを作成。「レイヤー」>
「新規」>「平面」。
❸ 平面設定を右のように設定し、レイヤーの名前を「煙1」にした。
❹ 平面「Ⓐ煙1」を選択し、Ⓑ「エフェクト」から「Video Copilot」>「Saber」を適用するとⒸのライトセーバーができる。
❺ このままでは背景が黒いのでエフェクトコントロールで「RenderSettings」を展開し「Composite Sett」を「Transparen t」に変更すると、黒味が透過され下のように人物素材と合成される。

【STEP 2】形状を加工する

❶「Customize Core」を展開し、「CoreType」を「(A)LayerMasks」に変更。デフォルトでSaberになっていて、直線しか作れないが LayerMasks にすると「(B)ペンツール」で自由な線を描くことができる。❷「ペンツール」選択し、人物の輪郭に沿ってマスクパスを切っていく。

❸「Preset」を「Solar Wave」に変更すると上のように SABER の形状が変わる。

▲今回は黒い煙を作りたいのだが、saber の「Glow Color」を黒にしても見た目を黒くすることはできない(白くなってしまう)。

❹平面レイヤーの「(A)描画モード」を「(B)シルエットアルファ」に変えると、左のようにエフェクトの色が黒く変化する。

 

【STEP 3】煙の質感を調整する

❶煙の平面レイヤーを複製して二重にすることで、上の画面のように濃くする。❷右クリックして「名前を変更」でレイヤーの名前を「煙2」に変更した。

❸「煙2」に粒状感を加えて、毒々しさを演出するために、「(A)Distortion」の「(B)Glow Distortion」を展開する。「(C)Noise Scale」を30に変更した。

❹お好みで「(D)Wind Speed(風速)」や「(E)Wind Direction(風向き)」の数値を変えて、煙のゆらめきを調整したら完成。

*この記事はビデオSALON2017年10月号より転載