桜咲く校舎の窓から教室へ。
教室では机の下、背伸びをした腕の間などを縦横無尽に飛び回り、
人物の真横をかすめるように飛んでいく。
あまりに自由なカメラワークにドローンユーザーの間でも
話題になった「オンナノコズ」のプロモーションビデオ。
今回、このビデオの撮影を手がけた名古屋の映像制作会社・シネマレイに
撮影に使用したマイクロドローンと撮影方法についてお話を伺った。

取材・文:青山祐介/構成:編集部

4月上旬に公開されて以来、わずか2カ月で再生回数は23万回を超え、ドローンで映像作品を手がけるビデオグラファーを中心に話題となっている映像作品「オンナノコズ」のPV。モデルを目指す女子高生を撮影したこの作品は、映像制作会社シネマレイ代表の増田勝彦氏が、ドローン撮影の可能性のひとつとして試みたものだ。

教室や廊下といった限られた空間内で、モデルたちにまとわりつくような距離感によるカメラワークが見る者に強いインパクトを与える。特にモデルの顔のすぐ脇や、両手で作った輪の中、椅子の脚の間を通り抜けるといったカメラワークは、大型の撮影用ドローンでは不可能だった。

空撮用ドローンとTiny Whoopの大きな違いは、機体の重量が数10gと軽いこと。プロペラにガードが付いているためドローンとの接触で物を壊したりケガをさせる可能性が少なく、人物に極めて近寄るといった撮影ができるのが大きなメリットだ。

 

10cm四方の超小型ドローンを独自に改良

Nano Vespa80 HD DVR Drone48,800円(ep-models取扱)「Tiny Whoop(タイニー・フープ)」とは、アメリカで誕生し、日本のドローンレースを中心に流行の兆しを見せているマイクロドローンの総称。ユーザーが様々なパーツを組み合わせて自作のドローンで競い合う。機体は今回の撮影に向けて、兵庫のラジコンショップ・ep-modelsと共同開発。1080/60p撮影が可能なカメラユニットを搭載し、ドライカーボン性のフレームをはじめ、プロペラやケーブルの材質にまでこだわり、68.4gの軽量化を実現した。

 

その一方でバッテリー容量が小さく、1回の飛行時間はわずか2〜3分しかない。ただ、この時間という制限が今回の作品のような1カットムービーには最適で、2〜3分間にTiny Whoopならではのカメラワークを凝縮。結果としてドローンの浮遊感に加えて、モデルの前で一度機体の動きを止めたり、いったん下がるといったドローンの動きで、トランジション的なニュアンスを出しているという。撮影はモデルがいる隣の教室から、増田氏自身がドローンを操縦。Tiny Whoopは機体が軽いためとても風に弱く、カメラに映っていないモデルに、タイミングを見て窓を閉めてもらうといった工夫が必要だったという。

 

◉Tiny Whoopのパーツ構成

プロペラの回転数などを制御するフライトコントローラーを軸に、プロペラを回すブラシレスモーター、操縦用電波の受信機、映像伝送用の送信機、カメラユニットが組み込まれる。今回撮影に使用されたNano Vespa80 HD DVR Droneのパーツ構成はep-modelsのWEBサイトで確認できる。

 

▲ カメラはRuncam Split mini というユニットを採用し、microSDに1080/60p映像を記録できる。
▲ 操縦は2.4 GHz FASSTの受信機を機体に取り付け、フタバのプロポ・18SZを使用。
▲ FPV(映像伝送)の受信機。RCAケーブルでFPVゴーグルとつないで使用する。FPVは5.8GHz帯の電波を使用するため、趣味用途ならばアマチュア無線4級、業務用途ならば第三級陸上特殊無線技士が必要。

◉隣の教室からFPVでドローンを操作

 

▲ 隣の教室で、FPV用のゴーグルを装着してマイクロドローンを操縦するシネマレイ代表の増田勝彦氏。ドローンレースでも数々の優勝経験を持つ。

 

 

▲ ドローンの動きをシミュレーションしながら出演者に演技指導する様子。ヴァニラ・ファッジの上原章季良氏が演出を担当している。

公開直後から大きな反響を呼んだこの作品。制服姿の女子高生ということもあってか、日本のみならず外国からの反応も多いという。そんなこともあってシネマレイには、ミュージックビデオを中心に数多くのマイクロドローン撮影の依頼が殺到。

また、この撮影に使用されたドローンは、作品公開と前後して市販され、最近では常に在庫切れになるほどの人気を博している。今後、空撮映像にTiny Whoopによる作品が増えてくるのは間違いない。

 

●この記事はビデオSALON2018年7月号より転載

http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1845.html